「インク2年分」プリンタが革命を起こす?


この記事の所要時間: 330秒 〜 430秒程度(1985文字)


ペーパーレスが叫ばれていても、コンビニ等の出力サービスが充実してきても、なかなか手放せないのがプリンタ。そして、多くの人が抱える悩みの種がインク代の高さだ。プリンタのビジネスは、本体を安く販売して消耗品のインクで利益を得る「ジレットモデル」なので、こういうことになる。非純正品で比較的安価なインクはあるものの、大して安くもないのに多少の不安が付きまとう痛し痒しの選択。ジレットモデルもひとつのビジネスとはいえ、インクを買うたびに納得がいかない気持ちになる人は多いだろう。
 
そんな状況の中、先日、エプソンが新しいプリンタを発売した。「EW-M660FT」というモデルで、大容量のインクタンクを搭載しており、購入時に同梱されるインクだけで約1万1300ページ = 約2年分の印刷ができるという。インクを使いきっても、補充はカートリッジ交換でなく、追加ボトルから。カラー約0.8円/モノクロ約0.4円で印刷ができ、「圧倒的な低コストでプリントが可能」となっている(参考:エプソン、「インク2年分」同梱のプリンタ発売 大容量タンクモデルを国内投入|ITmedia)。
 
まさに、プリンタの悪しきジレットモデル(?)に対抗するかのようなこの商品。もしかすると、プリンタビジネスに革命を起こすかも知れない。
 

プリンタ

credit: Humusak via pixabay

 


初期費用 vs ランニングコスト


インクを高いと感じるなら、印刷のコストを少しでも抑えようとするのが道理。毎回毎回高いインク代を払いたくなければ、この「インク2年分」プリンタを選べばいい。
 
印刷にかかる総コストをざっくり図示すれば、以下のようになるだろう。

印刷枚数と総コストの関係(イメージ)

「インク2年分」プリンタは、線の出発点となる初期費用は高いけど、線の傾きで示されるランニングコストが小さいので、総合的には低コストになるという主張だ。この図で示される2線の違いこそが、ジレットモデルの核心と言ってもいい。
 
これをユーザーとして見るなら、自分が新しいプリンタでアウトプットするであろう印刷枚数を想定して、2種類のプリンタの総コストを較べればいい。自分の想定枚数で「インク2年分」プリンタ線が「従来モデル」プリンタ線の下にくるようなら、この新しいタイプのプリンタを購入するのが合理的となる。下図では比較対象とする「従来モデル」プリンタの線をイメージで書いたが、これをしっかり具体化すれば現実的な比較が可能だ。
 
一人一人にどちらが向いているかはわからないものの、インク代が気になるほど印刷するなら「インク2年分」プリンタの方が得になりそうだ。購入したものに見合った適切な対価を払っているようで気分もいい。つまり、理屈で考えればプリンタは多くの人に受けそうなのだが、問題は人間はそこまで合理的ではないということ。実際には、初期費用の高さがネックになって、今まで通りインク代の高いプリンタを買い続ける人も多いように思う。直感で言えば、「インク2年分」プリンタは大ヒットに至らない可能性が高い。
 


選択肢が増えるのはいいことだ!


「インク2年分」プリンタに有利な情報があるとすれば、既にこのビジネスモデルの商品が海外で成功を収めていること(参考:家庭用プリンタのビジネスモデル転換に挑むエプソンの大容量インクモデル戦略とは?|GIGAZINE)。インドネシア市場からスタートして、世界140か国以上で発売中。昨年8月にはアメリカで発売しており、残すは日本市場のみだったのだ。この海外での健闘を考慮すれば、新たなビジネスモデルのプリンタが日本でも一定の広がりを見せるのは間違いないように思う。「革命」は起こせなくても、市場に「変化」をもたらすことは期待できる。
 
プリンタのジレットモデルは個人的に気に入らないが、それもまた商売のやり方。評価をするとしても、良い/悪いではなく、好き/嫌いを軸にするのが妥当と思っている。自分は好きではないが、それはあくまで好みの問題というわけだ。商売は、売りましょう、買いましょうの世界。好んで買う人がいるのなら、それを「けしからん」と言ってもはじまらない。好む人がいなければ自然と淘汰されるのだから、それでいい。
 
ただ、各社が横並びでジレットモデルを使っているのは「悪い」点だと考えている。そうなると、消費者に選択肢がなくなってしまい、これは「良い」状態ではないからだ。そしてだからこそ、そこに風穴を開ける「インク2年分」プリンタに期待したい。何にせよ、選択肢が増えるのはいいことだ。

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