ガレージ伝説は嘘? オープンな時代の物語作法


この記事の所要時間: 310秒 〜 410秒程度(1797文字)


Appleの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアックが、またまた人騒がせな発言をしたようだ。ウォズ曰く、「Appleはガレージで創業していない」。完成した製品はジョブズ家のガレージから出荷したものの、そこで設計や開発までは行なっていないというのだ。Apple成功物語の重要な要素であるガレージでの創業伝説をあっけらかんと否定したことになる。あくまで「嘘」ではなく「誇張」とのことだが、ガレージでの創業にロマンを感じていた人には(?)ちょっとショックな告白だろう。
 
参考:「Appleはガレージで創業していない」「ジョブズはApple IIで変わった」など、Appleの真実をウォズニアック氏が語る|GIGAZINE
 
さて、この話題で改めて考えたのは、過剰な物語のはかなさだ。商品の品質だけでは競争が難しい今の時代、巷には、その開発経緯や利用シーンについての物語が溢れている。そして、商品の魅力を少しでも伝えるため、物語は日々過剰になっている。良く言って「出来過ぎ」、遠慮なく言えば「怪しい」物語も数多い。そんなギリギリの伝説では、いつ足元を救われても不思議がなく、ギャンブルをしてるようなものだ。マーケティングに物語を使うのなら、今が何でもすぐにバレるオープンな時代であることを踏まえて、脇を固めた物語作法が必要になる。
 

apple garage

credit: clambert via FindCC

 


物語への依存が高い商品は・・・


今回のウォズ発言で、Appleが悪い影響を受けることはないだろう。何せ古い話だし、もう一人の主人公であるスティーブ・ジョブズは既に亡くなっている。Appleの現在の成功はガレージの時代から脈々とつながっているものだが、そこに嘘や誇張があったとわかってもそれで企業や商品の評価が変わるとは考え難い。
 
ところが、これが一般の企業の場合だと違ってくる。特に、つくっている商品は何の変哲もないのに、物語をエンジンにして成功しているような企業や商品だ。具体例は挙げ難いが、「パリの一流店で修行したパティシエが、ひとつひとつ丹精込めてつくっているケーキ」の類だろうか。誰がどうつくろうと、うまいものはうまい、まずいものはまずいのだが、その製造過程に付加価値を生み出すパターンは多い。こういう商品をアルバイトがつくっているのがバレたら、その影響は計り知れないだろう。物語への依存が高い商品は、かなりの危険をはらんでいる。物語に故意の嘘がなくても、ちょっとしたほころびで取り返しのつかないことに成り兼ねない。
 

pinocchio

credit: Gigi Ibrahim via FindCC

 


物語はオプション!


マーケティングで「物語」が重要視されるようになり、ストーリーを持った商品が多くなってきた。それらすべてに嘘があるとは言わないが、印象的な出来事の誇張や都合の悪いことの省略による「美化」や「演出」は付きもの。物語にはメリハリが必要なので多少の誇張や省略は仕方ないとしても、やり過ぎると「嘘」のレッテルを貼られてしまう。そうなれば、商売は一気に危機に陥ることになるだろう。
 
以前だったらそれらの「嘘」がバレることは少なかっただろうが、今は個人の発言がすぐに広まる時代。アルバイトや取引先の人が悪気なくつぶやいた一言が、たちまち物語をぶち壊しても不思議はない。何をきっかけに、「嘘」が露見するかわかったものではないのだ。物語づくりにあたっては、このことを強く意識する必要がなる。
 
商品を販売するとき、出来の良い物語の効果は絶大とは言え、あくまでそれはオプション。良い商品があって、その魅力を伝えるために物語があるのが本筋だ。最近は物語が中心にあるような商品も目に付くが、本末転倒も甚だしい。物語先行の商品は、ビジネスマンとしても、消費者としても注意した方がいいように思う。表面的なものを追い掛けても、得られるものは高が知れているのだ。

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