「歩きスマホ率」を測定しよう!


この記事の所要時間: 450秒 〜 550秒程度(2681文字)


「歩きスマホ」対策が話題になっている。
NTTドコモが新宿駅の階段に注意喚起の広告を出したり、auから歩きスマホ注意アプリがリリースされたり、中国で歩きスマホ専用レーンができたり。昨年のニュースになるが、千代田区では関係機関が対策を話し合う会議が開かれた。現在は、歩きスマホの危険性が周知され、その対策が動き出している段階と言えそうだ(参考:“歩きスマホ”で対策を協議|NHKニュース ※リンク切れ)。
 
さて、この話題のニュースを見るたびに、何ともボンヤリした印象を受ける。数値による「見える化」がされていないため、話に締りがないのだ。歩きスマホ対策をすることは素晴らしいとして、その効果を測定しなければただの自己満足になってしまう。しっかりした話にするためには、現状を数値で把握し、目標値を定めて、その達成を確認することが必要になる。今のままでは、「やりました」というポーズを見せるためのアリバイづくりと言われても仕方がない。
 
ここで必要なのは「歩きスマホ率」を測定して、その変化から対策の効果を測ることだ。では、どうやって「歩きスマホ率」を測定したらいいだろうか。今回はこれについて考えてみることにする。
 

texting while walking

credit: Wang Alive via FindCC

 


「歩きスマホしている人」と「歩きスマホしてない人」を数えれば・・・


アンケート調査で歩きスマホ率を調べるのは難しい。質問できるのは、歩きスマホの経験有無や歩きスマホの頻度がせいぜい。正確な答えを期待するのは無理があるし、そもそも自己申告では回答者が自分を美化するために嘘をつく。定期的に同じ質問で調査して推移を見れば変化はわかるようにも思うが、世の中の歩きスマホへの風当たりが強くなれば歩きスマホの経験を隠す人が増えるだろう。自己申告での回答を信用するのは、あまり現実的でない。
 
歩きスマホ注意アプリがあるくらいだから、スマホ側に仕掛けをして歩きスマホの状態を測定することはできる筈だ。スマホのアプリで、歩いている時間と、歩きながらスマホを使っている時間を測れば、かなり正確な歩きスマホ率を測定することができる。問題は、歩きスマホをする人は、そういうアプリを使わないであろうこと。OSに組み込めばまた別だが、それはiOSやAndoroidOSの開発者でもなければ、手が届かない。「組み込むべき」といっても始まらないだろう。
 
歩きスマホ率の測定アプリを提供して、歩きスマホしてないことを競わせる仕掛けをつくるのは妙案かと思ったが、これもダメ。歩きスマホの防止になる可能性はあるが、歩きスマホ率の測定には役立たない。歩きスマホ率測定アプリと同様、歩きスマホをするような人はこのアプリを使う訳がないからだ。
 
最も現実的なのは、街を歩く人を1人1人観察して、歩きスマホをしているかどうか記録する方法だろう。交通量調査のようにして、「歩きスマホしている人」と「歩きスマホしてない人」を数えればいいのだ。歩きスマホ調査をしていることがわかれば多くの人が歩きスマホをやめてしまうので、交通量調査にカモフラージュするのは悪くない。
 


「歩きスマホ」を定義する


歩行者を、
 ●歩きスマホしている人
 ●歩きスマホしてない人
にわけるためには、「歩きスマホ」の定義が必要になる。世の中で一般的に考えられている「歩きスマホ」の定義ではなく、調査で「している」と「していない」をわけるために必要な定義だ。これを手抜き、調査員個人の判断に任せてしまっては調査が成立しない。
 
定義に必要なのは、まず、対象とする機器の範囲だろう。「歩きスマホ」の意味をそのまま捉えれば対象はスマートフォンだけとなるが、それではおかしなことになる。歩きながら、普通の携帯電話(俗に言う「ガラケー」)でメールを打っている人は、スマートフォンを使っている人と同じくらい迷惑だからだ。そうなると、対象機器はノートPC、タブレット、スマートフォン、携帯電話、携帯ゲーム機と言ったところになるだろうか。携帯音楽プレーヤーは悩ましいが、あまり画面を見ないので最初から対象外にしてもいいように思う。電卓や電子辞書を使いながら歩いている人はさすがにいないと思うが、これもどうするかは決めておいた方がいいだろう。
 
たまに、本を読みながら歩いている人を見かける。「歩き読書」は「歩きスマホ」と同じくらい危険だろうが、これは対象外だ。友人などとの話に夢中になって注意力にかけている人も同じこと。電子機器に絞り込まないと話がややこしくなる。このあたりは割り切るしかないだろう。
 
もう一つ必要なのは、スマホと向き合っている状態だ。画面をじっくり見ていれば「歩きスマホ」で間違いないが、手に持っているだけならどうだろう。これを、「歩きスマホしてない人」にしたら、今度は数秒に1回くらい「チラ見」する人の判断に困りそうだ。電話を掛けているだけでも充分集中力が落ちるので「歩きスマホ」。ヘッドホンで音楽を聞いているだけなら、セーフといったところだろうか。
 
「歩きスマホ」の基準は人それぞれだろうが、調査をするためには共通の定義が必要になる。ここで挙げた以外にも、いろいろ考えなくてはいけないこともあるだろう。いずれにせよ、定義を決めてからのスタートだ。
 


話題づくりに貢献するのは間違いない?


歩きスマホの定義さえ決まれば、後は調査するだけ。個人では難しいが、大学のゼミや商店街などならできるのではないだろうか。性別×年齢ごと、場所ごと、時間帯ごとに調査して比較すれば、時系列でなくても貴重な資料を得ることができる。
 
何を調査するにしても、まず最初に入念な調査設計が必要になる。設計が曖昧なまま何かを測定しても、その結果の扱いは困難だ。今回、「歩きスマホ率」について書いたことは机上の空論に過ぎないが、実際に有効な調査をするためにはこのようにひとつひとつ考えを積み重ねるしかない。興味と実現の手段がある方は、今回披露した調査設計を更に磨いて、「歩きスマホ率」を調査してみたらいいだろう。実用的なものができるかは別にして、話題づくりに貢献するのは間違いない。一興に値すると思うが、いかがだろうか。

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