「技術力が高い」を活用したいなら・・・


この記事の所要時間: 340秒 〜 440秒程度(2075文字)


一口に「日本は技術力が高い」と言う。たとえその通りにせよ、何ともつかみようのない物言いだ。ぼんやりしていて、それをどのように役立てていいのかがわかり難い。では、「技術力が高い」とは一体どういうことなのか。「技術力が高い」をしっかり活用したいなら、この強みについてより具体的に考えることが必要になる。
 

技術

credit: geralt via FindCC

 


技術力の分布が違えば、活かし方が変わる

まず、話を簡単にするため、技術力がひとつの数値で表せると仮定する。技術力を持つ主体をどう考えるかは難しいが、ここでは企業単位で数値化できるとしよう。ビジネスでの活用を考えるには、国家単位や個人単位よりも企業を中心にした方がわかり易いという判断だ。このとき、「日本は技術力が高い」は、日本企業の技術力の平均値が外国企業のそれより高いことを意味する。
 
さて、問題は技術力の分布だ。
例えば、日本とA国の技術力の分布は次のどれになるだろうか。

分布の違い

【分布1】は、両国の分布の形は同じで、日本の技術力の方が「高い」にシフトしている状態。これなら、日本企業にしかできない技術が多くあることになり、かなり有利と言えよう。【分布2】では、日本は技術力の特に高い企業が少数ながらあることで平均値を上げている。それ以外では、日本とA国の分布はほぼ同じ。これでも有利には変わりないが、【分布1】よりもその恩恵の波及範囲は限られる筈だ。数限られた超・高技術企業と関連のある企業のみ、日本の技術力の高さを活用することができる。【分布3】は、日本とA国で技術力の最低と最高が同じで、分布の山の場所に違いがあるパターン。この分布では、他国に対して絶対的な有利は生み出し難い。技術力が比較的高い企業同士が協力することで、そこから生じる相乗効果に期待するくらいだろうか。
 
実際の分布がどうなるかはリサーチしてみないとわからないが、分布の違いによって状況が変わることは理解いただけるだろう。更に言えば、業種別や企業規模別に同様の分布をつくることで、技術力の高さの意味するところがよりはっきりする。同じ「日本は技術力が高い」状態でも、分布によってその意味は大きく異なるのだ。もちろん、その活かし方も変わってくる。分布を具体的に見ることが必要なのは、このためだ。
 


技術力の構成要素は?

技術力の構成要素をどのように考えるかも大切だ。例えば、新しい技術を生み出す「開発力」、一定のコストと時間で製品をつくる「製造力」、でき上がった製品に不良品が少ない「品質力」。まだまだいろいろな力があるだろうし、もっといい分け方もあるだろう。しかし、技術力を要素に分解しないとその力が測定できないのは間違いない。
 
技術力をいくつかの要素に分けた上で、日本は開発力、製造力、品質力などのうちどれが高いのか。そこまで具体的に考えていかないと、技術力の高さは活かせないだろう。
 


どんなデータを使うかに正解ナシ

そして、それぞれの力の測り方もポイントになる。日本の企業の「開発力が高い」として、それがどんなデータに裏付けされているかが問題なのだ。例えば、特許の出願数を基準にしたとして、それでいいのかを疑う必要がある。
 
ある力を測るのに、どんなデータを使ったらいいかに正解はない。最終的には、その数値を使うことでどれだけ多くの人を説得できるかに掛かっている。ところが、ここの部分をあまり気にしない人も多い。「開発力が高い」と言われると、それをそのまま鵜呑みにしてしまうのだ。それでは、「開発力が高い」が本当かどうかよくわからなくなってしまう。技術力を本気で役立てたいなら、この部分から見直すことは避けられない。
 


「技術力が高い」を具体的にイメージしよう!

日常的な会話の中で「日本は技術力が高い」と言われた場合、これまで書いてきたような細かなことを考える必要はない。自分が考える「技術力が高い」と同じかどうかを考えつつ、齟齬が少ないように話せばいいだけだ。
 
問題は、それなりに真剣なビジネスの話をしているときでも、かなり曖昧なニュアンスの「日本は技術力が高い」が登場すること。常識のように「日本の技術力は高い」と言っても、その定義も根拠もはっきりしない。日本の技術力は高いに決まっていると考えているような人たちだ。「技術力が高い」に具体性がなければ、話は夢物語で終わってしまう。
 
そして、かなり具体的に考えている人でも、分布には無頓着な場合が多い。平均の発想で考えていて、その分布までは考えていないのだ。日本の技術力の高さを活かすなら、その「高さ」をより具体的にイメージする必要がある。そのとき、ちょっと分布のことも考えてみてはいかがだろうか。きっと、役に立つ筈だ。

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