「誰もやめようと言わない作業」を見直そう!


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1901文字)


アビリーンのパラドックスをご存知だろうか。その由来は、ジョージ・ワシントン大学のジェリー・ハーヴェイ教授が、7月の暑い最中にエアコンのついてない車で旅行したときの話だ。妻と両親と一緒にテキサスのアビリーンという田舎町を目指したのだが、実は誰もアビリーンに行きたいとは思っていなかったことが後からわかったという。出発前には全員がこの旅行に賛成していた筈なのに、本当は誰も望んでいなかったのだ。アビリーンのパラドックスとは、このように「誰もやめようと言わないため、誰も望まないことをしてしまう現象」のことをいう(参考:『ヤバい経営学』フリーク・ヴァーミューレン/東洋経済新報社/2013年)。
 

アビリーン

credit: skeeze via pixabay

 
誰もやめようと言わなければ、反対だと思っている人がいることに誰も気付かない。その結果、みんな「他の人はこの案を気に入っている」と思って、更に声を出しにくくなる。各人の気遣いにより、誰も望まないことをしてしまうところがパラドキシカルな訳だ。他人の顔色をうかがうという意味では、アメリカよりも日本で起こりやすいパラドックスのようにも思われる。
 
さて、このアビリーンのパラドックスはどこかしこに存在している。もちろん、ビジネスの現場も例外ではない。「誰もやめようと言わない作業」を見直すことは、企業の活力を保つためにかなり役に立つと考えている。
 


奇妙な新商品たち、形骸化している会議、・・・


「誰かやめようと言わなかったのかよ!」というツッコミがよく見られるのが、多くの企業から発売される奇妙な新商品たちだ。差し障りがあるので具体的な商品名は書かないが、見当はずれな新機能が加わった家電などには、思わず「おいっ!」と言いたくなるような商品がいっぱいある。商品を広く捉えれば、テレビドラマや映画などでも「途中で後戻りできなくなったのか!」と同情したくなるような作品が目白押しだ。余程の近視眼に陥ってない限りそれぞれの担当者はうすうす感づいているだろうが、誰も止められない。まさにアビリーンのパラドックス状態になってしまったのだろう。
 
企業の中では、誰もが望まない会議などというものもある。定例で行なっている会議で、そもそもの目的を失っているパターンだ。たくさんの人を集めて会議をしているのに、成果はほんの少し。このままの形態で会議を続けても非効率とわかっていながら、誰も「やめよう」、「人数を減らそう」などと言い出せない。会議を主催する人が自分の力を見せつけるため(?)に開いているのかといえば、当の本人はその会議を億劫がっていたりする。まさに「誰もやめようと言わない」ためンのパラドックスの一例といえよう。
 


会議や作業を棚卸す!


さて、アビリーンのパラドックスは回避が難しい。何せもともとが、反対を言い出し難いために起こっている現象なので発覚しにくいのだ。アビリーンのパラドックスを知っていて、その状態になっているとわかっていても、なかなか言い出せない。
 
それでも、アビリーンのパラドックスを見直すきっかけをつくることは可能だろう。例えば、上で挙げた新商品の場合なら、発売までの流れの中にチェックポイントを設けることだ。新商品に関わりの少ない人や外部の人によるチェックを仕掛ければ、「誰も言わない」状態からは抜け出せる可能性がある。根回し等が効かない人たちによる評価は、アビリーンのパラドックスに対して一定の効果がある筈だ。
 
会議の例で言えば、棚卸しが有効になるだろう。部署単位なり、個人単位なりで、一定期間に行なっている会議をすべて書き出し、「本音ベース」で端から必要な会議か否かを判定していく。もちろん、「本音ベース」と言っただけで気遣いがまったくなくなるとは考えにくいが、作業の目的自体を不要な会議の洗い出しとすれば、ある程度の効果は期待できる。その上で、誰も望んでいない会議を減らしていけばいい訳だ。もちろん、この棚卸しは会議だけでなく、他の日常業務にも応用できる。
 
そして、このような見直し作業に適しているのが、まさに今の時期(少し遅い?)。お盆やお正月のような通常と業務のパターンが違うときは、このような見直しを行なう絶好のチャンスだ。ぜひ、これを機に、アビリーンのパラドックスの洗い出しにトライしてみてはいかがだろうか。

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