年賀はがきのお年玉を10万円にしても・・・


この記事の所要時間: 30秒 〜 40秒程度(1780文字)


年賀はがきの「お年玉」が大きく変わるらしい。1等賞品は過去最高の現金10万円「年賀状離れを食い止める狙い」だという(参考:年賀はがき10月29日発売 お年玉くじ過去最高10万円|共同通信)。
 
さて、お客を現金で釣るようなこの企画。
魅力的に見えなくもないが、注力するポイントを間違えているように思えてならない。年賀はがきの1等商品を10万円にしても、あまり勝算はないだろう。
 

年賀状

Photo credit: norio_nomura / Foter / CC BY-SA

 


「お年玉」を現金1万円にしたときは・・・


実は、年賀はがきの「お年玉」については一度ブログを書いている。約2年前、1等商品が現金1万円になったときのことだ。その記事の結論は、「お年玉」が現金1万円になったからといって、年賀状を増やす人はいない(参考:お年玉を現金にしても年賀状が増えない理由)。まずは、この部分をデータで確認してみることにする。
 

「年賀」の総取扱物数

これは、ここ数年の年賀はがきの推移をグラフにしたものだ。プレスリリースされている年賀はがきの発行枚数は「そのうち、実際にどのくらい売れたかがわからない」という難点があるため、日本郵便の財務情報から「年賀」の「総取扱物数」を引っ張ってきた。データを取得できる期間が4年しかない上、年賀状取り扱い期間に限ったデータであり、更に年賀はがき以外を使用した年賀状も含まれているようだが、発行枚数よりは実際に出されている年賀はがきの枚数に近いと判断した。
 
データを見れば、「年賀」の総取扱物数の減少傾向は明らかで、短期間のことながらその減少幅は年々大きくなっている。1等賞品を現金1万円にした2014年分の「年賀」も3.1%の減少。このデータを見る限り、賞品を現金にした効果はあまりなかったようだ。
 
1万円で効果がなかったからこそ、10万円にして更に刺激を強めたのかも知れないが、同様の結果を招くのは目に見えている。賞品が1万円でも10万円でも、それを理由に年賀状の枚数を増やす人は少ないと考えられるからだ。
 


「おまけ」ではなく「年賀状ならでは」を!


製品の3つのレベル

さて、これは製品の3つのレベルを示す概念図。『マーケティング原理』(第9版/フィリップ・コトラー、ゲイリー・アームストロング/ダイヤモンド社/2003年)に出てくるものだ。製品には、核となるベネフィットがあり、形態があり、付随機能があると考える。このモデルが正しいとは限らないし、あまり引用されることもないようだが、製品について頭を整理するとき役に立つので気に入っている。
 
年賀はがきの取り扱いが減っている原因は、たぶん「製品の核」である中核ベネフィットが他のものに置き換わっていること。年賀はがきが提供するベネフィットが年始の挨拶であれ、社会人としての礼儀の表出であれ、連絡頻度の低い人への近況報告であれ、インターネット等の普及で代替手段が増えているためだ。
 
この状況下で、「製品の付随機能」もしくはその外側にあると考えられる「おまけ」を豪華にしているのが今回の企画となる。おまけ商法に成功例は多いが、年賀はがきの場合、当選確率が極端に低い上に、現金自体にはグッズのような希少性がない。更に、おまけをもらえるのが自分ではないのだから、うまく機能しにくいだろう。「おまけ」に、「製品の核」であるベネフィットの劣化を補うほどの魅力がないのは間違いない。
 
中核となるベネフィットの威力が弱まっているため、「おまけ」の強化に走ったのだろうが、その効果は期待できない。ベネフィットが他のものに奪われたとき、見直すべきは「製品の形態」だ。簡単に言えば、メールやSNSなどの代替手段では実現できない、年賀状ならではの良さを見付け出して、それを実現、周知することとなる。もちろん、この対策は言うは易く行なうは難しなのだが、「おまけ」を強化するよりも正しい注力ポイントなのは確かだろう。来年以降、ベネフィットがより魅力的になる新しい「製品の形態」の提案を期待したいものだ。

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