笑顔を数えて幸福度を測る!?


この記事の所要時間: 420秒 〜 520秒程度(2419文字)

幸福になることが人生の唯一の目的です。
そして一日に何回微笑むかが その人の人生をはかる唯一の尺度です。

これは、アップルの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアックのものとされる言葉。いろいろ調べても出典がはっきりしないが、いかにもウォズが言いそうなことだ。人生の目的を「幸福になること」と言い切る無邪気な心と、それを「一日に何回微笑むか」で検証しようというエンジニアの心が共存しているところがウォズらしい。
 
幸福度を笑顔の回数で測定するというアプローチはかなり突飛に見えるだろうが、実はいい線を突いているように思う。そもそものウォズの発言の趣旨は脇に置いて、うまく応用すればビジネスの現場でも使える手法ではないだろうか。
 

 


アンケート調査より行動観察が役に立つ?


アンケート調査で次のように幸福度を質問したら、その回答はどうなるだろうか。

あなたは幸福ですか。 (○印はひとつ)
  1.幸福である
  2.まあ幸福である
  3.何とも言えない
  4.あまり幸福ではない
  5.幸福ではない

その結果の分布は別にして、対象者それぞれの心理が回答に大きな影響をあたえるのは間違いないだろう。傍から見れば幸福でも「あまり幸福ではない」を選ぶ人、実際は幸福と感じてなくてもそれを認めたくなくて「幸福である」とする人、自分が幸福かどうか考えることを拒否して「何とも言えない」と答える人、・・・。人のいろいろな思いが入り混じるため、「実際の幸福さ」と「アンケート結果としての幸福さ」は大きく乖離したものになる可能性がある(そもそも「幸福さ」が測れるという考え方が厚かましいが、今回そこは見逃してもらおう)。
 
商品の満足度や購入意向でも、同じような回答は発生する。
それを、一定量そういう人がいても互いに相殺される、同じ質問を何回も繰り返せば時系列での比較可能などといった解釈を加えて活用することになるが、対象者の心理の影響を受け易いのがアンケートの欠点だ。質問内容によっては、見栄を張ったり(幸福度、年齢など)、アンケート実施側に気を遣ったり(満足度、商品評価など)もする。
 
この欠点を補うのが行動観察だ。行動観察では、アンケートに回答させるのではなく、実際の消費者の行動を観察することで状況を把握する。心理的な影響を排除する訳だ。例えば、スーパーで特定の商品に「気付いたか」、「興味を持ったか」を質問するのではなく、「何割の人が商品の前で立ち止まったか」、「平均で何秒くらい立ち止まったのか」、「商品を手に取った人に共通の反応はあったか」などを観察して記録する。観察のやり方に制約があったり、ものによっては観察者によってバイアスが掛かったりすることもあるが、広くリサーチの枠組みで考えればかなり有望な手法となっている。
 
笑顔の回数を数えるアプローチは、正にこの行動観察の派生として捉えることができる。幸福度は、アンケート調査で聞いた場合、対象者の回答に大きな歪みが生じそうな質問だけに、このテーマについての行動観察はとても有効なやり方だと考えられる。
 


お客の写真を撮って・・・


さて、難しいのはどうやって笑顔を数えるかだ。ウォズが言っているのは「人としての幸福」だろうから、一生分の笑顔をすべてとらえる必要が出てくる。顔の表面にシールで貼れるセンサーを付けて筋肉の動きを測定する方法、顔の様子を写すカメラをヘルメット等で固定して観察する方法が考えられないではないが、どちらも常時となると大変だろう。センサーやカメラの技術が進化すれば何らかの方法が出てくるかもしれないが、いまのところリアリティはない。
 
一方で、サービス業のお客の笑顔は数えられそうだ。お客が目の前にいるのだから、笑顔の測定が急に現実的なものとなる。例えば、飲食店の店内のお客のうち何割が笑っているかは、どこかしこから写真を撮ることで可能になるだろう。この場合も常時観測は難しいが、1時間に1度写真を撮影して、お客それぞれが笑顔なのかを目視で判定することは可能だ。そして、この笑顔の比率をのデータを蓄積していけば、お客の幸福度の推移がわかることになる。性別や年齢によって、また食べているメニューによって、笑顔の比率が違えばそれをマーケティング等に役立てることができそうだ。
 
写真を撮ることに問題があるのなら、会計の際に笑顔かどうかチェックする方法もある。もちろん、お店に満足したかどうかで笑顔になったりならなかったりするか人それぞれだが、笑顔を測定することで何かが見えてくる可能性は高い。
 


お客の笑顔を目標にするなら、検証しよう!


「お客さまの笑顔」が登場する企業の理念や目標は案外多い。そのほとんどは精神論のようなもので、それを実現するような心掛けを促すものだろう。
 
とは言え、これは見方を変えれば、理念や目標が達成されたかどうか検証できないということだ。印象論で「最近お客の笑顔が多い」などとすることはできるが、そういうアプローチでは実態はよくわからない。
 
アンケート調査でこれを間接的に把握するアプローチは考えられるし、実際にやっている企業も多いだろう。しかし、満足等の測定には上で書いたような限界がある。そして、だからこそお客の笑顔の回数を直接的に数えるアプローチが有効になるのだ。具体化はなかなか難しいが、何とも魅力的な手法だ。お客の幸福を真に願っているのなら、笑顔の回数の実測にトライしてみてはいかがだろうか。

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