Appleが「楽曲の所有」を葬り去る?


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Appleが提供するメディアプレーヤー・iTunesが新しくなった。最新のiTunes 12.2はバージョン番号ではマイナーアップデートとなるものの、Apple Musicに対応するという大展開。アイコンの色も、赤のベタ塗りに白音符から白地に赤、青、紫の『あまちゃん』風の配色に変わり、大きな変化が起きたことを知らせている。
 

 
iTunesのアイコンは時代とともに変わってきており、過去にはメッセージ性がうかがえる変更もあった。アイコンの色については単色が長く続いていて、複数の色が混ざるのは2001年の最初のバージョン以来(参考:iTunesアイコンデザインの歴史 2001-2014 【歴代まとめ】 iTunes icon design|GINAZINE)。この配色に意味を取るなら、iTunesのカラフルな新アイコンはAppleの原点回帰の姿勢のあらわれかも知れない。
 

音楽

credit: iTenz via pixabay

 


その時CDが消えた!


iTunesのアイコン変更で驚かされたのが、CDが消えたとき。バージョン9から10に変わったタイミングで、2010年頃のことらしい。「その時歴史が動いた」ならぬ「その時CDが消えた!」。CDが徐々に衰退するであろうことは当時から自明だったものの、強烈なメッセージを感じたものだ。
 
このアイコンの変更は、CDで音楽を聞く人が減ってきている、AppleとしてはこれからもCDを減らす方向で行動するというメッセージと捉えていいだろう。アップルは、社名をアップルコンピュータからアップルに変えたり、コンテンツ配信サービスの名称をiTunes Music StoreからiTunes Storeに変えたり、メッセージ性のある名称変更が多い。アイコンの変更をこれに類すると考えれば、そこにメッセージを読み取ることはむしろ自然。そして、今回のアイコン変更はCDが消えたとき以来の大幅なものだ。新アイコンに意味を取りたくなるのは当然だろう。
 


「楽曲の所有」は必要ない!?


Appleは何かを葬るのが大好きだ。現存するモノのベネフィット(便益、恩恵)を見極め、それを新しい製品やサービスで代替することで大変革を起こす。結果として、それまでのモノは葬り去られてしまう訳だ。パソコンに必要なのはフロッピーディスクではなくデータをやりとりすること、音楽プレーヤーに必要なのはCDではなく音楽を聞けること、スマートフォンに必要なのはキーボードではなく文字を入力できること。後から考えれば極めて当たり前のことだが、現状を起点にするとなかなか見えない気づき。これを新製品の提供で成し遂げてきたのがAppleのやり方のように思う。
 
今回、Appleが出してきている新製品はApple Music。細かな特徴を無視すれば、要は音楽のストリーミングサービスだ。1か月980円の利用料を払うことで、Apple Musicに登録されている音楽が聴き放題になる。つまり、次に聴く曲を選ぶとき、自分がその曲を「所有しているか」が壁にならなくなる訳だ。
 
音楽を聴くという行為を突き詰めて考えていけば、それは音楽そのものを楽しむことに収斂されるだろう。「楽曲」という単位で持っている/持ってないが生じるのは、販売のための都合に過ぎない。音楽そのものを楽しむためには、「楽曲の所有」は必要ない概念かも知れないのだ。
 
iTunesは、音楽産業より音楽のユーザーに軸足を置いた商品だ。これまでも音楽業界の慣習を次々と打ち破り、今では以前より音楽が自由に楽しめるようになった。そして、「楽曲の所有」はこれまでの音楽産業の核となる部分。今度はストリーミングによりこれを葬り去ろうとしているように見える。この見立てが正しいかはわからないが、今回のアイコン変更を見て「Appleの本気」を感じた次第だ。

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