上野東京ライン、直通運転は便利なのか?


この記事の所要時間: 240秒 〜 340秒程度(1574文字)


「上野東京ライン」が開業した。上野駅と東京駅を結ぶ線路を新設し、この線路を活用した直通運転路線を運行するもの。「上野東京ライン」が線路名なのか路線名なのかはわかり難いものの、そこはざっくり考えても問題ないだろう。東海道線と宇都宮線、高崎線、常磐線をつなぐことで、混雑緩和や所要時間短縮などを狙っている。
 

上野東京ライン

credit: Norisa1 via FindCC

 
宇都宮発伊東行き、熱海発高崎行きなど運行距離の長い電車ができたため、「乗り過ごしが怖い」、「行き先がわからない」などの声もあがっているが、もっとも心配なのは事故の影響範囲が広がること。直通運転をすれば、東海道線での事故の影響が、宇都宮線、高崎線、常磐線にまで及び兼ねないだろう。「小田原駅での人身事故の影響で、高崎線のダイヤが乱れています」では、何のことやらわからない。混雑緩和などの効果があったとしても、頻繁に電車に遅れが出てしまっては、本当に便利なのか疑わしくなってくる。
 


ダイヤの乱れが発生する確率が約4倍に?


試算してよう。ある路線で1日に事故が発生する確率を仮に5%として考える。このとき、ある1日に1つの路線が単独で平常通り運転する確率は、当然ながら95%となる。
 
ところが、直通運転をするとこれが変わってくる。直通運転をしているお互いの路線の事故が影響を及ぼすためだ。ある路線が正常運転するための条件は、直通運転する全線の正常運転となる。2線直通の場合、両路線が平常通り運転している確率は95% × 95%で約90%。上野東京ラインのように4線だと、すべての路線が正常運転する確率は約81%まで下がってしまう。ダイヤの乱れが発生する確率は、単独運転のときの5%が直通運転で19%になるので、約4倍だ。
 
もちろん、事故発生の確率は仮定にすぎないし、路線間の影響の程度は時と場合によるだろう。また、事故の影響が伝播しないような対策は講じていると考えられる。しかしそれでも、直通運転によって事故の影響が広がるのは間違いない。上野東京ラインの開通前と開通後で、ダイヤの乱れが発生している時間の長さを比較してみたいところだ。
 


乗客の心理に配慮を!


実際には、大きな投資をして新路線を開業したのだから、プラスの効果がマイナスの影響を上回るのだろう。ついつい自分自身がわかる細かなことに目が行きがちだが、事業の効果/影響は大所高所から見て判断する必要がある。
 
ただし、乗客の心理には配慮が必要だろう。「便利」にはすぐ慣れてしまい、「不便」はいちいち気になるもの。時間短縮などはすぐに「当たり前」になってしまい、一方、直通運転による遅れなどは経験するたびにマイナスを感じることになる。実際の効果/影響と、乗客が感じる効果/影響は必ずしも一致しないのだ。
 
鉄道は特殊な産業だ。ある場所からある場所に移動したいとき、気に入らないからといって別の路線に乗る訳にはいかない。このためか、鉄道会社の顧客への配慮はやや弱いように感じられる。そしてだからこそ、事故発生時の対応の基本方針を明確にしたり、上記のようなダイヤの乱れが発生した時間のデータを公開したりして、乗客の心理に配慮することが求められる。
 
社会のインフラとなる事業は、世の中全般の生産性に影響を与えるだろう。鉄道の遅れが直接的(時間のロス)、間接的(ストレス)に生産性に与える影響は、計り知れないように思う。ぜひ、鉄道会社にも顧客志向にもなってもらい、少しでも不満を感じ難いサービスを提供してもらいたいものだ。

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