カセットテープ型ICレコーダーは誰が買う?


この記事の所要時間: 340秒 〜 440秒程度(2082文字)


パナソニックから発売されたICレコーダー「RR-SR30」が話題になっている。
Engadget日本語版週アスPlusマイナビニュースなど、いくつものニュースサイトで紹介されたので、ご覧になった方も多いだろう。
 
このICレコーダーの特徴は、ズバリそのデザイン。「RR-SR30」はカセットテープを模してつくったICレコーダーなのだ。全体の見た目は、カセットテープそのもの。更に、「ボタンをテープレコーダーのように配置」し、「録音・再生時には画面に表示されるリールハブのイラストが回転し、録音・再生していることが視覚的にわかりやすく」表現している。正に、カセットテープを使い慣れた人向けのICレコーダーと言える(参考: ICレコーダー RR-SR30を発売|プレスリリース|パナソニック)。
 
ただ、このICレコーダー。正直に言ってしまえば、「おもしろいけど残念な商品」という印象だ。他のICレコーダと差別化はできているものの、その差別化要因がターゲットに届かないように思えてならない。そうなると、「誰も買わない」商品になってしまう。
 

cassette tape

credit: kitakitts via FindCC

 


ターゲットは高齢者


この商品のターゲットは、高齢者で間違いないだろう。そこまで高齢でない人の多くは、スマートフォン等の録音機能や普通のICレコーダーを使うと考えられるからだ。パナソニックの商品紹介ページを見ても、高齢者、シニアなどの直接的な表現はないものの、説明やイラストからそのターゲット像が浮かび上がってくる。
 
そして、ターゲットが高齢者だからこそ、カセットテープを模したことに意味がある。一定年齢以上の人にとって、カセットテープは個人的な録音の原点。これに似せれば操作性の迷いを減らすことができる。高齢者をターゲットにするなら、使い易くするという狙い自体は間違ってないだろう。差別化の方向性は、ターゲットにフィットしている。
 
ただし、もっと根本的な部分に問題がある。そもそも、高齢者はICレコーダーを使うだろうか。ICレコーダーの用途といえば、会議やインタビューの文字起こしをイメージする人が多いだろう。各社のホームページを見ても、これ以外に出てくる用途は、メモ代わり、語学学習、習い事、楽器練習、ラジオ録音など。どれも、高齢者とはあまり結び付かないように思われる。
 


頭の中でつくり上げたニーズ?


ICレコーダーと高齢者が結び付かないというのは自分の常識からの判断で、確たる根拠はない。充分な調査を行なえば、そこにニーズが発見できるのかも知れない。パナソニックが、常識に反するニーズを見付け出したのなら、それはとても素晴らしいことだ。
 
とは言え、この商品「RR-SR30」の紹介ページにある利用例は、
 ●おけいこの授業内容の録音
 ●カラオケ音源の録音
 ●病院などでの会話の録音
 ●日々の備忘録としての録音
とオリジナリティのないものばかり。確かに高齢者でもICレコーダーが必要になりそうなシーンではあるものの、何とも表面的な印象を受ける。「そのシーンなら、いかにも高齢者がICレコーダーを使いそう」というリアリティが感じられないのだ。
 
まるで、ターゲットのニーズをリアルに確認せず、開発者などが自分の頭の中でつくり上げたニーズのように見えてしまう。そこに本当にニーズがあるのか。疑わしく思うのは自分だけではないだろう。
 


新しい用途を考えよう!


この答えは市場が出す。
この商品が売れれば、パナソニックは新しいニーズを見付けたことになる。一方、売れなければ、ニーズはつくり上げたものなのだろう。もちろん、「売れた」の基準が明確ではないし、実際に商品が売れるかどうかはさまざまな要素の影響を受けるので曖昧な部分はあるが、まずはそう考えるしかない。
 
既存の商品が売れなくなったとき、ターゲットを変える/増やすのは常道だ。ただし、そのとき一緒に商品の新しい用途を提案しないと、どこかしこに無理が寄ることになる。新しいターゲットは、今までその商品を買わなかった人たちなのだから、新しい用途を示さない限りそこに需要は生まれない。この新用途を開発者等の思い込みでつくると、市場のないところに商品を提供することになる。これでは、失敗は確実。典型的なプロダクトアウトになってしまう。
 

お客のニーズが見えているところに商品を投入するのが基本。見えていないニーズを掘り起こせれば大きなヒットになる可能性があるが、これを表出させるためにはそれ相応のアイデアが必要になる。アイデア無しにして、ニーズのないところに商品を提供しても売れる訳がないのだ。いかなるビジネスでも、ニーズを徹底的に考えることが重要になる。

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