Think different. 一般システム思考のススメ


この記事の所要時間: 510秒 〜 610秒程度(2812文字)


ビジネスで成功するためには、自分の頭で考えることが大切だ。他人の意見に充分耳を傾けつつも、最後の最後はみずから考えて判断をくだす。当たり前のことのようで、これがなかなか難しい。巷に思考法についてのハウトゥー本が溢れるのを見ても、誰もがモノを考えることの難しさを感じているのは間違いないだろう。人と違った考え、人より深い考え、そして何より人より価値のある考えを導き出すことは容易でない。
 
モノの考え方に正解はないのだろうが、自分は「一般システム思考」の発想を大切にしている。一般システム思考を使えば、思考の節約ができ、発想の転換も生み出し易くなるのだ。モノの見方を変える「Think different.」の実現には、思考の内容より思考の方法が重要。そして、一般システム思考は、人の思考そのものに注目した考え方とも言える。ぜひ、一般システム思考をオススメしたい。
 

 


一般システム思考とは


では、一般システム思考とは何なのか。自分の理解では、「いくつものジャンルで共通して通用する一般的な法則を考えること」となる。一般システム思考では、個別の事象や固有の学問領域について考えるのではなく、それらに共通する法則を見付け出すのだ。
 
A社とB社の事例からマーケティング領域での知見を獲得する。C社とD社からは組織論領域での知見を得て、他の会社では財務やIT活用の知見を見付け出す。このとき、これらの各領域の知見に共通する法則が、ビジネスのジャンルにおける一般システムという訳だ。更に、経済学や心理学にも一般システムがあり、これら全体に通じる真の一般システムがあると考える。事例から領域の知見を見付け出すだけでなく、更にジャンルの一般システム、全体に通じる一般システムと上位に考えを進めることが一般システム思考となる。
 
『一般システム思考入門』(ジェラルド・M・ワインバーグ/紀伊國屋書店/1979年)の中で、ワインバーグは一般システムの例を次のような格言として提示する。

【法則保存の法則】
ある事象が法則と矛盾する場合、その事実を拒絶するか定義を変更せよ。決して法則を放棄するな。

【合成の法則】
全体は部分の単なる寄せ集め以上のものである。

【分解の法則】
部分は全体の断片以上のものである。

【まとめの法則】
なにかを学びたいなら、すべてを学ぼうとしてはならない。

 
いかがだろう。どんなことを考えるにも応用できる、便利な一般法則のように見えてこないだろうか。これらの極めて適用範囲の広い一般システムを使って考えることで、我々が日々接する非常に複雑なシステムが理解し易くなるのだ。
 


支持者分散の法則? 費用対効果の法則?


さて、上で挙げたワインバーグによる一般システムはやや抽象的なので、ここでは佐々木自身が考えた「一般システムもどき」を紹介しよう。
 

【支持者分散の法則】
支持者の集団が分散すれば、被支持者の行動は自由になる。
しかしそのぶん、被支持者の悩みが深くなる。

この法則は、経営学で言う「経営者支配」から連想した。株式会社において、絶大な大株主(支持者)がいなくなると、経営者(被支持者)に対して力を及ぼす主体がなくなるため、経営者は自由に経営を行なえるようになる。しかしその一方で、フリーハンドとなった経営者は何をしていいか自分自身で決める必要があり、悩みが深まる訳だ。
 
現在では、これは商品と消費者の関係にも当てはまるだろう。消費者の好みが分散したことで、企業はどんな商品をつくればいいのかわからなくなっている。そして、今まさに行なわれている選挙にも近い構図を読み取ることができる。各政党の支持母体の力が弱まり、それによって政治がどちらを向いていいかわからなくなっているという見立てだ。「自由になる」、「悩みが深くなる」は言い過ぎかも知れないが、支持者の分散によって被支持者との関係が変わってくるのは確かなように思う。この法則が当てはまる構図は、注意してみると他にもたくさん見付けられる。
 

【費用対効果の法則】
人は、費用を使ったら、それに見合った効果が欲しい。
効果を感じさせられなかったら、「次」はないと思え。

これは、マーケティングの発想とでも言おうか。商品の売買を、消費者がそこから感じる効果に注目して考えている。組織で人を動かしたいなら、それに合う見返りを与えるのは当然。見返りがはっきりしなければ、その動きは長続きしないだろう。企業行動の効率をあらわす生産性もこのフレームワークで捉えられる。費用を「広告を見る時間」、効果を「無料のウェブサービス」と考えれば、インターネットの経済性だって説明可能だ。
 
一般システムとは、要はこのように考えることだと思っている。多くの事柄に共通しそうな法則を自分なりに見付け出し、それを他に適用して考える。共通するフレームワークを意識することで、新しい事例、領域、ジャンルの理解がより容易になり、より深まるようになる。
 


行き詰まったら、一般システムを思い出せ!


一般システム思考のようなアプローチは、多かれ少なかれ誰もが日常的に行なっているだろう。しかし、一般システムを積極的に意識することでこの行動の効果はより大きくなる。実は、先に示した2つの法則は、今しがた考え出したもの。普段から漠然と考えていたことで、いろいろなことに適用できるとは思っていたが、文章にすることで具体性が増した。意識的に一般システムを考えることの効果は大きい。
 
何らかの事例や領域で思考に行き詰まったとき、一般システムが役に立つ。そういうときは、近視眼になっている場合が多いからだ。狭い範囲でモノを考えていると、一般法則に反したような考えをすることも多い。これを、一般システムで見直して、原理原則に立ち返ると新たなアイデアが生まれてきたりする。何にもの人を協力させているのに【合成の法則】が発揮できてないとか、協力がなかなか集まらないのは【費用対効果の法則】が実現できてないからだとか。近視眼になっていると見落としがちなものが見えてくる。
 
一般システム思考の発想には、向き不向きがあるだろう。ワインバーグ曰く、9対2だそうだ。そして、一般システムに向く人でも、その程度には強弱がある。万人にオススメする思考法ではないとしても、一般システムの発想は悪くない。一度試してみることをオススメしたい。

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