最近、東京のカラスが増えたと感じる理由


この記事の所要時間: 40秒 〜 50秒程度(2215文字)


都の対策で減ったと言われている東京のカラスが、最近、また増え出したように感じられる。街を歩いていてカラスを見かけることも多く、カラスが減っている状態に慣れたせいか、見ると少しぎょっとする。無闇に生き物を嫌うのは良くないと思うものの、いずれにせよ気持ちのいいものではない。
 
さて、ここまでは自分の印象なのだが、実際はカラスは減っているという。東京都環境局のデータによれば、平成27年度(2015年度)の都内におけるカラスの生息数は11,900羽で、前年度と比べて3,000羽の減少となる。少し長期的にデータを見ても、徐々に減ってきている感じ。増えたり減ったりを繰り返しているものの、2015年度の生息数は直近のピーク(2008年/21,200羽)の半分近くなので、減っているのは間違いないだろう。
 
自分の印象では増えているものが、公式のデータ上では減っている不一致な状態。では、なぜこんな食い違いが起きるのだろうか。今回は、この不一致の理由について、データで考えるときの注意を織り交ぜつつ考えてみよう。
 

credit: gounder via pixabay

 


増えたと感じたのは心理的なバイアスの影響!?


自分がカラスが増えたと感じた理由は、この春先にカラスが増えたと気づいたからだと考えられる。何を意味不明なことを言っているんだと思われるだろうが、要は心理的なバイアスということだ。あるとき、ふと「カラスが増えた」と思ったことで、今までより余計にカラスを意識するようになり、カラスに気づく回数が多くなって、増えたと感じるパターン。自分が考えた「カラスが増えた」という仮説を強化するため、無意識にその仮説に都合のいいデータばかり集めてしまう状態。データにあたって不一致を確認したときに最初に考えた構図で、この可能性が一番高いだろう。
 
他に考えるなら、自分の行動パターンが変わった可能性。外を歩く時間が増えたり、行動する地域が変わったりしたせいで、カラスを見やすくなったというのはあり得る。普段、持ち歩くカバンが変わり、歩くときの姿勢に変化が出て、空を見上げることが多くなって、カラスに気づきやすくなっても不思議はない。(確認のしようはないが)実際にカラスを見る回数が増えているのなら、このパターンは有力だろう。変わったのはカラスの数ではなく、自分の行動のほうということだ。
 
後は、季節変動などに過剰反応しているパターンだろうか。例年起きている増える/減るのサイクルに今年だけたまたま気付いて、「カラスが増えた」と驚いている可能性はある。カラスについて言えば、春から夏にかけてが繁殖期らしいので、それが関連して見る確率が増えているかも知れない。日が長くなって、黒いカラスが見える明るい時間帯が増えたことの影響というのは、考え過ぎだろうか。
 
人が普通に暮らしていて、カラスが増えた/減ったなどと感じるのは、極めて直感的な思い込みに過ぎない。データで裏が取れないなら、「気のせい」と考えるのが無難と言えよう。ここまで書いた理由にせよ、その他の理由にせよ、東京の「カラスが増えた」と言う自分の印象は、データとしての代表性に欠けるということだ。
 


データを疑え!?


データがあるならそれを信用するのが基本だが、データ自体を疑うという立場もある。具体的には、生息数の推測方法が環境の変化に追いつかず実態を反映していない、対策の成果を強調するために嘘の数字を発表しているなどと考えることだ。「データを疑え!」は自分の信条でもあるので、この立場も支持したいところだが、データを否定するには一定の根拠が必要になる。いろいろ調査した上で疑問を投げかけるならありだが、自分の印象と違うから「間違っている」では陰謀論の域を出ない。ここは、データを鵜呑みにするのは危険だが、データ根拠なく否定するのはもっと危険だと考えたいところだ。
 
前向きに考えるのなら、変化の兆候を先取りして気づいた可能性。冒頭で提示したデータが2015年度とやや古いこともあり、これは多少あり得る感じがする。この可能性を信じるなら、今後発表される2016年度以降のデータを楽しみに待っているといいだろう。
 


木を見ず、森を見よ!


いろいろなものの観察は調査の基本。そして、ふとした気づきが、何かを知るきっかけになることは多い。ただし、気づきはきっかけづくりには有効でも、気づきだけでそのまま本格的に進むのはかなり危ない行為。気づきを調査やデータで裏付けないと、ただの勘違いでスタートすることになり兼ねないのだ。気づきは大切だが、それを確信するためにはそれなりの手続きが必要になる。つまり、統計的なデータにあたれということだ。
 
俗に、「木を見て森を見ず」と言うが、まさにこのパターン。自分が見た木にカラスが増えたとしても、森全体のカラスが増えているとは限らない。これで転ばないためには、「木を見ず、森を見よ!」を心がけなければならないのだ。勘違いで失敗しないためにも、自分がしっかり森を見ていることを確認した上でスタートすることが必要になる。

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