タグ : ベネフィット

カメラ専用機のベネフィットは“特別感の演出”


この記事の所要時間: 220秒 〜 320秒程度(1394文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
WIRED.jpに『数字で見る「カメラ市場へのスマホの影響」』という興味深い記事がありました。調査によると「カメラ専用機で撮られた写真の割合は、2010年の52%から44%に減少」しており、スマートフォンなどのカメラ機能の影響が大きいという内容です。
 
記事では、「日常的で即興的な利用」と「バケーション時」のモバイルカメラ利用率の差がグラフで示されており、当然ながら「日常的で即興的な利用」で高くなっています。これを見て改めて考えたのが「カメラ専用機のベネフィット(金銭以外も含めた利益)は何なのか」ということです。
 

photo credit : panaromico via photo pin cc photo credit : panaromico via photo pin cc

 


ベネフィットは“画像による記録”?


カメラのベネフィットは、その本来的な機能を考えた場合、現実の一側面を画像により記録することと言えるでしょう。しかし、このベネフィットだけなら、今の時代、携帯電話やスマートフォンのカメラ機能(以下、スマホカメラ)で充分満たすことができます。画像で記録するためだけならカメラ専用機はいらないのです。
 
「より美しく」「より正確に」現実を切り取るというベネフィットを想定するとカメラ専用機の位置付けが明確になります。しかし、最近のスマホカメラの性能向上を考えるとこれも長く続かないように思います。冷静に考えれば、既にスマホカメラの画質さえ過剰品質と言えるかも知れません。
 
良い写真を撮影するためには、カメラの性能以外に撮影者の技術やセンス、写真の被写体やシチュエーションなどが重要になります。これらの要素の影響と比べると、カメラ専用機の性能とスマホカメラの性能の違いは微々たるものと考えられるからです。
 


カメラ専用機のベネフィットは“特別感の演出”


それでもなぜカメラ専用機を使うのかと考えると、そのベネフィットは雰囲気や気持ちの問題だと考えられます。子どもの運動会の写真をスマホカメラで撮っていては、特別な雰囲気が出ないのです。まるで、手抜きをしているようです。記念日にちょっと高級なレストランにいつもと違った服装で出掛けるように、特別な日にはカメラ専用機を使うことが必要なのです。このとき、カメラ専用機を使うことで出来あがる写真の質が向上するかどうかは、ほとんど関係ありません。
 
こう考えると、カメラ専用機の売上を伸ばすためには、“特別な日を増やす”アプローチが有効ではないでしょうか。「こういうときはカメラ専用機」というシチュエーションをどんどん提案するのです。既に行なっているメーカーもあるでしょうが、今後を考えれば、更にシチュエーションを強調したアプローチが重要になると考えられます。
 
また、特別感の少ない便利さだけにシフトしたようなコンパクトカメラは、スマホカメラとの弁別が厳しくなるでしょう。機能は今までのコンパクトカメラだけど「見掛けはいかにもカメラ」、そんな商品も一案のように思います。
 
具体案については思い付きの部分もありますが、カメラ専用機の位置付けを再考して“特別感の演出”を目指すことは重要です。
 
モノ(カメラ)ではなくコト(シチュエーション)で考えることが、カメラ市場にも求められているのです。

独立診断士は名刺交換も本気です


この記事の所要時間: 220秒 〜 320秒程度(1451文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
独立開業してから名刺交換の大切さを痛感しています。
 


会社員とは名刺交換の意味付けが違う


会社に勤めているときは、半ば儀礼的に名刺交換をしていました。
特にお互い知っている会社同士の場合などは、所属部署、肩書き、連絡先を知らせることが主な目的です。会社の名刺に勝手な文言を付け加えられないというのもありますが、名刺交換で自己アピールするなどあまり考えませんでした。アピールは、相手と関係をつくる中で行なうことと考えていて、名刺交換とはほとんど結び付いていなかったのです。いま思えば、会社という大きなバックボーンに支えられて行なっていた名刺交換だったのでしょう。
 
