カテゴリー : リサーチ

アンケートは仮説づくりからはじめよう


この記事の所要時間: 140秒 〜 240秒程度(1119文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
アンケートを実施するとき、よくいい加減に済まされてしまうのが調査目的の設定です。何かを知りたくてアンケートするので、調査目的は自明のものとしていきなり質問文を考え出したくなるのはわかるのですが、モノには順序があります。調査目的がはっきり決まってないと、思い付きの質問がバラバラと並んでしまうため、アンケート結果から引き出せる知見が限定的になってしまうのです。ゴールが曖昧ではどこを目指していいかわからないため、質問間の相乗効果が生まれません。少し面倒でも、調査目的を明確にしてから作業をスタートさせる必要があります。
 

photo credit : F.Pamplona via photo pin cc photo credit : F.Pamplona via photo pin cc

 


仮説をつくってアンケートに挑む


例えば、小売店の売上向上のためにアンケートを行なうとしましょう。
この場合、売上向上が目的とも考えられますが、これはお店としての最終目的であってアンケートの目的ではありません。このレベルの漠然とした目的意識でアンケートをつくり出すと、かなり大変なことになります。
 
売上向上のためには、既存顧客の1人あたり売上増加、新規顧客の獲得、取り扱い商品の拡充などいくつもの方法が考えられるからです。これらすべてを一度のアンケートで質問しようとすると、内容が多過ぎて収拾がつかなくなります。とても相乗効果は期待できません。
 
こういう事態を避けるためには、「この方法で売上を向上させられるだろう」という仮説をつくり、①仮説の有効性の確認、②仮説の肉付けを目指すアンケートにするのが一番です。
 
予算や時間の制約があるため一度のアンケートでたくさんのことを知りたいのは当然ですが、できる限り焦点を絞ることがアンケート成功の秘訣です。ここでも、選択と集中が生きるのです。
 


企画書をつくろう!


さて、調査目的を決めて作業をスタートしても、だんだんアレも聞きたいコレも聞きたいになるのがアンケートの常です。しかし、これをあまり許してしまうとアンケートがぼんやりしたものになってしまいます。
 
このとき有効なのは、調査目的をはじめアンケートを実施するのに必要ないくつかの決めごとを明文化することです。わかっているつもりのことでも、書くと書かないでは大きな違いがあります。そして、アンケートの内容がわかりにくくなってきたら、明文化された原点に戻ればいいわけです。
 
一般的には調査の企画書をつくります。そこで、調査目的等を明記してロジックを確認します。これにより、成果の出やすいアンケートの実施が可能になるのです。

アンケートは目的にフィットしたやり方で


この記事の所要時間: 140秒 〜 240秒程度(1113文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 


“アンケート”って何だ?


アンケート、アンケートと簡単に言いますが、では“アンケート”とはいったい何なのでしょう?
 
これまでの経験や幾つかの辞書を参考に自分なりに定義するなら、

①多数の対象に
②同じ質問をして
③意見を調査する

ことになります。
 
ポイントは③の「意見を調査する」です。ここにどの程度のウエイトを置くかでアンケートの意味合いはだいぶ変わってきます。言い換えれば、ここに齟齬があると役立たずのアンケートになってしまうのです。
 


趣味のアンケートならば・・・


例えば、個人的な興味や趣味について「みんなの考えを知りたい」と思うことがあるでしょう。この場合でも、「①多数の対象に」、「②同じ質問をして」を満たせばアンケートと言えます。しかし、その多くでは「③意見を調査する」という意識は低いようです。
 
そこまで堅苦しくならず、「みんなの意見が何となくわかればいい」と考えてアンケートを行なっているのです。このような目的ならば、自分の聞きたいことを、自分の聞きたいように、自分の聞きたい人に質問すれば充分です。その結果は、対象とした人たちの意見を代表しているとは言えないことも多いでしょうが、個人的な興味や趣味なら大きな問題にはなりません。そもそも、そんなことを求めていないでしょう。
 


仕事のアンケートならば・・・


仕事で何かを調査するためにアンケートを行なうならば、話は別です。
調査結果を商売に役立てようとしているのですから、しっかりと「③意見を調査する」必要が生じます。そのためにはアンケートの作法に則って作業をすることにより、意見を少しでも正しく、偏りなく集めることが求められます。そうしなければ、正確なアンケート結果を得ることができず、結果的に意思決定を間違える可能性が高いからです。
 


アンケートは目的にフィットしたやり方で


趣味のアンケートは誰でも簡単に実施できます。一方、仕事のアンケートを行なうには一定のスキルが必要です。趣味のアンケートの延長線上に、仕事のアンケートはありません。かけ離れたものです。
 
