言葉の「インフレーション」に要注意


この記事の所要時間: 30秒 〜 40秒程度(1749文字)


世の中には、いくつものジャンルで共通して起きる一般的な現象があるように思う。例えば、トレンドの行き過ぎ(とその揺り戻し)だったり、まだ不明確なものへの過剰な期待だったり、特定分野での成功の無理な応用だったり。人間心理の不合理な部分から生まれるものだろうが、どこかしこで起きる不思議な現象の共通項を考えるのはおもしろい。
 
さて、このような一般的な現象のひとつに「インフレーション」がある。そもそもは、モノの値段が上がりお金の価値が下がり続ける状態のことだが、「何かが増すことで、その価値が下がる」と一般化すれば、もろもろ当てはまる現象がある。以前、“相互評価のインフレーション”考という記事を書いたが、あれは互いに褒め合い過ぎればその褒め言葉の価値が下がってしまということ。これ以外にも、「インフレーション」と捉えることで理解が捗る現象は数多い。
 
最近、インターネットを見ていて気付くのは、記事の見出しなどで起きている言葉のインフレーションだ。もはや、ちょっと目を引くくらいの言葉遣いでは誰も振り向かないため、日に日に言葉がインフレを起こしている。見出しの言葉が信用できないものになり、何とも厄介な状態だ。
 

言葉

credit: narciso1 via pixabay

 


価値を下げていく言葉たち


例えば、よく見るのが、ライフハック系の「仕事の効率が○○%アップ」の類。何を根拠に○○%と言っているのかは知らないが、全部のライフハックに成功したら、仕事の効率はほぼ100%改善され、何もやることがなくなってしまいそうな勢いだ。こういう見出しが溢れることで、「効率」という言葉の価値は低下してしまっているように思う。
 
「お客を引き付ける10のポイント」なども、同じような感じだろうか。あまりにありふれていて、本来魅力的な筈の「お客を引き付けるポイント」が、極めて陳腐に見えてしまう。最近は、このような記事見出しを見ても、「また、やってる」程度にしか思わない人も多いだろう。
 
とは言え、人の口に戸は立てられない。「言葉のインフレーションをするな!」と言っても無駄だろう。言葉の価値が下がれば、結果的に「自分の首を絞めることになる」と忠告しても、これらの言葉を使っている人たちが止めるとは思えない。何とも忌々しい現象だが、現状を受け入れるしかないことになる。
 


インフレした言葉は使わないに限る!?


少し前までは、記事の見出しを付けるのはプロの編集者の仕事だった。それがインターネットの浸透で、誰もがコンテンツを提供できる時代になり、状況が変わっている。インターネット上では、(自分も含め)記事作成についての素人が見出しを付けるようになったのだ。こうなると、歯止めが掛からない。見出し作成の技術がないので、過激な言葉や言い回しにばかり頼るようになる。最初は、新聞記事の見出しに倣ったようなタイトルだったのが、徐々に週刊誌化し、最近では夕刊紙もびっくりという羊頭狗肉の見出しがあふれている。コンテンツは増えるばかりなので、更に言葉のインフレーションは進み、更に訳のわからない自体になるだろう。
 
これへの対抗策はといえば、インフレーションが進んでいると思う言葉を極力使わないことくらいしかない。記事見出しの勝負には負けるかも知れないが、今まさにインフレを起こしている言葉を使うのは、効果が小さく、センスが無いのを示すだけだ。自分を制御した言葉選びが効果的となる。
 
この対抗策を実行するためには言葉のブラックリストが必要になる。インターネットに溢れる数々の見出しを見て、「これいい」と思うと同時に「最近、インフレを起こしてないか」と疑い、怪しい言葉をコレクションするのだ。そうすれば、インフレーションを起こしている言葉に接するのも、ある意味で楽しくなるだろう。ブラックリストとして活用するという目的が加われば、モノの見方も違ってくる。案外効果があるアプローチだと思うのだが、いかがだろうか。

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