Adobe社のクラウドダウンとリスク管理の常識


この記事の所要時間: 340秒 〜 440秒程度(2119文字)


先週、Adobe社のシステムがダウンしたのをご存知だろうか。
Photoshop、Illustrator、Acrobatなどで有名な、あのAdobe社だ。利用できなかった時間は24時間以上。かなりシャレにならない(参考:Adobeの24時間アクセス不能の原因はメンテナンス作業中の問題発生|ITmedia エンタープライズ)。
 
ソフトウエア会社のシステムが使えなくなってもあまり影響がないように思うかも知れないが、いまのAdobe社にはCreative Cloudというクラウドサービスがある。使えて当然のクラウドが丸1日以上止まってしまえば、業務に支障が出るのは必至。調べてみると、Adobe社のクラウドは接続しない状態でもアプリケーションが使えるため影響は限られそうだが、クラウドにシステムダウンの心配が残ることに変わりはない。改めて、「クラウドに頼って大丈夫なの?」という疑問が持ち上がってくる。
 

クラウド

credit: M.Pigmyowl via FindCC

 


クラウドだけでは使えない!

話を単純化するために、クラウド上にあるアプリケーションを使う場合に絞って考えてみよう。業務用アプリでもゲームでも良い。ブラウザ上で動くアプリケーションを想像して欲しい。この場合、ソフトウエア会社のシステムがダウンしたり、インターネット回線が接続できなくなったりしたら、アプリケーションは使えなくなる。至極当然の話だ。
 
つまり、「ソフトウエア会社のシステムが100%ダウンしない」、「何があってもインターネット接続は切れない」と仮定しない限り、いつアプリケーションが使えなくなても不思議はない。もちろん、こんな仮定を支持する人は少ないだろう。つまり、「クラウドだけでは使えない!」という結論になる。
 
Adobe社のクラウドダウンの影響が比較的小さかったのは、最新のアプリケーションをパソコンに自動でダウンロードして使うシステムだったかららしい。要は手元にアプリケーションのバックアップがあり、それが動いたということだ。それはそれでリスクヘッジとして素晴らしいが、そうなると何がクラウドなのか素人にはわからなくなる。普通のダウンロードアプリと同じではないか。
 


それでもクラウド化は進む・・・

システムダウンやインターネットの接続切れといった大きなトラブルの可能性が残っていても、クラウド化は更に加速度を付けて進むだろう。理由は簡単。クラウド化がビジネスになる人たちがいるからだ。
 
3Dプリンタ然り、SNS然り、ビッグデータ然り、そしてもちろんクラウド然り。
それが浸透することがビジネスになるとわかれば、人は動く。このとき、その浸透が顧客のビジネスに本当に良い影響を与えるかはあまり関係ない。性能説明と営業トークが渾然一体となったような売り込みで、顧客になりそうな会社への大量のアプローチが繰り広げられる。ひとつ間違えれば、「我が社のシステムは99.99%ダウンしない」、「設備さえ整えれば、インターネット接続はほぼ切れない」」など、リアリティや確率論を無視したことを平気で言い出す始末だ。
 
そして、このようなビジネスが大きな流れとして支持を得てしまえば、1社だけ1人だけこれを避けるのは難しい。同調圧力が働いてくるからだ。例えば、電子メールのセキュリティに疑問を持っていて本当は使いたくなくても、「我が社はメールを使いません」とはいかないだろう。このとき、問題点が残っている、効果が期待できないなどの正当な反論はないがしろにされることが多い。
 


ビジネスのやり方を再考するチャンス?

それでも、世間の風潮に流されていはいけない。ある程度は同調しつつも、自社で考えることが必要になる。同調圧力に真っ向からは逆らえなくても、積極/消極は自社で決められるし、トラブル対応への準備はみずからでできる。
 
新しいサービスの売り込みをいちいち疑っていてはキリがないし、取り入れることが成功を導く場合があるのも確か。しかし、すべてを鵜呑みにするのは禁物だ。そして、インターネットやデータに関する技術は、目眩ましが効きやすい。リスク管理においては、相手の言葉を疑うのが常識。相手の売り文句について、人間としての常識で疑うことが大切になる。「99.99%ダウンしないシステムは万が一には落ちるので、信頼に足らない」と反論して考えるのだ。
 
今回のAdobeのクラウドトラブルを良いきっかけにして、世間の流れに同調して使っているサービスを見直してみたらいかがだろうか。毎日空気のように使っているシステムが危険に思えたり、不要に見えたりしてくるだろう。そしてそうなれば、ビジネスのやり方を再考するチャンスとなる。何かと世間に流されがちな今どきのビジネス。ときにはいろいろ見直すことで新たな展開が生まれてくるように思っている。

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