究極の質問と良い利益、悪い利益


この記事の所要時間: 330秒 〜 430秒程度(1989文字)


前回の記事・究極の質問 この商品を友人に薦めますか?では、「究極の質問」からNPSを求める手法について説明した。「○○を友人や同僚に薦める可能性は、どのくらいありますか」と問うことでその商品に対するお客の態度を確認し、そこからわかる推奨者と批判者の割合から正味推奨者比率(ネットプロモータスコア=NPS)を算出するアプローチだ。NPSを正しく把握して、この数値を向上させるような対策を行なうことが、企業に利益と成長をもたらす。
 
このアプローチの背景にあるのが、企業が真の顧客志向を実現して顧客ロイヤルティを獲得できれば、企業は継続的な利益と成長を手に入れられるという考え方だ。究極の質問やNPSは、ある意味、この考えを実現させるための強力な手段に過ぎない。究極の質問を使ったアンケートを有効活用するためには、背後にある「顧客志向 → 顧客ロイヤルティ獲得 → 企業の利益と成長」という流れを腹落ちさせることが必要になる。成長までの流れを外面的に理解するだけでなく、その取組について内面的に納得することが求められるのだ。そして、ここでキーワードとなるのは良い利益、悪い利益という概念になる。
 

ロイヤルティ

credit: bloeise via FindCC

 


良い利益と悪い利益


良い利益とは「顧客の熱心な協力により得られる」利益のこと。これに対して「顧客を食い物にして得る」のが悪い利益となる。満足した顧客がみずから継続購入し、友人や同僚に薦めることによって得られる利益が前者、お粗末な顧客体験を生み出す経費削減や紛らわしい価格設定で利益を捻り出すのが後者。その差は歴然としている(参考:『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』フレッド・ライクヘルド/ランダムハウス講談社)。
 
利益に良いも悪いもないという考えもあるだろうが、この考え方はしっくり来る。悪い利益は、将来の売上や利益への期待値を下げることで得られるのだ。財務諸表には計上されないものの、利益と同時に「含み損」をつくっているのと一緒。人間の忘却や競合企業の不在に期待するのは自由だが、継続的な利益確保はかなり危なっかしい。
 
つまり、利益や成長を目指すなら、お客の周りに高い塀を立てて「囲い込み」しようとしてはいけないのだ。他社にはできないくらい満足させて、放っておいても離れられないほど「やみつき」にすることが必要となる。
 


「測定」できれば目標になる


良い利益を出すためにネックとなるのが、社内の評価システムだ。顧客志向を第一とし、顧客満足の充実を経営理念に掲げていても、顧客満足を社内評価に反映させるのは難しい。社内での評価が、顧客満足の代わりに売上や利益で行なわれていれば、誰も「良い利益」を目指さなくなってしまう。残念ながら、人は理念だけでは動かない。
 
利益は測り易く、顧客の気持ちは測り難い。
このため、顧客志向を目指していても、顧客満足向上に真剣に向き合うつもりでいても、企業は社内評価を売上や利益で行なってしまう。そして、今までなかなか「測定」できなかった顧客の気持ちを測るのが究極の質問であり、NPSとなる。
 
企業が目標を掲げるのなら、それを測る指標が必要になる。「測定」できないものは目標にならず、「測定」できることによって初めて目標として成立するのだ。更に、測定した指標と社内評価が連動すれば、目標は達成し易くなるだろう。この仕組みを正しく稼働させられることが、まさに究極の質問の効果となる。
 


「きれいごと」でいいじゃないか!


こういうことを言うと、「きれいごと」だと見なされることも多い。確かに、現場で日々の売上をつくることに躍起になって人にとっては、何も役に立たないお題目に見えるだろう。現場を知らない人間の言う理想論という訳だ。
 
しかし、それは近視眼に過ぎない。目の前にある現実に夢中になり過ぎて、大きな視点を失っている。「顧客志向 → 顧客ロイヤルティ獲得 → 企業の利益と成長」の流れが腹落ちするなら、これを目指さない手はない。「きれいごと」と言われてもいいじゃないか。
 
顧客ロイヤルティを「究極の質問」で測定して、NPS向上を目指した戦略をつくる。真の顧客志向を目指すなら、このアプローチはかなり有効な手法となる。悪い利益に慣れてしまっている人には非現実的に見えるかも知れないが、お客の立場で考えれば至極当然の結論だ。いつまでも悪い利益を追っていては先がない。悪い利益に少しでも心当たりのある人は、この顧客志向の測定方法を試してみたらいかがだろうか。

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.