瓶ビールと生ビール、どちらが正解?


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1880文字)


インターネットには定期的に湧き出す不思議な議論がある。
今回タイトルにした、瓶ビールと生ビールの争いもその一つだ。各地で梅雨が明けて、今や夏も真っ盛り。今年も、この話題が何処かしこで取り上げられていることだろう。
 
正直、「好きな方を頼めばいいじゃん!」のひと言で終了の話だが、この議論はちょっと統計の発想が入っているところがおもしろい。統計を苦手とする人の多くがつまづく標準偏差の考え方が、その背景にあるのだ。モノを評価するときには、平均だけではなく標準偏差、即ちバラツキについても考えることが必要。今回は、そんなトピックスを瓶ビールと生ビールの例で書いてみようと思う。
 

ビール

credit: diloz via FindCC

 


あなたは瓶ビール派? 生ビール派?


この議論でよく出るのが、生ビールは店によって旨さが違うという意見だ。ビアサーバーの手入れやビールの注ぎ方で味が大きく変わってしまうという理屈。これに対して、瓶ビールの品質はほぼ一定しており、瓶ビールを頼む方が正しいという見解になる。
 
一方で、そもそも生ビールは瓶ビールよりもおししいという反論も登場する。その場で樽から注いだ「生」なのだから、そのぶんポテンシャルが高いという立場だ。今どきは瓶ビールも「生」がほとんどとは言え、生ビールの方が瓶詰め工程がないだけ新鮮なのは確かだろう。これは当然、生ビールの方が正しいという意見になる。
 
このように、瓶ビール派、生ビール派がそれぞれ一定数いて、なかなか結論が出ないから議論が繰り返される。ビール製造の細かな技術論は別にすれば、いつも出てくるのはこのような内容だ。
 


確実性を取るか、一杯の旨さの可能性を取るか


これを統計的(?)に考えれば、平均と標準偏差=バラツキの話になる。
ビールの味を10点満点で評価できるとしよう。このとき、瓶ビールの点数は7〜8点に分布して平均7.5点、生ビールの点数は6〜10点に分布して平均8.0点と捉えれば、上の議論は説明できる。
 
瓶ビール派は確実性を重視している。瓶ビールは生ビールと較べて平均では劣るかも知れないが、当たり外れが少ないとういう主張だ。生ビールの方が平均点が高くても、バラツキが大きくて不味いビールを飲まされる可能性があるなら、瓶ビールの方が確実性が高いという考えに立つ。
 
一方で、生ビール党が重視するのは平均点の高さ。多少のバラツキはあっても、平均的には「生」である分だけおいしいという主張だ。つまりは、平均値で勝負しましょうということになる。
 
実際には、ここにシチュエーションの問題が絡んで、居酒屋は総じて生ビールの管理や注ぎ方やが悪く平均も低いとか、そんな居酒屋は瓶ビールも温度管理がいい加減なのでうまくないとか、ややこしい話になる。しかしそれでも、ビールと生ビールでバラツキが違う点が大きな論点であることには変わりないだろう。要は、確実性を取るか、一杯の旨さの可能性を取るかの選択になるのだ。
 


評価基準は先出しで!


さて、議論が尽きないのがなぜかと言えば、評価基準がはっきりしないためだ。誰もが同じ評価基準を持っていたり、議論が始まる前に評価基準をすり合わせておけば、話はまとまり易くなる。もちろん、ネットでの議論の場合、議論自体を楽しんでいるところもあるのでこのような決め付けをしても仕方ないが、一般にはそう言うことだろう。
 
インターネットかどうかに関わらず、議論が始まってから新しい評価基準が出てきたり、そもそも基準を決めずに評価を始めたりして議論が混乱することは多い。議論と評価基準が表裏一体で切り離せないこともあるとは言え、評価基準を明らかにせずに議論していては方向性のない議論になり兼ねない。
 
議論自体を目的とするのでない限り、事前に評価基準を明確にすることが大切になる。そして、当たり前のことでありながら、これがなかなか為されない。何人もで考えるときはもちろん、個人で考えるときでも評価基準の先出しは欠かせない。これが為されないと、議論や考察がなかなか決着しないためだ。議論という手段の目的化を避けるためにも、評価基準を先出しすることが必要になる。収拾の付かない議論に陥らないためにも、評価基準先出しの習慣を身に付けたいものだ。

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