「システム入ってません」がビジネスになる!?


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先日、GM車がハッキングされたと思ったら、今度はライフル銃に脆弱性が発見されたそうだ(参考:Linux搭載のライフル銃がWi-Fiハッキングで乗っ取られる脆弱性が発覚|GIGAZINE)。標的を狙うスコープにコンピューターを内蔵したところ、その標的が別のものに置き換えられる可能性があるという。スマートウォッチに対するハッキングもあり得ると言われており、次に何が狙われるかわかったものではない。
 
プログラムによって制御されている製品では、そのシステムすべてがハッキングの危険に晒されている。現時点では、善意の人が警告としてハッキングしたり、脆弱性を指摘したりしているので大きな問題はないものの、これが悪意の人に先んじられたら大変なことになるだろう(もしかすると、既に気付かないところでハッキングされているかも知れないが)。価値あるシステムは狙われて当然だし、人間に完璧なものがつくれない限り、すべてのシステムはハッキングされる宿命にある。
 
今の段階で、パソコン、スマートフォンはもとより、自動車やライフル銃にハッキングの危険がある。近い将来、その危険は更に広がり、身の回りの家電、建物や部屋のロック、医療機器などにも及ぶだろう。自分の目には、システムに囲まれた世界はかなりリスキーに映る。いつどこに火がついても、何ら不思議はない。
 

ハッカー

credit: kboyd via pixabay

 


その製品にシステムは本当に必要ですか?


ハックされる危険については、「当社製品のシステムは最新のセキュリティ技術を採用しており、・・・」などの説明をされることが多いが、論点がずれているように思えてならない。繰り返しになるが、人間に完璧なものがつくれない限り、すべてのシステムはハッキングされると考える方が自然だからだ。狙われないのは、完全に閉じたシステムか、まったく価値の無いシステムくらい。その他のシステムは、いくらセキュリティ対策を施そうと、ハッキングされる可能性を残す。充分なセキュリ対策を施すことは当然だとしても、それはハックされる危険に対してあまりに無力だ。もちろん、それで「システムが入っている製品はすべて危険なので、使わない方がいい」という結論にはならないものの、常に一定の危険を認識する必要があるだろう。
 
これよりも重要な論点は、ハックされたときにどうするか/どうなるかの方だと思う。簡単に言えば、主系統がハッキングされたら、副系統が自動的に動作するような発想だ。画に描いた餅に成り兼ねない100%ハッキングされないシステムを目指すよりも、ハッキングされたときの対応を考える方が現実的だと考えられる。「できない」ことを「できる」と言い張るのではなく、「できない」ことを認めた上で策を講じるのだ。ハッキングの危険を認めることはユーザー心理を考えるとなかなか難しいが、一般的なシステムでも徐々にこのような対応が求められるようになると思われる。
 
そして、それよりも大切だと思うのが、「その製品にシステムは本当に必要か」という論点だ。厳密に言えば、「ネットワークに繋がっているシステム」ということになるのかも知れない。システムによって自動車運転の安全性が向上したとして、それはハッキングされて車が急発進するリスクと見合うものなのだろうか。「その製品にシステムは本当に必要か」という疑問は、今後更に大切になるように思っている。
 


「システム入ってません」がビジネスになる!?


一般的に、技術者は高い技術力を使った製品が大好きだ。ユーザーが望むかどうかなど関係なしに、少しでも技術的に優れた製品をつくりたがる。当然、企業内でその主張が通るかどうかは個別の企業次第となるが、無駄に技術力の高い製品が発売されるのはこの嗜好に沿ったものだと考えられる。そして、この嗜好により、今後、本当は必要のないシステムが搭載された製品が多数登場するだろう。
 
必要のないシステムが搭載された製品を発売するのは自由だし、その製品がヒットするならそれはそれでいいことだ。「こういう製品が売れる」という仮説が社会から実証されたのだから素晴らしい。これにとやかく苦情を言うつもりはない。
 
ただ、怖いのはあるジャンルの製品すべてにシステムが組み込まれるようになること。システムの入っていることが業界等の常識になってしまい、システム不在の製品を選べなくなる可能性はある。こうなったら、「この製品にシステムはいらない」、「ハッキングの危険を考えると、システムが入った製品は使いたくないな」と思っても、システムの入った製品を使わざる得なくなる。自動車などでこのような事態になったら、案外恐ろしいことではないだろうか。
 
そして、視点を変えれば、こういう状態になったときは、この製品は「システム入ってません」がビジネスになる可能性があるということだ。それを望む人の規模にもよるが、少数の人が欲しがる製品を販売する環境は整いつつあり、商売として成立しても不思議はないように思う。少しでも先を目指して最新のシステムを組み込む製品が増える中、これに逆行する製品がヒットしたら、それはそれでおもしろい。何にでもシステムが組み込まれることは歓迎しないが、そこにビジネスチャンスが生まれるのなら、案外悪くないのかも知れない。

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