2015年、日本人女性の半分が50歳以上になる?


この記事の所要時間: 440秒 〜 540秒程度(2555文字)


先日、来年日本人女性の半分は50才以上 アラフィフはまだ「若手」という記事が目に止まった。NEWSポストセブンに掲載されたもので、「女性セブン2014年10月2日号」からの転載らしい。記事の内容は、これから50歳を超える女性が増えていき、「経済も情報も、50才以上を中心にして回っていく」というもの。勇ましいのは素晴らしいが、記事タイトルにある「来年日本人女性の半分は50才以上」は本当だろうか。
 
記事の当該部分を引用すると以下の通り(読み易いよう改行を追加)。

先日、とある外資系コスメ会社の発表会で伺った衝撃的データです。
なんと、「2015年、日本人女性の2人に一人は50才以上」なんですって。
びっくりでしょ?
最近発表された日本人女性の平均寿命は86.61才。
考えてみれば、平均年齢が50才に近づいても不思議ではないんですね。

 
正直に言えば、はじめてこの記事のタイトルを見たときは「到頭、そこまで来たか」と考えた。自分が大雑把に把握している人口分布のイメージでは、「そろそろ、50歳以上が半分になっても不思議はない」くらいの印象だったからだ。そんなことを考えつつ記事の内容を見たところ、データの根拠はまさかの伝聞情報。「あやしいな」と直感して調べてみたところ、案の定だったというのが今回の話となる。日本人女性の50歳以上と49歳以下のバランスは、まだ少しの間、49歳以下が多い状態が続くと考えられるのだ。
 

credit: Digitalnative via FindCC

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4月現在、日本人女性は49歳以下が3369.3万人、50歳以上が3075.8万人


人口データといえば国勢調査を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、国勢調査は5年に1度しか行なわれないため、それだけでは毎年、毎月の人口がわからない。そこで、提供されているのが今回利用した毎月1日の人口推計だ。国勢調査の結果を元に、出生、死亡、転入、転出を加味することで、毎月の人口を推計している。
 
さて、最新となる2014年4月1日現在の人口推計(確定値)を見てみると、日本人女性は49歳以下が3369.3万人、50歳以上が3075.8万人となっている。49歳以下の方が、まだまだ多い結果だ。問題はこの後に、どのような変化が起きるかということになる。
 


逆転まであと5〜6年は必要


49歳以下女性人口、50歳以上女性人口が、今後どのように変化するかを厳密に予測するのは、いろいろと面倒だ。そこで、ここではかなりザクっと考えてみることにする。
 
人口変動の要因は、基本的に出生、死亡、転入、転出の4種類となるが、ここでは相対的に少ない海外への転出、海外からの転入を無視することにする。更に、年齢別の死亡率を使うのもややこしいので、死亡者をすべて50歳以上と仮定することで単純化をはかることにしよう。
 
そうすると、両層の今から1年後の人口は以下の数式であらわせることになる。

 ●49歳以下人口 = 現在人口 + 出生数 ー 今の49歳人口
 ●50歳以上人口 = 現在人口 ー 死亡数 + 今の49歳人口

各数値は、かなりの概数ながら、出生数:約50万人、死亡数:約60万人、49歳人口:約80万といったところ。1年で49歳以下人口が30万人程度減り、50歳以上人口が20万人程度増えることになる。1年で縮まる両者の差は50万人前後だ。
 
4月時点の49歳以下人口と50歳以上人口の差が約300万人なので、逆転まであと5〜6年は必要なようだ。相当アバウトな試算だが、来年逆転するようなことはあり得ない。
 

ちなみに、最近5年間の4月1日人口推計を使って女性49歳以下人口、女性50歳以上人口を集計すると以下の通りになる。上の概算値とだいたいは一致していることが確認いただけるだろう。
 
          49歳以下   女性50歳以上  差
 ●2014年    3369.3万人  3075.8万人   293.5万人

 ●2013年    3399.5万人  3057.5万人   342.0万人

 ●2012年    3428.5万人  3039.2万人   389.3万人

 ●2011年    3455.3万人  3019.2万人   436.1万人

 ●2010年    3465.3万人  2982.7万人   482.6万人

 


数字はひとり歩きする


「とある外資系コスメ会社の発表会」でどのような発言があったかはまったくもってわからないが、2015年に日本人女性の半分が50歳以上になることはなさそうだ。発言した側の勘違いや言い間違い、発言を聞いた側の誤解で、このような記事となったのだろう。
 
よく言うことだが、数字はひとり歩きする。
何らかの数字を発表すれば、その数字が正しかったとしても、それを間違って記憶する人や誤って解釈をする人があらわれて、不正確な情報として周囲に伝わってしまうものだ。だからこそ、データの発信する側としてはできる限り正確なデータを、できるかぎり誤解できないような形で提供しようとする。しかしそれでも、数字のひとり歩きをさけられないのが実情だ。
 
データを間違って記憶したり、誤って解釈したりするのは自由だが、それで不幸な結果を招くことは何とも残念だ。そして、このような事態を少しでも避けるためには、データの受け手側が疑いの目を持つことが必要だろう。出処のはっきりしないデータは裏を取って、間違いないことを確信してから利用する。当然のことかと思われるが、これが雑誌の記事レベルでできていないのだから、世の中にはこんな例が無数にあると考えられる。自分や自社、そしてビジネスの相手先が不幸にならないためにも、データの裏を取る習慣をぜひ付けて欲しい。この記事のデータを確認していて、つくづく考えた。

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