加藤一二三の珍訳はなぜ起きた?


この記事の所要時間: 340秒 〜 440秒程度(2085文字)


先日、自動翻訳で「ポケモンGO」が「ポケモン行きます」になる事例の記事を書いたが、今度の被害者は将棋の加藤一二三九段だ。

※画像は日本将棋連盟ホームページをキャプチャー

※画像は日本将棋連盟ホームページをキャプチャー

新しくなった日本将棋連盟ホームページの棋士データベースの英訳がこれ。「一二三」が英訳されてしまい「Kato, one hundred twenty-three」になっている。誤訳と言うか、珍訳というか。自動翻訳が固有名詞の部分までもを対象としてしまい、残念な結果を招いているようだ。
 
なぜ、このようなことが起きたのか。自動翻訳の精度の問題といえばそれまでだが、実はこの珍訳を招いた最大の原因は意思決定にある。つまり、なぜこのような自動翻訳にゴーサインを出してしまったのかということ。今回は、これを考えてみたいと思う。あくまで、一般論として推測する。
 

credit: stevepb via pixabay

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コンピュータがやることだから間違いない!?


まず、ありがちなのは、コンピュータやソフトウェアに対する過信。「コンピュータがやることだから間違いない」という奴だ。さすがに、今どきコンピュータ=完璧を信じている人は少ないと思うが、何となくはコンピュタを信頼していて、大丈夫なのではと思ってしまう。これは、自動翻訳に限らず、意思決定の間違いでよくでてくるパターン。仕組みがよくわからないブラックボックスを提案され、雰囲気でそれをOKしてしまう。このパターンを防ぐのは難しく、ブラックボックスを見逃さず、先入観などを極力捨てて意思決定するしかない。
 
「ポケモン行きます」の記事にも書いた「ないよりマシ」という発想も珍訳の原因となる。これは価値観の問題で、「ないよりマシ」も一つの判断ではあるのだが、あまりオススメできない。間違いがあるのは覚悟していても、「Kato, one hundred twenty-three」までの珍訳は想定していないだろう。このクラスの珍訳をたくさん集めて、安易な自動翻訳採用に警鐘を鳴らしたいところだ。
 


困った挙句?話題づくり??


国際化、海外進出などの目標があり、困った挙句というのもあるだろう。目標が上から降ってきて、それに見合う予算はほとんどない。自動翻訳を付ければ、理屈の上では「世界中の人が読める」とアピールできるし、「まあ、いいか」となる。「なんちゃって国際化」とでも言おうか。上が実際に自動翻訳されたページを見れば真っ青になるのは間違いないが、そこまでチェックしないのがお約束。結果として誰も不幸になってないとはいえ、これではあまりにも滑稽だ。問題が顕出しないのでこの対策は難しいが、徐々にでもその組織の意思決定の有り様を改めるのが懸命だろう。
 
かなりうがった見方をすれば、話題づくりという解釈も成り立つ。冒頭の例で言えば、人気者の加藤一二三先生を「Kato, one hundred twenty-three」と訳せば、世間が放っておく訳がない(実は、自分が今回の案件を知ったのもとあるまとめページから)。ホームページのリニューアルに注目を集めるため、少ない予算で絶大な効果。炎上等の危険もあり、オススメできるギャンブルではないが、事実は小説より奇なり。世の中には、こんなパターンがあっても不思議はない。
 
当然、将棋連盟での真相はわからないが、一般的に考え得るのはこんなところだろうか。システムの問題のように見えて、「人間臭い部分」がトラブルの原因にある。いずれにせよ、これ以上の不幸な事態を招かないことを祈るばかりだ。
 


読ませたいのはどんな人?


自動翻訳に限らず、外国語で読めるサイトを見ていて思うのは、そのターゲットが曖昧なこと。インターネットは世界中からアクセス可能とはいえ、自社、自分のサイトに外国からたどり着くのはごく限られた人。そして、みずからメッセージを伝えたい人はその中でもほんの一握りのはずだ。本来、このターゲットに向けて、どんなベネフィット(便益、恩恵)を提供するかが最重要なのに、ここが弱い。この部分を決めた上で、必要と思われる情報を取捨選択して発信すればいいものを、「なるべく多くの人に」、「少しでも多くの情報を」となるのでおかしくなる。
 
外国語のページも、誰に、何を、何のために読んでもらうかを考えてつくることが大切だ。「誰かが読んでくれるかも知れないから」のようなぼんやりした考えでつくるなら、「ない方がマシ」。もし外国語ページを持っているなら、翻訳、システムという視点ではなく、ターゲット、ベネフィットの切り口で再検討してみたらいかがだろうか。

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