高齢者の事故は本当に増えている?


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ゴールデンウィーク中も相次いだ交通事故のニュース。最近、メディアでよく取り上げられている印象なのが高齢者による交通事故だ。検索してみると、今月に入ってからだけでもNHK(5月2日 高齢者ドライバーの事故 病院や銀行などでも相次ぐ)と朝日新聞(5月4日 高齢者の事故 誤操作が最多 急がれる社会の取り組み)がニュースにしている。
 
さて、ここで気になるのが、高齢者による事故は本当に増えているのかということ。連日の報道で高齢者の事故が増えたような印象を持ちやすいが、「今日も高齢者による事故が起きました」は事実であっても、統計にしてみないと事故が増えたか、減ったかはわからない。そこで今回は、実際に高齢者の事故は増えているのか、平成28年交通安全白書に当たってみた。データとしては、平成27年(2015年)のものだ。
 

credit: auntmasako via pixabay

 


高齢者は交通事故による死亡が多く、負傷は少ない


まず最初に見たのは、交通事故による死者数。

これについては、2015年のデータで高齢者(65歳以上)が2247人、高齢者以外(64歳以下)が1870人となり、高齢者のほうが交通事故死者数が多い。交通事故死者数は、高齢者も高齢者以外も減少傾向にあるが、高齢者のほうが減り方が鈍くなっており、2010年に人数が逆転した。ただし、人口10万人あたりで見ると、これも高齢者のほうが多いが、減少幅は同程度となる。高齢者が、高齢者以外と比べて交通事故で死亡しやすいのは確かだが、その頻度は減少傾向にあるし、死者数は増えていない。
 
次に、交通事故による負傷者数を見る。

これは、高齢者のほうが負傷者数そのものが圧倒的に少ない。10万人あたりの人数も高齢者が高齢者以外の半分程度となり、減少の速度は同程度だ。負傷者数に限れば、高齢者の事故が多い、増えているということは一切ないと言えるだろう。
 


高齢者による事故は増えてない!!


最後に、ポイントと思われる第1当事者の年齢層別死亡事故件数だ。第1当事者とは、「交通事故の当事者のうち、過失が最も重い者又は過失が同定の場合は被害が最も軽い者」のこと。誤解を恐れずざっくり言ってしまえば、「その事故で一番悪かった人」だ。高齢者事故に関するニュースは、「高齢者が第1当事者なので、運転は控えるべき」等の文脈が多いように思う。
 
データは以下の通り。

高齢者の第1当事者死亡事故件数は横ばいであるものの、高齢者のほうが高齢者以外より事故件数自体は少ない。10万人あたりでは高齢者のほうが多いものの、減少ペースはほぼ一緒となる。
 
ここまで見てきて一番のポイントと思われるのは、3つのデータとも、10万人あたりの人数(件数)の減少ペースは高齢者と高齢者以外でほぼ同じということ。

高齢者の絶対数が増えているので、人数(件数)では減り方が鈍かったり横ばいだったりするが、10万人あたりでは充分に減少している。つまり、人口構成の変化によって高齢者の事故が増えている(減り方が鈍い)ように見えているということだ。負傷者が高齢者以外の方が多いことをあわせると、要は「高齢者は交通事故で死亡しやすい」だけなのではないだろうか。少なくとも、高齢者の事故が増えているというデータは見つからない。
 


「高齢者による事故は減っている」ことを直視して次の一歩を!


現在、高齢者の事故を防止する取り組みがいくつも行なわれている。その成果もあってか、10万人あたりで見た高齢者の死亡者数等は減少傾向にあるが、メディアの取り上げ方からは、「高齢者の事故は増えている」ような印象を受ける。もちろん、「高齢者の事故は増えている」印象は自分個人が感じたことでしかないとは言え、同様に思っている人も多いのではないだろうか。
 
データを見る限り、高齢者の交通事故対策はおおむねうまくいっており、「引き続き頑張りましょう!」という状態。それなのに、高齢者の事故を防止したいという願いのあまりか、「高齢者の運転はまだまだ危険がいっぱい!」と必要以上にあおっているように思えてならない。それによって、「更に高齢者の事故が減るのならよいのでは」という考え方もあるのかも知れないが、何事もまずは現実を直視することが大切だ。間違ったデータや印象を元にしては、いつか判断を間違える。「高齢者による事故は減っている」ことを認めた上で、次の一歩を考えて欲しいものだ。

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