アンケートを安易に考えて失敗する事例はここの部分を勘違いしたものが多いようです。つまり、趣味のアンケートで成功したので仕事のアンケートもできると考えるのです。しかし、そうはなりません。仕事のアンケートを行なうのなら、目的にフィットしたそれなりのやり方を選ぶ必要があります。
 
さて、では仕事のアンケートを具体的にどうやって行なうのか。
それは次回以降にご説明します。

アンケートは役立たない? 〜アンケート作法習得のススメ〜


この記事の所要時間: 130秒 〜 230秒程度(960文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
近年、インターネット上で簡単にアンケート調査が実施できるようになりました。また、エクセルの活用で集計が容易になったせいか、店頭アンケートなども増えているように感じます。
 
「顧客の声を経営に!」と考える自分としては、顧客を知ろうとするアプローチは何であれ歓迎したいところですが、手放しでは喜べません。なぜなら、今のような調査のやり方をしていては、「アンケートは役立たない」と思われてしまう可能性が大きいからです。
 

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アンケートは使い方次第で武器にも害毒にもなる


アンケートを取り巻く現状を見ていて、調査を商売にするなら必読の『社会調査ハンドブック』(飽戸弘/日本経済新聞社/1987年)にある以下の文言を思い出しました。少し長いけど引用します(強調は佐々木によるもの)。

このようにさまざまな「社会調査」の普及は、調査というものを、われわれの日常の生活や仕事にとって身近なものにしてくれたのだが、その半面調査に対する“なれ”“安易な態度”、ときには誤った認識をももたらした。

ここでわれわれは、もう一度「社会調査」についての正しい認識と活用のための技法を身につけておく必要があろう。さもないと、「社会調査」というすばらしい武器を活用する機会を失うだけでなく、誤用による害毒から自分を守ることすらできない可能性があるからだ。

 
いかがでしょう。アンケート調査は、いま再びこの危機に直面しているように思えてなりません。アンケートという大きな武器を、いい加減に実施することで害毒に変えてしまっている例が多いのです。
 


アンケート作法を身に付けよう!


ITの進化等によりアンケートを実施するハードルは低くなっています。そして、アンケート調査の質問文は誰にでもつくれるように思えるでしょう。その結果、アンケートの作法を心得ていない“困ったアンケート”が横行しています。この結果を元に何らかの判断をすれば不幸を招くでしょう。そんな事態はこれ以上見たくありません。
 
そこで、次回以降、アンケートの方法について少し書いてみようと思います。

データを「分類する」のは人間です


この記事の所要時間: 240秒 〜 340秒程度(1579文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
世の中にはさまざまな人たちがいます。100人いれば100通りの考え方があって当然です。しかし、100人が百人百様の考えを持つことを知っても、そこから何かを判断することは不可能です。そこで、人々や意見を何らかの基準で「分類する」ことが必要になります。
 


「分類する」とは細部を捨てること


ある事柄、例えば「東京スカイツリーに行きたい」に対して、アンケートで「そう思う」か「そう思わない」かを質問すれば、100人を2種類に分類することができます。「どちらとも言えない」を加えれば3種類、「ややそう思う」「あまりそう思わない」を加えれば5種類となり、少し細かく分類することが可能です。しかしそれでも、ある基準で分類すると細部を捨てることになるのは間違いありません。「予約さえ取れれば明日にでも行きたい」も「機会があったら一度行ってみたい」も一緒になってしまいます。百人百様の考えを2種類なり、3種類なり、5種類なりに、誰かがつくった基準で無理矢理わけているのです。データをつくる人間はもちろん、そのデータから何かを判断する人間も、「分類」されたデータは無限にある基準の中から主観的にどれかを選んだものだと自覚する必要があります。
 

photo credit : Pulpolux !!! via photo pin cc

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赤とレンガ色は同じ色?


事前に基準をつくるのが難しい場合、アンケートで自由回答の質問をしたりしますが、不用意にこれをやると更なる困難を招くことになります。回答から傾向を掴むために、後から似たもの集めをすることになるのですが、この基準づくりが難しいのです。
 
以前、ある街のイメージを色でたとえてもらう質問を自由回答でしたことがあります。
回答には、赤、青、黄色、ピンクなど直接的(?)な色の名前のほか、レンガ色、夕焼けの色など少し情緒の入った色名も混じりました。これをどうまとめたらいいでしょうか。街のイメージカラーを知りたいだけなら、赤とレンガ色を括って「赤系統」とわけた方がいいでしょう。水色と青とスカイブルーも一緒です。でも、街への思い入れを知りたいなら、レンガ色や夕焼け色といった気持ちの入った回答は別にした方がいいことになります。自由回答にしても、「分類する」基準はどこかで決めなくてはならないのです。
 


年齢はどうわける?


