カテゴリー : 思考法

バズワードに気を付けろ!


この記事の所要時間: 20秒 〜 30秒程度(1272文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
皆さん、バズワードという言葉をご存知でしょうか。
パスワード(password)と空目しそうですが、バズワード(buzzword)です。簡単に言えば「定義があやしい流行語」のことで、多くの人があまり意味がわからずに何となく使っている言葉を示します。バズワードという言葉を聞いたことが無かった人でも、この説明を読めば「そういう言葉ってあるよな」と思われるのではないでしょうか。
 
ウィキペディア日本語版では、以下のように紹介されています。

バズワード(英: buzzword)とは、一見、専門用語のようにみえるが、具体性がなく明確な合意や定義のない用語のことである。一方、最初は明確に定義されている専門用語であっても、流行語となり本来の意味から逸脱して使われるようになると、バズワードと見なされる。このようにバズワードという用語は定義が曖昧な用語なので、「バズワード自体がバズワードである」とする説もある。

 
「バズワード自体がバズワードである」という悩ましい問題はありますが、「定義があやしい流行語」にバズワードというラベルを貼ることで、その使用に注意を促しやすくなる効果は大きいと考えています。
 
さて、ビジネスの世界はバズワードだらけです。
古くはイノベーション、リストラクチャリング、グローバリゼーション、ビジネスモデル、最近ではクラウド化、ビッグデータなど、いくらでも挙げることができます。ビジネスの世界は動きが速い上、そのバズワードを使って儲けようという企業がたくさんいるので、かなりややこしくなります。それぞれの企業や個人で定義が違うのはいいのですが、自分と自分の顧客で言葉の定義が違うと不幸な結果を招きます。この点には注意が必要でしょう。

たとえば自分の場合、「イノベーションを目指しているのでアンケート調査は不要」と言われることがあります。真に新しいものは消費者の想像を超えるため、消費者にアンケートをしても出てこないという意見です。ウォークマンやiPhoneの類ですね。これはその通りだと思います。ただし、その発言をした人が行なおうとしているイノベーションがどんなイノベーションなのかは見極めなければいけません。馬車を蒸気機関に変えるような真のイノベーションを目指しているとは限らないからです。もし、その人が商品の大枠を変えずに行なう改良や改善をイノベーションと言っているならば、アンケート調査の実施をオススメした方がいいことになります。

重要なのは、ビジネスの現場で我彼の言葉の定義の違いに気付いたら、その違いを明らかにしてそれをすり合わせることです。言葉の定義を議論することは①理屈っぽく、②直接的な見返りがなく、③正誤の問題になると相手のプライドを傷つけかねないので、避ける人が多いように思います。でも、重要な言葉に認識の違いがあって得はありません。
 
恐れず、青臭く、この違いに挑むことが重要です。特にバズワードについては。

女性は化粧品ではなく希望を買っている


この記事の所要時間: 210秒 〜 310秒程度(1319文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
さて、佐々木は「マーケティング好き」を公言して憚らないのですが、そのきっかけとなったのが「マーケティング近視眼」という論文です。学生時代、『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に掲載されたものを読みました。元々1960年に書かれたものが再掲されたのですが、まったく古びていませんでした。50年以上前の論文が、今読んでも刺激的です。
 
この論文を書いたのがセオドア・レビットです。ダイヤモンド社曰く「マーケティング界のドラッカー」なのですが、日本ではあまり知られていません。細かなノウハウではなく、マーケティングの底流となるような考え方を説明しているため、実用的でないと思われるのでしょう。先日のスキルをセンスと勘違いしてませんか?で紹介した「スキルとセンス」のフレームで考えるなら、スキルではなくセンスに寄った話と言えます。だから、受け入れられないのかも知れません。残念なことです。
 
レビットは

 顧客は商品を買うのではない。
 その商品が提供するベネフィットを購入しているのだ。

と主張します。
 
ベネフィットとは便益、つまり顧客が受け取る利益のことで、金銭的な利益以外も含めて考えます。『マーケティング近視眼』の中の事例で言うと、鉄道会社が提供している便益は鉄道ではなく移動手段、映画会社が提供している便益は映画ではなくエンタティメントのコンテンツということになります。マーケティングという時の流れに振り回されやすい分野について、こういう原理的な考えをする姿勢に惚れました。
 
『レビットのマーケティング思考法』(セオドア・レビット/ダイヤモンド社)の中では、こうも言っています。

 なるほど、女性は化粧品を使う。
 だが女性は化粧品を買うのではない。希望を買っているのである。

痺れるくらいに格好良いですよね。そう、あの商売は希望を売っているのです。だから、あの商品構成、価格設定、広告戦略で良いわけです。
 


photo credit : 写真素材 足成

 
こういうモノの見方を、ちょっと前や今現在売れているものに当てはめて考えることも有効です。例えば、フロッピーディスク。「情報交換のためのメディア」と捉えてMOやCDに置き換わるのは予想できましたが、それではまだ甘かったようです。今のようにほとんどメディア自体を使わずインターネットに頼る時代になることは予想できませんでした。求められているのはメディアではなく「情報交換すること」自体だと考える必要があったようです。
 
今ならFacebookやTwitterについて考えるのもおもしろいでしょう。
現在はもてはやされていますが、利用者は別にあれらのサービス自体を求めているわけではありません。いろいろな人とのつながりや情報交換の場が欲しいだけでしょう(やや単純化し過ぎですが)。近い将来、まったく新しいサービスに置き換わる可能性は案外高いのではないかと思っています。
 
皆さんも、たまにはこのモノの見方でいろいろ考えてみてはいかがでしょうか?