「紙書籍」を言い換えたい!


この記事の所要時間: 310秒 〜 410秒程度(1828文字)


「紙書籍」という言葉をご存知だろうか。まだ知らない人も多いと思うが、紙の本と電子書籍を比較するとき前者をこう呼ぶことがある。例えば、価格.comで本を検索すると、「新品紙書籍」、「中古紙書籍」、「電子書籍」の価格が表示される。他に、電子書籍を紹介する記事で見掛けたこともあった。そんな数多く接しているわけではないが、何とも気に障る言葉なのでよく覚えている。
 

※画像は価格.comからキャプチャー

※画像は価格.comからキャプチャー

 
それにしても「紙書籍」とは残念なネーミングだ。紙の本の持つ良さがまったく伝わらない。紙の本を愛する一人として、「紙書籍」を何とか言い換えられないかと思っている。
 

本

Photo credit : spykster / CC BY

 


モノを売るときはラベルが重要


人は、モノを買うときそれに付いているラベルを意識する。自分が何を買ったかわからないと落ち着かないだからだ。市場で自分の知らない魚がおいしそうだったら、誰もがその名前を確認するだろう。名前さえわかれば、それが聞いたことのない名前でも何となく安心する。そんなものだ。
 
そして、人はラベルからいろいろとイメージを膨らませるため、モノを売るときはラベルが重要になる。成功しているかは別にして、「老眼鏡」を「リーディンググラス」、「インスタントコーヒー」を「レギュラーソリュブルコーヒー」などと言い換えているのも、ラベルからのイメージを考えてのことだろう。また、売り物ではないものの、「成人病」を「生活習慣病」とした例などは言い換えの効果をうまく使ったと言えそうだ。
 
紙の本について言えば、そもそもは「本」というだけで充分だった。ところが、最近になって「紙でない本」が出てきたため、それらと弁別するラベルが必要になってしまった。「紙書籍」というラベルは何も説明がなくても誰もが理解できる点で素晴らしいが、そこからのイメージに膨らみがない。味気ないのだ。紙の本を大切にしたいなら、このラベルを再考することが必要になる。
 


アピールポイントは・・・


具体的には、紙の本の良さをアピールするようなネーミングがいいだろう。モノとして所有できるところ、ページを捲る楽しみがあるところ、書き込みし易いところ等など。気の利いたネーミングを考えるのはなかなか難しいが、アピールポイントを明確にすることが肝になる。お客がベネフィットを感じるところを名前に織り込むのだ。
 
モノの名前を決めるとき、物理的な特性を使えば異論が出難い。誰が見ても間違いないからだ。しかし、そこからできるラベルはあまりに単純で、魅力を感じられないことが多い。このため、少し踏み込み、お客が感じるベネフィットを想像してネーミングすることが大切になる。
 


ビジネスの大きな流れを考えよう!


「本」のままで通す手もある。「日本酒」の例を思い出すからだ。その昔、今で言う「日本酒」はただ単に「酒」と呼ばれていたという。それが、日本酒以外のお酒がいろいろ出てくる中で、弁別のため「日本酒」という名称に変わっていったらしい。「日本酒」と「酒」では、後者の方が本来的な感じがして響きがいいだろう。「紙書籍」と「本」の関係もこれに近い。業界をあげて「本」で通すという取り組みができるなら、それに越したことはない。
 
いずれにせよ、ビジネスにおいてラベルは極めて重要だ。電子書籍による侵食を少しでも防ぎたいなら、「紙書籍」の言い換えは注力する価値がある問題だと思う。「本」で通すのか、何か新しい名称を考えるのか。その決断の与える影響は大きい。
 
最近の出版業界は問題の設定を間違っているように思えてならない。各社が細かなところでつばぜり合いを繰り返しているが、正直どうでもいいようなことで争っている。時にはビジネスの大きな流れを考えて、本来的な問題に取り組むことも重要だ。「紙書籍」の言い換えを通じて「紙の本」が持つベネフィットを共有することは、取り組むに値する問題だと思うがいかがだろうか。

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