難関校合格者には朝日小学生新聞読者が多い?


この記事の所要時間: 420秒 〜 520秒程度(2430文字)


先日、不思議な記事を見掛けた。日刊スポーツの難関私立中学の合格者は朝小の読者多いという記事だ。少し長いが、以下に引用する。

 難関私立中学の合格者には「朝日小学生新聞」(朝小)の読者の割合が高い-。

 そんな調査結果が10日、朝小を発行する朝日学生新聞社から公表された。

 今春の早稲田実業学校中等部(東京都国分寺市)で、聞き取り調査した合格者の36・8%(95人中35人)が朝小の現読者、またはかつての読者だった。慶応義塾中等部(東京都港区)では同41・1%(73人中30人)、東大寺学園中学校(奈良市)では同29・8%(161人中48人)だった。

 合格者からは「選挙記事などが分かりやすかった」「読む力、論理的に考える力がついた」などの声があったという。

 選挙の出口調査などに実績がある「ベルシステム24」に委託し、各中学の合格会場付近で聞き取り調査した。

 2014年の調査でも、灘中、女子学院中、筑波大付属駒場中で朝小読者の割合が4割を超えていた。

 
早稲田実業学校中等部、慶応義塾中等部、東大寺学園中学校の合格者は、3割〜4割が朝日小学生新聞(朝小)の現読者またはかつての読者だったとのこと。記事中には、「合格者からは「選挙記事などが分かりやすかった」「読む力、論理的に考える力がついた」などの声があったという」とあるので、直接的には書いていないものの「朝日小学生新聞は中学受験に効果がある」と言いたいのだろう。
 
さて、何が不思議かと言えば、記事で提示されているデータだ。果たして、この調査結果から「難関私立中学の合格者には「朝日小学生新聞」(朝小)の読者の割合が高い-。」と言えるだろうか。データを使った記事を読むと何となく納得してしまうが、よく考えるといささか疑わしい部分もある。
 

examination

credit: Xin Li 88 via FindCC

 


不合格者の朝日小学生新聞読者率は?


「割合が高い」には、「絶対的に高い」と「相対的に高い」がある。当然ながら、「絶対的に〜」は割合そのものが大きいこと、「相対的に〜」は割合が何かと比較して大きいことを示す。
 
「絶対的に〜」は100パーセントに極めて近い場合を除いてかなり主観的なものなので、新聞の記事で書くようなことではない。「3割〜4割」を高いとするかしないかは人それぞれ。署名記事で「自分は高いと感じた」、「読者の皆さんもそう思いませんか」と主張するならまだわかるが、今回のような調査結果を伝える記事には適さないものだ。
 
一方、「相対的に〜」の場合は、割合の比較対象が必要になる。そして、この記事はそれが見当たらないのが不思議なところだ。本来、比較すべきは不合格者の読者率となる筈。合格者の朝日小学生新聞読者率が不合格者に較べて高いなら、「中学受験に効果がある」というのも一理ある。しかし、不合格者の読者率がデータ化されていなければ、実状がはっきりしない。もしかすると不合格者の読者率も同程度かも知れないし、不合格者の方が読書率が高い可能性だって考えられる。つまり、合格者の朝日小学生新聞読書率だけがわかった状態では、「3割〜4割」が相対的に高いとは言えないのだ。
 
「絶対的に高い」は記事に適さず、「相対的に高い」は成立していない。不思議な記事としたのはそのためだ。読者が、「3割〜4割」を「絶対的に高い」と感じてくれることを期待したのか、不合格者の読書率の方が低いと無意識に思い込んでくれるのを期待したのか、それとも、そこまで考えてなかっただけか。その真相はわからないが、不思議な記事であるのは間違いないように思う。
 
実は、朝日学生新聞社が出した元のリリースでは、朝日小学生新聞の読書率は合格者の「その他の子ども新聞」の読書率と較べられている。比較しているだけマシとは言え、そもそもの小学生全体、受験者全体の読者率が朝日小学生新聞とその他のこども新聞で違う可能性もある。合否に影響するかはこのデータの見方でもわからない。
 


いいとこ取りの可能性も・・・


もう一つ疑いたくなるのが、「いいとこ取り」ではないかという点だ。すなわち、10校も20校も調査して、朝日小学生新聞の読書率が高かった学校だけ発表した可能性は否定できないだろう。今回の記事の場合、これは邪推だと思うが、データを見るときにはこういう視点も必要になる。
 
また、どのような質問文を使ったのかも気になるところ。「読者」の定義がはっきりしないため、数値の意味が取り難い。かなり低い頻度で読んでいる人も「読者」とすれば、読者率は水増しされることになる。質問文を工夫すれば、ある程度まで「絶対的に高い」を演出することは可能なのだ。
 


データにツッコミを入れる!?


データをうまく活用するためには、データにダマされない技術が必要になる。データを真に受けて使う前に、そのデータ自体を疑うことが求められるのだ。他人がつくったデータを何の疑いもなしに利用していたのでは、有効なデータ活用はできないだろう。素材である元々のデータの質が低ければ、それをいくら上図に加工しても間違った結論を導くのがオチ。データ活用では、データ自体に対する見極めが重要になる。
 
今回の朝日小学生新聞読者率への疑いは、実はあまり本気ではない。記者があまりデータに強くなく、おかしな感じになっただけだろう。しかし、おかしいと思うデータを見たときに、頭の体操がてらツッコミを入れてみることは良い訓練になる。データにダマされないためにも、データに対するツッコミをひとつ試してみてはいかがだろうか。

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.