ところが、独立して仕事をするようになると状況がまるで違います。
名刺交換は自己アピールのための手段です。「自分がどこの誰で何ができるのか」をゼロから説明して、興味を持ってもらうことが必要になります。独立診断士にとっては、名刺交換もある種のプレゼンテーションなのです。
 

photo credit : mattedesign via photo pin cc

photo credit : mattedesign via photo pin cc

 


名刺は受け取る人の立場でつくる


名刺を自己アピールのための道具と考えると、名刺に少しでも多くの情報を詰め込みたくなります。しかし、これはよく考えて行なわなければなりません。マーケッターたるもの常に消費者(この場合は名刺を受け取る人)の立場で考えるからです。名刺の受け取り手は、自己アピールのための自己紹介がたくさん書いてある名刺をもらってベネフィット(便益)を感じるでしょうか。話の接ぎ穂にはなるでしょうが、あまり多いとどこから話して良いのかわかりません。きっと、いくつかのキーワードを知らせた方が相手のベネフィットは高まります。名刺に書いてある情報量が多過ぎて、もらった人が目をキョロキョロさせて迷っている場面さえよく見ます。これではいけません。
 
情報をデザインして、①興味をひく切っ掛けにしたい端的な情報と、②それらに興味を持った人に読んで欲しい情報を整理してレイアウトする必要があるのです。簡単なことではありませんが、このデザインをしっかりしたいと考えるようになっています。
 


名刺交換も量より質


独立開業した当初は、一人でも多くの人と名刺交換しようと考えていたのですが、最近はコレも変わってきています。大勢集まったところで大量に名刺を配っても相手はあまり覚えていないからです。近ごろでは、たくさん人がいる場所でも少人数に対してしっかり話をして名刺を渡すことを心掛けています。名刺交換の量を目指しても、得られるものは限られると考えているからです。
 


何ごとも一から考え直す


さて、いろいろ書きましたが、独立診断士が名刺交換一つをとっても本気で考えていること、わかっていただけたでしょうか。
 
会社員と独立診断士では、同じビジネスという土俵で仕事をしていても、モノの捉え方が大きく異なります。このとき、会社勤めで身に付けた常識をが邪魔になることがあります。極めて矮小な例ですが、今回取り上げた名刺交換などもこれにあてはまるでしょう。
 
独立したからには、何ごとも一から位置付けを考え直す必要がある。
そう考えています。

モバイル専用サイトは必要ない!


この記事の所要時間: 20秒 〜 30秒程度(1242文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
株式会社イードが運営するU-Siteというホームページで、ウェブサイト・ユーザビリティ研究の第一人者 ヤコブ・ニールセンが書く「ニールセン博士のAlertbox」が公開されています(日本語です)。ニールセン博士が展開するウェブサイトの使いやすさについての議論は本質的かつ刺激的で、やや理想論に走り過ぎる嫌いはあるものの、ホームページを持っている人には必読の内容です。
 
昨日、この「ニールセン博士のAlertbox」に再利用 vs. 最適化されたデザインという興味深い記事が掲載されました。印刷物とオンライン、デスクトップとモバイルなど、いくつものプラットフォームで同じ情報を発信する際、プラットフォーム毎に最適化したデザインを作成する必要があるかという議論です。古くて新しい論点といえるでしょう。記事は、「再利用しても構わない」場合、「プラットフォームごとに最適化されたデザインを別々に創り出す」べき場合を導出して結論としています。
 

photo credit : blakespot via photo pin cc

photo credit : blakespot via photo pin cc

 
この問題、デスクトップとモバイルに限って考えると、モバイル専用ページで何をしたいのか明確な戦略を持つことが重要になります。
「スマートフォンの利用率が上昇してきてるから、そろそろモバイル専用ページをつくらないとな」といった消極的な動機でモバイル専用ページをつくっても成功は望めません。このような意識でページをつくると、表面的なデザインだけモバイルに最適化したページができてしまいます。デスクトップ用サイトとコンテンツの内容や操作性が変わらなければ、新しい価値は生まれません。そんなモバイル専用ページなら必要ないと言えるでしょう。

