お客の不満は聞くな!? 脱八方美人のススメ


この記事の所要時間: 40秒 〜 50秒程度(2230文字)


日本でもおなじみの麦芽飲料・ネスレ ミロの原材料が変更され、「ひどい味になった」など不満の声が出ているという。これはニュージーランドでの話で、他の国について変更の有無や消費者の反応は不明だが、「さもありなん」と言えよう(参考:ミロの製法変更、NZで抗議続出 「ひどい味」「がっかりした」|AFPBB News)。長く親しまれている食品の場合、大幅な味の変更はなかなか難しい。新しい味への否定的な反応は、コカコーラやキリンラガーでもあったこと。味の変更は個人の嗜好に関わるものだけに、何を変えてもどこからかは不満が出るものだ。
 
今回の件で特徴的なのは、不買運動がFacebook上で行なわれていることだろう。普通ならくすぶる筈の消費者の不満が、6,000回以上の「いいね!」によって「見える化」してしまっている。不満の声がこういう形で集まったのはこれがはじめてではないだろうが、少し前までなら考えられなかった事態。不満が「見える化」していることで、メーカー側は更に慎重な対応が必要になるように思う。
 
とは言え、企業たるもの、お客の不満の声に従うだけではいけないのも確かだ。不満の声に適切に応じるためには、まず、現状把握のための調査をみずから行なう必要がある。
 

 


味の変更に誰がどのくらい反対している?


なぜ現状把握が必要かと言えば、Facebookに集まった意見には代表性がないからだ。味の変更に反対する人がたくさん集まっても、それはみずから手を上げた人の意見に過ぎない。不買運動にたとえ6,000回の「いいね!」が付いたとしても、「いいね!」をつけた人以外はすべて新しい味を気に入っているかも知れないのだ。味の変更への反対者をいくら集めたところで、消費者全体に占めるその意見の割合がわからなければ、不満の声にどのくらい従う必要があるのか判断つき兼ねる。
 
このため、何より大切なのは、不満の声がどのくらいの割合で出ているのか知ることだ。1%なのか、5%なのか、10%なのか、はたまた50%以上なのか。この割合がわからなければ、何をするにしても話が始まらない。肝となる数値なので厳密な設計の調査をするのが望ましいが、現実的には、抽籤プレゼント付きの購入者アンケートなどでもある程度の精度の数値が出るだろう。少なくとも、6,000回以上の「いいね!」よりは意味のあるデータとなる筈だ。この割合を見て、問題の深刻さを判断することになる。
 
このとき合わせて質問したいのが、不満を言っているのが誰なのかということ。性別、年齢、家族構成などの基本属性はもちろん、ヘビーユーザーなのかライトユザーなのか、ミロを飲むシチュエーションなどが重要になるだろう。不満の声を上げているのが、自社の考えるターゲットに近いかで、対応が変わるのは当然だ。
 

その他で知りたいのは、不満の質だろうか。これは、自由回答等でおさえればいい。不買になるほどの不満なのか、ちょっと文句が言いたいだけなのかを見極める必要がある。自由回答をいくら読んでも正解にはたどりつけないが、感覚的にでも不満の質を掴むことは大切となる。
 
また、味の好みは慣れの影響を受ける。最初は新しい味への違和感が先行してそれを否定的に捉えるが、実際にその味を嫌っているとは限らない。定期的な調査などを行ない、味への意見がどう変化するかをみることも大切になる。
 


顧客の声を活用するなら・・・


よく「顧客の声を聞きましょう!」と言うが、この「聞く」の意味に誤解が生じやすい。話を「取りあえず聞く」のか、「聞き入れる」のか。「顧客の声を聞く」=「顧客の言うことを聞く」=「顧客の意見に従う」というニュアンスでこの言葉を使用する人、解釈する人が案外多いのだ。
 
当然ながら、重要なのは「取りあえず聞く」の方。顧客がどのような意見を持っているのか知ることにある。意見に従うかどうかは、自分たちで後から考えればいい。そして、すべての顧客の声に従うことはできないのだから、どれを重視するかは取捨選択となる。当然、従うべきは自社がターゲットとする顧客の意見だ。
 
高級店の商品に「高い」と文句を言うお客がいたとき、その人はきっとその店のターゲット顧客ではないということだ。お店に商品の価格を下げる必要はなく、「気に入らないなら他の店をお使いください」と言えばいい。もちろん、充分配慮した伝え方をしないと余計ないさかいとなるので表現には注意が必要だが、要はそういうことだ。神様なのは、一部のお客。八方美人でいては芯がなくなり、誰にも合わない製品やサービスになってしまう。顧客の声に応えるときは、脱八方美人が大切なのだ。
 
顧客の声は重要だ。しかし、そこには2つの前提がある。

 ●顧客の声をみずからしっかり集める。
 ●誰の声に従い、誰の声に従わないかかを決める。

これらを抜きにして、ネットに書き込まれた顧客の声などに振り回されると、碌なことにならない。顧客の声を活用するなら、この2点をよくわきまえることが必要になる。

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