「消せるボールペン」で文書承認方法見直し?


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「消せるボールペン」が悪用されている。
出張書類にタクシーチケット、勤務表に請求関連の書類、果ては警察の調書まで。一度書いたら二度と「消せない」筈のボールペンを「消せる」ようにしたのは画期的だが、無理を通せばどこかにシワが寄る。ボールペンで書いた文字が「消せない」ことを前提にした旧来のシステムでは、トラブルの元になるのも必然だろう(参考:「消せるボールペン」のリスクは“消せる”か…自治体、使用禁止に躍起|MSN産経west)。
 
大阪市の新人職員研修では、「消せるボールペンという筆記具がありますが、当然、公文書には使わないように」と注意したという。しかし、そのくらいで「消せるボールペン」の使用を防ぐことができるのなら苦労はない。悪意のない人が何かの拍子で間違って「消せるボールペン」を使うこともあるだろうし、悪意のある人は注意されたくらいで「消せるボールペン」の使用を止めないだろう。「消せるボールペン」の悪用を防ぎたいなら、もっと根本的な対策が必要になる。
 

 


署名による承認の危機!?


「消せない」ものが「消せる」ことで危機に瀕しているのは「署名による承認」。変更できない筈の書類として署名承認したものを、後から書き換えられることによってトラブルが生じる。上司がOKした2時間の残業届けを部下が4時間に書き換えて経理に回せば偽装は完了。こんな手口を想像してみるとわかり易いだろう。
 
署名で承認した書類が後から変更される可能性は以前からあった。請求書などの金額の前に円マークをつけたり、空白部分に斜線を引いたりするのは、書き足しを防ぐものだ。「消せるボールペン」により、この手の改竄の手口が広がったと考えればいい。そして、新しい手口には新しい対策が必要となる。
 


対策いろいろ


さて、何らかの対策を考えるときに重要なのは、作業の手順を追って考えることだ。流れを想像して、それに沿って考える。この場合なら、悪意のある人が「消せるボールペン」を使う場面を思い浮かべ、どこをどう妨害できるか考えることになる。
 
 消せるボールペンを「使わせない」 
まず最初は、そもそも「消せるボールペン」を使わせないアプローチ。例えば、書類を作成する場所を特定してそこでは専用の「消せない」ボールペンしか使えにようにする。使わせないことができるなら、事後のトラブルは未然に防げる。ただし、それでもボールペンをすり替えられる危険は残るし、多くの書類は作成場所を特定できないだろう。
 
素人考えで発想の転換をするなら、書類側に仕掛けをする方法が考えられる。文字を書いた跡がくっきり凹んで跡が残るとか、書いた文字を消そうとすると書類が破れるとか。届け出などでは専用用紙があるのが普通なので、現実的でもある。技術的な問題がクリアできるなら、こんなところに商機があるかも知れない。
 
 消せるボールペンで書いた文字を「発見する」 
書くのは自由に任せて、後からチェックで発見するというアプローチも考えられる。これは実際に消してみればいいのだが、それは大変。特殊なライトをあてたら光るとか、専用のフィルターごしに見ると文字が消えるとか、チェックシステムは案外できそうに思う。
 
消せるボールペンを製造しているメーカーが、その責任を果たすために自ら開発すればなお良いだろう。信用は間違いないし、ビジネスにもなる。自作自演のような商売だが、それを責める人はいないのではなかろうか。
 
 消せるボールペンで書いた文字を「固定する」 
どんな筆記具で書こうとも、それを別な方法で固定してしまえば改竄の心配はない。このアプローチができれば、悪意がある人の「消せるボールペン」で書くという工夫を無効にできる。
 
簡単に考えるなら、手書きの書類を一度スキャニングして印刷すればいい。これだけでは、書き換え → 再スキャニング → 再印刷などもできるので、印刷にはスキャンすると柄などが浮き出る紙を使用する必要があるかも知れない。まあ、工夫を重ねていけばできないことはないだろう。
 


そもそもを疑え!


ここまで、「消せるボールペン」対策を小手先で考えたが、そもそものところを疑うことも必要だ。本当に「署名による承認」は最善なのだろうか。本来は手段であった「署名による承認」が、目的に成り代わってはいないだろうか。
 
手書きなり、印刷なりで出来あがった書類に対して、署名を残すことでその文章を正当化するという方法は極めてアンティークだ。技術の進化により書類や署名の偽装は容易になっているし、それこそ「消せるボールペン」などという飛び道具もある。何でも新しくすればいいというものではないが、文書の承認方法をそもそもレベルで見直す時期が来ているのは間違いないように思う。
 
昨日まで有効だったシステムを変えるには、何かきかっけが必要だ。そして、「消せるボールペン」による危機はそのきっかけに成り得る。もし、あなたの会社で新しい書類の承認システムを考える機会があるのなら、ぜひ新しい方法を試して欲しいものだ。

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