炭鉱のカナリアを仕掛けよう!


この記事の所要時間: 430秒 〜 530秒程度(2505文字)


「炭鉱のカナリア」という考え方がある。
その昔、炭鉱で一酸化炭素などの発生を知るためにカナリアを使っていたことに由来するもので、危険を早めに検知するための仕掛けのことを比喩的にあらわしている。カナリアは常にさえずっているのに、空気に異常があるとそれを止める。この習性を検知のために使った訳だ。オウム真理教への強制捜査のとき、捜査員がカナリアの籠を手に持っていたことを覚えている人もいるだろう。
 
さて、この炭鉱のカナリア。ビジネスの現場でも応用できそうに思う。迫り来る危険を確実に検知するため、カナリアを仕掛けるのは筋の良い取り組みと考えられる。
 

アラート

Photo credit : Michael Innes / CC BY-SA

 


特長はアラート、常時監視、外部システム


ここで、炭鉱のカナリアの特長を自分なりに考えてみた。なぜ炭鉱のカナリアが有効なのかを検討することで、はじめて役立つ応用が可能になる。
 
まず思い付くのが、危険の発生を「アラート」として教えてくれることだ。カナリアは、何らかのデータ(例えば一酸化炭素の濃度)を感じ取るだけでなく、ある水準に達したときさえずりを止めることで危険を知らせる。データの取得とアラートがセットになっているからこそ、危険検知の装置として役に立つのだ。
 
次に挙げられるのが、炭鉱のカナリアは「常時監視」というところだろう。1時間に一度、2時間に一度のチェックではないので、監視が途切れることがない。すぐに命に関わることなので、このことも大きな意味を持つ。
 
そして最後は、カナリアが「外部システム」であること。炭鉱夫がみずからの息苦しさなどで危険を察知しようとしても、「もう少し大丈夫では」とか、「気のせいかも」とか考えてしまう可能性がある。そこをカナリアという外部のシステムを使うことで、別系統から危険を感知できるようになっている。確実に危険を捉えるためには、系統の違うシステムを持つことが重要だ。
 
実際のビジネスの現場においては、これらの特長がどこまで組み込めるかは状況次第。とは言え、これらの特長が実現ができているかをチェックしながらカナリアを仕掛ければ、その効果はより大きなものになるだろう。何かの真似をするときは、元のもののどこがいいかを明確にする必要がある。
 


飲食店で考えるなら・・・


さて、飲食店を例に考えてみよう。お客の満足度が下がっていないかをチェックするにどんなカナリアが仕掛けられるだろうか。
 
単純に考えれば日々の客数、売上高の推移に「アラート」を仕掛けることになる。これらのデータが、事前に決めた○○人、△△円などの基準を切ったら関係者にアラートを出すようにするに仕掛けるのだ。日々のデータはバラツキが大きいので、1週間程度の移動平均をとってもいい。POSと連動させてシステムから自動でメールを出せればベストだが、そこまでするのが難しければ朝礼や定例会議での報告でもいい。POSとの連動を高めない限りリアルタイム監視は難しいが、飲食店の現実を考えれば日次データでほぼ「常時監視」と捉えていいだろう。
 
ポイントは、基準を事前に決めて確実にアラートすること。これができていないと、「昨日までと少ししか変わらないので、まあいいか」、「一時的なことかも知れないので、少し様子を見よう」となってしまう。上記のようなシステム化ができないなら、鉄の心でデータをチェックすることが求められる
 
その上で、アラートが出たときの対応を決めておく。メニューの見直しでも、従業員の再教育でも、経営者などによる現場チェックでもいい。アラートとその後の作業をセットにしておくことで、実効性の高いアラートになる。個人営業の場合、データを見た人が経営者そのものなので何をもってアラートするかは難しいが、アラートが出たときに行なうべき確認事項のチェックリストなどをつくって実行すればいいだろう。
 
もちろん、売上高などが減ってしまった段階では「早期」のアラートにならないという考え方もある。それなら、お客の食べ残しの比率、滞在時間、客単価などをチェック対象とすればいい。食べ残し比率などは記録しにくいが、主観でも継続的に記録すればそこに傾向が出る。データ化して、基準を突破したらアラートして振り返ることが目的。その方法は、その場その場で応用するしかない。
 
「外部システム」にこだわるなら、定期的な覆面調査をお願いすることになるが、これはかなり大きな出費となる。まずは上記のような仕掛けをするのが無難なように思う。
 


日々の劣化を発見するために


【ファーストフードのウソ】
  差なし、プラス差なし、プラス差なし、プラス差なし、プラス・・・は、
  いつかはっきりした差になる。

 
これは『コンサルタントの秘密』(ジェラルド・M・ワインバーグ/共立出版)に出てくる法則の一つだ。商品やサービスが日々少しずつ劣化していった場合、その変化に気づくことは難しいが、いつか大きな差になるという意味だと読み取れる。ある日、だしのとり方をちょっと手を抜いてそれが続くようになる。別の日には野菜の切り方がやや雑になり、また別の日には麺の湯切りが少し疎かになる。こういうことが続くと、一つ一つの劣化は大したことではなくても、いつの間にか料理はまったく違った仕上がりになってしまう。お客が離れ、気付いたときにはもう取り返しがつかない状態になる。
 
繰り返しになるが、こういう変化は気付き難い。だからこそ、炭鉱のカナリアを仕掛ける必要がある訳だ。ビジネスにおけるカナリアは、適材適所のデータ活用となるため一般化は難しいが、確実に効果が期待できる。実効性の高いデータ活用方法の一例として、「炭鉱のカナリア」をオススメしたい。

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