成功するために大切なのは、“デスクトップでサイトを見るユーザー”と“モバイルでサイトを見るユーザー”の行動の違いを理解した上で、モバイルユーザーにどんなベネフィット(便益)を提供するか戦略的に考えることです。モバイル専用サイトで商品を購入できる便利さを提供するのか、店頭で商品を選ぶときにすぐに見られる参考情報を提供するのか、思わず友達に教えたくなるようなゲームなどを提供するのか、そしてモバイルユーザーはそれらを本当に望んでいるのかを考えるのです。これらの戦略を明確にした上で、モバイルユーザー向けのページを再構築すれば、ユーザーフレンドリーなモバイル専用サイトの実現が可能になるでしょう。

長々と書きましたが、要は何ごとも戦略をしっかり考えることが重要です。
そして、そのためにはフレームが必要になります。ぜひ、以前紹介したSTP戦略コンセプトのABCなどを使って戦略を考えることをオススメします。

女性は化粧品ではなく希望を買っている


この記事の所要時間: 210秒 〜 310秒程度(1319文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
さて、佐々木は「マーケティング好き」を公言して憚らないのですが、そのきっかけとなったのが「マーケティング近視眼」という論文です。学生時代、『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に掲載されたものを読みました。元々1960年に書かれたものが再掲されたのですが、まったく古びていませんでした。50年以上前の論文が、今読んでも刺激的です。
 
この論文を書いたのがセオドア・レビットです。ダイヤモンド社曰く「マーケティング界のドラッカー」なのですが、日本ではあまり知られていません。細かなノウハウではなく、マーケティングの底流となるような考え方を説明しているため、実用的でないと思われるのでしょう。先日のスキルをセンスと勘違いしてませんか?で紹介した「スキルとセンス」のフレームで考えるなら、スキルではなくセンスに寄った話と言えます。だから、受け入れられないのかも知れません。残念なことです。
 
レビットは

 顧客は商品を買うのではない。
 その商品が提供するベネフィットを購入しているのだ。

と主張します。
 
ベネフィットとは便益、つまり顧客が受け取る利益のことで、金銭的な利益以外も含めて考えます。『マーケティング近視眼』の中の事例で言うと、鉄道会社が提供している便益は鉄道ではなく移動手段、映画会社が提供している便益は映画ではなくエンタティメントのコンテンツということになります。マーケティングという時の流れに振り回されやすい分野について、こういう原理的な考えをする姿勢に惚れました。
 
『レビットのマーケティング思考法』(セオドア・レビット/ダイヤモンド社)の中では、こうも言っています。

 なるほど、女性は化粧品を使う。
 だが女性は化粧品を買うのではない。希望を買っているのである。

痺れるくらいに格好良いですよね。そう、あの商売は希望を売っているのです。だから、あの商品構成、価格設定、広告戦略で良いわけです。
 


photo credit : 写真素材 足成

 
こういうモノの見方を、ちょっと前や今現在売れているものに当てはめて考えることも有効です。例えば、フロッピーディスク。「情報交換のためのメディア」と捉えてMOやCDに置き換わるのは予想できましたが、それではまだ甘かったようです。今のようにほとんどメディア自体を使わずインターネットに頼る時代になることは予想できませんでした。求められているのはメディアではなく「情報交換すること」自体だと考える必要があったようです。
 
今ならFacebookやTwitterについて考えるのもおもしろいでしょう。
現在はもてはやされていますが、利用者は別にあれらのサービス自体を求めているわけではありません。いろいろな人とのつながりや情報交換の場が欲しいだけでしょう(やや単純化し過ぎですが)。近い将来、まったく新しいサービスに置き換わる可能性は案外高いのではないかと思っています。
 
皆さんも、たまにはこのモノの見方でいろいろ考えてみてはいかがでしょうか?