太ったおばさんが歌い出すまでは・・・


この記事の所要時間: 230秒 〜 330秒程度(1491文字)


ニューヨーク・ヤンキースの伝説的な選手、ヨギ・ベラが亡くなった。とは書いたものの、ヨギの選手時代はもとより監督時代さえよく知らない。知っているのはそのユニークな名言の数々だ。
 
中でも印象に残っているのは、ナシーム・ニコラス・タレブの『まぐれ』(ダイヤモンド社/2008年)で紹介されたこの言葉。

太ったおばさんが歌い出すまでは終わりじゃねえよ

「野球は九回ツーアウトから」や「勝負は下駄を履くまでわからない」と同じことだが、「太ったおばさん」のインパクトが強烈で記憶に残りやすい。
けだし名言であると思う。
 

ヤンキースタジアム

credit: krisr1 via pixabay

 


成功しているからといって、正しいとは限らない!


「太ったおばさんが歌い出すまでは・・・」の意味は、最後まで何があるかわからないので終わるまで諦めるなといったところだろう。九回裏を迎えた時点で1点差で負けていれば逆転確率が40%、2点差なら25%、・・・、10点差以上なら0.01%。ここに書いた確率の数値は適当なものだが、こういうデータはつくれる筈。そして、ゲームが終わってない限り、いくら点差があっても逆転確率はゼロにならない。終わり方がルールで決っているゲームにおいては、その低い逆転確率にかけて全力をつくすこともひとつのやり方だ。
 
ただし、これを終わり方が決まってない投資の世界で考えると、ニュアンスが違ってくる。太ったおばさんから導き出されるのは、「今のやり方で成功しているからといって、そのやり方が正しいとは限らない」ということ。例えば、バブル的な値上がりをしている株式に投資して巨額の(含み)資産を持つ人は成功しているように見えるが、それが長期的に続くとは限らない。太ったおばさんが歌い出すまでに高値で売り抜けてリタイアでもしなければ、結果は確定しない訳だ。バブルな株への投資はハイリスクハイリターンであり、短期的に見るから「ハイリターン」の部分が目立つだけ。成功者の行動は正しいように見えるが、一時のまぐれの可能性も高いのだ。
 
ビジネスにおいても同じことが言える。長期的な信用を失いつつ、短期的な利益を稼ぎ出しているような場合だ。ヒトやモノの質が追いつかない飲食店チェーンの出店拡大、メディアを使った人造的なブームなどがイメージしやすいだろうか。もちろん、それも商売のやり方のひとつだが、決算にあらわれない信用の失墜はボディーブローのように効いてくる。なかなかおばさんが歌い出さなければ、後で痛い目を見ることに成り兼ねないのだ。
 


太ったおばさんが近視眼を防止する!?


短期目標と長期目標の関係は難しい。長期的な成長のために直近の売上高は必要だが、それを達成するためにどんな方法を使ってもいい訳ではない。そんなことは誰もがわかっているのに、それでも目先のことを優先してよからぬ手法に手を出す人が出る。近視眼になって、目の前の誘惑に負けてしまう訳だ。
 
これを防ぐためのアドバイスは「近視眼に陥るな!」となるが、これは言うは易し行なうは難しの典型。その意味で言っても仕方がないのだが、自戒を込めてときどき思い出すといいのも確かだ。そして、そのときヨギ・ベラの名言が役に立つ。短期の目標を立てるとき、インパクトの強い太ったおばさんを思い出すと、少しでも近視眼が防止できるのではないだろうか。

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