開業率に違和感アリ!


この記事の所要時間: 30秒 〜 40秒程度(1747文字)


企業関連の統計に、開業率、廃業率がある。その名の通り開業、廃業の動向をあらわすもので、算出式の大枠の考え方は次の通り。

 ●開業率 = 開業企業数 / 期首既存企業数

 ●廃業率 = 廃業企業数 / 期首既存企業数

 (参考:『中小企業白書(2014年版)』 付属統計資料

 
この開業率と廃業率。政府がまとめた日本再興戦略の中で、「開業率が廃業率を上回る状態にし、米国・英国レベルの開・廃業率 10%台(現状約5%)を目指す」とされたこともあって、一定の注目を集めているように思う。しかし、この開業率には最初に見た時から違和感があり、どうにも納得いかないものがある。そこで今回は、その違和感の正体を説明してみようと思う。
 

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credit: Hans via FindCC

 


廃業率は「構成比率」、開業率は・・・


これは、前々回の記事に掲載した「比率」の種類という1枚。

「比率」の種類

同じように見える比率にも、実はいろいろなタイプがあることを確認できるようになっている。タイプの違う比率を混同することによる不幸を、未然に防ぐためのものだ。
 
開業率と廃業率をこれに当てはめて考えてみると、廃業率はまさに「構成比率」となる。「全体」である期首に存在した企業を、(考え方として)「廃業した企業」と「廃業していない企業」の2つの部分にわけて、その一方を比率化している。一方で開業率はと言えば、これは「対立比率」となる。開業企業は期首既存企業の一部ではないので、「構成比率」にはならない。それなのに、算出式の構造が同じだからといって開業率と廃業率を一緒に扱うことが多いため、何とも違和感を感じる訳だ。
 
開業率と廃業率を並べることで、開業率まで「構成比率」に見えてしまう。このような誤解を与えるような比率づくりは、あまり好ましくないように思っている。
 


「その比率でいいのか」と疑おう!


さて、一番の問題は「開業率の分母として期首既存企業数が適当か」ということ。廃業率と並べることで自然に受け入れてしまうが、果たしてこの分母が好ましいのだろうか。
 
実際、今のままの算出式では、同じ開業企業数が続いても期首既存企業数が減れば開業率は上昇する。開業数が毎年20万社として、期首企業数が400万社なら開業率は5%だが、200万社なら10%ととなるのだ。でも、この5%と10%で開業の勢いが2倍になったとは言い難いだろう。つまり、開業率が開業の勢いを把握するためのものなら、今の算出式では後々おかしなことになってしまう。
 
開業の動向を把握したいなら、見るべきは開業の実数ではないだろうか。実数の方が開業の勢いを見る上では、はるかに現実的だ。それだけの開業があるのだから、無理にそれを何かで割る必要はない。
 
もしくは人口1万人あたりの開業数。開業は人間がすると考えれば、これは「構成比率」もしくは「発生比率」となり、意味がわかり易い。対象を20歳〜69歳とするなら、その人口は8,166万人(2013年10月1日現在推計の総人口)。人口1万人あたり1人で約8.2万社の開業となる。これならば属性別や地域別の開業率も簡単に求めることができ、目標も実効性が増すように思う。
 
もちろん、統計としての継続性や外国との比較の問題もあり、使用する比率を変えればいいというものではない。また、上で挙げたデータ例はあくまで思い付きレベルであり、実用に耐えられるかは別問題だ。とは言え、比率の意味をしっかり考えて、自分たちの実現したいことを考えるのに「その比率でいいのか」と疑うことは欠かせない。開業の動向を考えるときにどのようなデータをつくるのがいいのか。与えられたデータで考えるのではなく、自分の頭で考えてみることが大切だ。データ活用全般でも、細かなデータ分析のテクニックより、数値の意味付けの部分が重要になる。「その比率でいいのか」と疑うことが、有効なデータ活用の第一歩になると考えている。

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