ゴキブリ指数は有効?無効?


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1876文字)


ゴキブリの発生リスクが一番高い都道府県は東京都らしい。マイスタースタジオという会社が発表したデータによるもので、東京都の指数は2.31。これが全国平均を1として算出した値だから、東京のゴキブリ発生リスクは全国の2倍以上ということになる(参考:ゴキブリ「発生リスク」が高い街はどこか?|MSN産経west)。
 
この「ゴキブリ指数」とでも言いたくなる数値。
「まあ、そんなところかな」と思いつつも、算出方法が気になるのがデータ好きの性だ。そこで、この指数についてちょっと考察してみた。
 

計算

credit: geralt via FindCC

 


元データは相談件数


記事によると、ゴキブリ発生リスクは「同社が運営するサイト「ゴキブリ駆除マイスター」に寄せられた相談件数をもとに算出した」とのこと。都道府県別の相談件数を元データにし、これを各世帯数で割った上で、全国平均との比を計算している。
 
総務省が発表した住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(平成25年3月31日現在)によれば、全国の世帯数は55,577,563世帯。「ゴキブリ駆除マイスター」に寄せられた全国の相談件数は1,042件なので、100万世帯あたり18.8件の相談となる。相談件数がわかっている東京都と大阪府について同様に計算すると、それぞれ45.4件(302件、6,653,367世帯)、39.6件(162件、4090,596世帯)。全国平均との比は、記事中の値とは異なるものの、ほとんど同じ数値になる。世帯数のデータが違うための差分と推測され、このような計算をしているのはほぼ間違いない。
 


ツッコミどころ満載?


さて、このデータ。何となくもっともらしいものの、ツッコミどころは満載だ。
 
まず、「相談件数」というところに限界がある。ゴキブリが発生したとき、専門業者に相談するというのは余程の事態。多くの人は、家にちょっとゴキブリが出たくらいでは業者に相談しないだろう。「相談件数」を元データとして指数をつくると、業者に相談するほどの大量発生のみを対象にしてしまう可能性があるのだ。
 
また、都道府県によって害虫駆除業者の勢力図が違うこともあるだろう。この場合、ライバル会社が多数ある都道府県では、それらの会社に相談する比率が高まることになる。当然ながら、自社への相談は減る筈だ。1社の相談件数だけを元にしては、この部分の影響が補正できない。
 
更に言えば、世帯数で割るのが妥当かということも考えなくてはならない。専門業者に相談するのは、飲食業や宿泊業などの事業者も多いと想像されるからだ。その結果、人口に比して事業者が多い都道府県は指数が高くなり易いかも知れない。
 
このように、ツッコミどころの例を挙げればキリがない。この指数にはいろいろと雑なところがある。
 


完璧な指数はない!


こう書くと、この指数に批判的なように感じられるだろうが、そんなことは一切ない。「自社ができる範囲」で考えた素晴らしい指数だと思う。有効か無効かを判定するなら、もちろん有効だ。
 
何かを指数化するとき、少しでも良いものを目指すのは当然だが、いくら注力しても完璧な指数などはつくれない。実際には、いくつかの条件や前提を置いた上で指数化することになる。このとき、もっとも問題なのは完璧を目指すあまり、指数の作成をやめてしまうことだ。
 
指数によって「求められているレベルが違う」ということもある。行政が害虫駆除対策を立案する基準を考えるなら、今回の指数は少し雑過ぎるだろう。一方で、一企業が一つの目安として提示するなら充分なレベルに達しているように思う。この企業の指数化の狙いが自社の認知を高めることなら、今回の指数化は大成功だ。
 
何らかの指数をつくるとき、完璧を目指す必要はない。一人でも多くの人に共感してもらえる指数をつくればいいだけだ。社外に発表する指数でも、社内で活用する指数でも一緒のこと。そして、使用目的にあわせてそのレベルを決めれば良い。言うは易く行なうは難しの典型とも言えるが、指数づくりにはこの意識が大切となる。良い指数をつくるのは大変だが、怖がっていては何も始まらない。ぜひ、いろいろトライアルして、役立つ指数を考えて欲しいものだ。

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