分類に悩むことがないように思える数値データでも、どうやって階級をわけるかという問題があります。
 
例えば年齢です。もちろん、5歳刻みや10歳刻みにしておけば苦情は出ないのですが、それがベストなのかは別問題です。例えば、小学生(7歳〜12歳)、中学生(13歳〜15歳)、高校生(16歳〜18歳)等を特別に分類するのは一般的に行なわれています。しかし、アンケート全体の趣旨を考えて「団塊世代だけを切り取る分類があった方がいい」等の議論になると意見がわれます。どう「分類する」かは常に付きまとう難問です。
 


データを「分類する」のは人間です


もちろん、これらの分類方法に正解はありません。大切なのは、自分の考えを持って、その基準を選んだ理由を主張できることです。何らかの事実をデータに置き換えることが主観的に「分類する」ことだとわかっていないとこれができません。
 
数値化されたデータは客観的なもののように見えます。しかし、その影で誰かが分類をしているからこそハンドリングできるデータになるのです。このことを忘れないことがデータを扱うときには重要になります。

まず消費者中心に考える


この記事の所要時間: 230秒 〜 330秒程度(1520文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
モノを売るためには、消費者のニーズと企業が提供する製品/サービスをフィットさせる必要があります。「何、当たり前のこと言ってるんだ」と思われるでしょう。しかし、これがなかなか難物なのです。
 


消費者が歩み寄る? それとも企業が歩み寄る?


マーケティングにプロダクトアウト、マーケットインという用語があります。プロダクトアウトは「企業がつくれるモノを売る」、マーケットインは「消費者が欲しいモノをつくる」という意味です。フィットという言葉で説明すれば、消費者が歩み寄ってフィットさせるのがプロダクトアウト、企業が歩み寄ってフィットさせるのがマーケットインとなります。
 
マーケティングでは「発想をプロダクトアウトからマーケットインに変える」ことを勧めます。つまり、企業が歩み寄ってフィットさせろということです。マーケティングの考え方があまり一般的でなかった数十年前はマーケットインの発想を納得させるだけでも大変だったようですが、現代の企業の多くはこれを当然のこととして受け入れます。ここまではいいんです。
 


「消費者が欲しいモノ」はアンケートで


さて、ポイントは「消費者が欲しいモノ」を誰が決めるかです。数々の失敗を見て気付くのは、企業側が「消費者が欲しいモノ」を勝手に決めてしまうパターンが多いことです。
 
例えば「消費者はもっと高画質のテレビを求めているはずだ」、「多機能製品は低機能より消費者に喜ばれる」、「消費者は安いものが好き」等の決め付けです。これらは要は「より良いものを望んでいる」と言っているだけですから一見普遍の価値観のように見えます。しかし、消費者が、どんな製品/サービスについても、常に最良を望んでいるとは限らないのです。このパターンでは、「消費者の実態」より、企業が考える「消費者のあるべき姿」を優先させてしまうことが失敗につながります。
 
また、「うちの家族は・・・」、「オレの友達は・・・」、「この間のお客は・・・」の類もよくある間違いです。これらは消費者を見ている点では良いのですが、その視点に一般性がありません。①対象としている人数が少ない、②対象に偏りがあるだけでなく、③それらを見た人が印象に残った事象のみを記憶しているため一般的ではないのです。このパターンの失敗は、自分自身への過信が原因で起こります。
 
いずれのパターンにせよ、マーケットインを実現しようとして「消費者が欲しいモノ」を考えたのに、それを企業が決めてしまったのでは何にもなりません。「消費者が欲しいモノ」はアンケート調査等の手法を使って、実際の消費者に聞くのが一番です。
 


まず消費者中心に考える


企業の方々は口を揃えて「マーケティングが大事」と言います。しかし、実際にはマーケティングの発想には程遠いことをしています。プロダクトアウトとマーケットインの例などはその典型です。
 
問題は、マーケティングの考えを本当に納得して=腹落ちして行動しているかです。世の中の流れがそうだからとか、会社がマーケティング重視の方針だからとか、他所の会社がマーケティングで成功したからとかの理由で、マーケティングを受け入れている人が多いのではないでしょうか。マーケティングはスキルも重要ですが、それより何より根本にあるマーケティング発想を理解することが最も大切です。この部分が欠けてしまっては元も子もありません。
 
マーケティングの考えを敢えて一言であらわすなら、「消費者中心に考える」ということになります。まずはこの発想で考えてみてはいかがでしょうか。