ビジネス書が(あまり)役立たない理由


この記事の所要時間: 350秒 〜 450秒程度(2150文字)

●A社は「○○○」をして成功しました。
●B社は「○○○」をして成功しました。
 ↓
●あなたの会社も「○○○」をすれば成功します。

これは、ビジネス書などでよく見掛ける論理の流れだ。要は、「成功者の真似をすれば成功します」という論法。「○○○」には、大なり小なりビジネスのやり方が入る。ハーバード流交渉術でも、Facebook活用でも、店頭の手書き立て黒板でも、何でもいい。当然のことながら、実際の本ではもう少しお化粧した書き方をしているが、突き詰めて行くと書いてあることはこのような論理の流れだったりするのだ。
 
「成功者の真似をすれば成功します」は一面の真理だが、無理がある論法なのも確か。同じ「○○○」をして成功できなかったC社やD社があるかも知れないし、成功の要因は「○○○」以外の他の何かだった可能性もあるからだ。この安易な論理の流れが、ビジネス書をあまり役立たないものにしているように思えてならない。
 

ビジネス

credit: geralt via pixabay

 


成功率は何パーセント?


上でも少し触れたように、A社とB社が「○○○」で成功したからといって、「○○○」をすれば成功するとは限らない。これは成功した会社を100社ならべようと、1000社並べようと同じこと。同じ「○○○」をして成功できなかったC社やD社があるかも知れないからだ。
 
本来、重要なのは成功率となる。「○○○」で成功した会社が100社あっても、失敗した会社も100社あれば成功率は50%。ビジネス手法が評価されるためには、その手法による成功率が高く無くてはならない。しかし、成功例をどれだけ並べようと、そのビジネス手法の成功率が高いことは主張できない。
 
真摯にデータを提示するなら、「○○○」を実施した会社と実施しない会社で成功率を較べることが必要だ。例えば、

 ●「○○○」を実施した会社の成功率 85%
 ●「○○○」を実施しない会社の成功率 35%

となれば、一定の説得力を持つだろう。しかし、ビジネス書でここまでやっているものは少なく、またやっていても「当社調べ」に近いパターンでどこまで信用できるかはっきりしない場合が多い。この点をクリアしていなければ、「成功者の真似をすれば成功します」の主張自体が怪しいことになるのに、その部分の詰めが甘いことになる。
 
そして、もう一つ問題なのが成功要因が特定できないことだ。例えば、3Dプリンターを導入した企業が3Dプリンター導入しなかった企業に比べて成功率が高かったとして、それが3Dプリンターに起因しているかははっきりしない。3Dプリンターを導入するくらい、「資金面に余裕がある」、「新技術を理解できる人材がいる」、「経営陣が積極的」なことが成功の理由かもしれないのだ。もし真の成功要因が「資金面に余裕がある」だったら、あまり好調でない企業が無理して3Dプリンターを導入してもトンチンカンなことになってしまう。
 


「必ず成功」はあり得ない!


厳密な調査で「○○○」が成功に対して効果があるとわかった場合でも、今度はその提示の仕方が問題になる。普通に考えれば「○○○」をすることで成功率が上がるとしても、100%になるということはないだろう。感覚的な物言いになるが、成功率はいいとこ40〜50%、10%〜20%でもかなり有望なビジネス手法と言えそうだ。いくら効果のあるビジネス手法でも、「必ず成功」はあり得ない。
 
しかし、安易なビジネス書などでは「必ず成功」がデフォルトになっている。読者の側としても「成功率が20%まで上昇します」では読む気が起きないだろうから仕方ないのだが、ビジネス書が誤解される理由になっているのも間違いない。約束されない成功を、さも約束されているように見せるのはかなり罪深いように思う。
 
また、ビジネス書がはやると優位性がなくなるという問題もある。要は、横並びになってしまうのだ。今なら各自治体がつくっているゆるキャラなどを思い浮かべていただけるとわかり易いだろう。成功を導くビジネス手法だからと言って、多くの企業(この場合は自治体)が真似をしたら普通になってしまう。普通のことさえしないよりはマシかも知れないが、そこまでの効果は期待できない。
 


過大な期待は禁物!?


とは言え、ビジネス書も捨てたものではない。それは、「型無し」よりはマシだと考えられるからだ。何らかの目的を達成しようとするとき、まったくの我流でやるよりは、ビジネス書の型を真似た方が成功する確率は高いだろう。要は比較対象の問題。ビジネス書が掲げるような「必ず成功」はなくても、無手勝流よりは成功しそうだ。
 
ビジネス書はある程度は役に立つ。しかし、事前に過大な期待を抱かせるため、結果が相対的にショボく見えるのだ。その意味で、ビジネス書は(あまり)役立たない。いずれにせよ、安易な論理を鵜呑みにしないことが大切だ。

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.