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悪い友達がいると借金できなくなる?


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1955文字)


アメリカにはクレジットスコアという指標がある。
クレジットスコアはその人の信用度をあらわす偏差値のようなもの。大雑把に言えば、金融機関はクレジットスコアに基づき金利や貸付限度額を決めているのだ。また、このスコアは就職試験や不動産賃貸の審査などでも利用されている。「お金の管理ができない人は他の面でも問題がある」という考えで応用範囲が広がっているらしい。何とも世知辛い話だが、有効なデータ活用と言えるだろう。
 
このクレジットスコア。基本的にはこれまでの支払履歴から算出されている。確かに、長い間きちんとクレジットの支払いをしてきた人は今後も支払うだろうし、そうでない人はそのままだろう。信用度には年収や預金額なども影響しそうなものだが、クレジットスコアでは「どれだけまじめに返済してくれるか」を重視している(参考:信用情報|ウイキペディア日本語版)。
 
統計学には、ある変数(被説明変数)は他のいくつかの変数(説明変数)から算出できるという考え方がある。クレジットスコアの例で言えば、支払履歴などから信用度を推定できると考えるのだ。変数間の関係が明確であれば、こういう仕組みが成立することは誰でも想像できるだろう。このときポイントとなるのは説明変数の選択となる。被説明変数に大きな影響を与える変数を見付け出すことが重要なのだ。
 
GIGAZINEにFacebook上の友人があなたのクレジットスコアに影響を与えているという記事が掲載された。支払履歴とは違ったまったく新しい変数で、別のクレジットスコアを算出しようという動きがあるらしい。例えば、Facebook上の友達が支払いを遅延したことがあるかどうかで、クレジットスコアを決めるという。遅延した友達の有無が、実際に支払いをするかどうかに大きく影響するのなら合理的なモデルと考えられるが、友達次第で借金ができたりできなかったりすることに納得のいかない人も多いだろう。
 
以前は使用できる説明変数は限られていた。
しかし、インターネットの発達などによりどこかしこにデータが存在するようになってきたため、状況が変わってきている。測定可能な変数が増加し、コンピュータの計算能力が向上したため、扱える変数の幅が増えたのだ。データを分析する企業の側にはありがたい変化だが、分析される消費者の一人として考えるとあまり歓迎できない。
 

Photo credit : confidence, comely. / Foter / CC BY-NC Photo credit : confidence, comely. / Foter / CC BY-NC

 
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その原因は無能か? 悪意か?


この記事の所要時間: 330秒 〜 430秒程度(1988文字)


先日、日本経済新聞にドコモ、ツートップ戦略の誤算 iPhone当面見送りかという記事が掲載された。日経新聞、iPhone、NTTドコモの組み合わせと言えば、毎年のように登場する「ドコモからiPhoneが発売に!」の飛ばし記事が記憶に残るが、今回はこれまでとは一味違う「見送り」バージョンとなった。
 
このような飛ばし記事が事実と異なるとわかると、必ずと言っていいほど陰謀論が登場する。「日経が株価を操作するために、記事を捏造した」」といった類の話題だ。問題が発生したとき、その原因として何の根拠もなしに誰かの陰謀を疑う人は多い。みずから陰謀論を考えるまで至らなくても、他人の陰謀論にちゃっかり乗ったりする。SNSでのやりとりが盛んになってきてからは、陰謀論が勢いをつけて広がるパターンもしばしば見受けられる。
 
さて、陰謀論を見るたびに思い出すのが「ハンロンの剃刀」だ。一文であらわすなら、

Never attribute to malice that which is adequately explained by stupidity.

無能で十分説明されることに悪意を見出すな

という警句になる(参考:ハンロンの剃刀|ウィキペディア日本語版)。上記の例で言えば、「日経新聞の能力不足」の可能性があるのなら、何も「記事を捏造した」と考える必要はないということだ。
 
この警句でも示される通り、問題の原因がわからないときは、根拠なく悪意を想定しないように注意しなければならない。なぜなら、悪意を疑っても損をするだけだからだ。
 

Photo credit : JD Hancock / Foter / CC BY Photo credit : JD Hancock / Foter / CC BY

 
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トンデモ仮説にダマされない「懐疑の技術」


この記事の所要時間: 420秒 〜 520秒程度(2396文字)


企業は目標を達成するためにさまざまな施策を実行する。
このとき、目標と施策の因果は仮説に過ぎない。つまり、どれもやってみなければわからないのだ。「製品の機能を向上させれば、消費者が飛び付く」も、「広告出稿を増やせば、売れる」も、「SNSを積極活用すれば、商品のファンができる」も、あくまで「そう考えることができる」だけだ。「◯◯すれば、××になる」と言うロジックは、自社の活動による他者や他社の変化を想定している限り、仮説でしかない。たとえ自社の活動をコントロールできたとしても、その波及効果はコントロールできないのだ。
 
もちろん、事実やデータを積み重ねることで施策=仮説に「もっともらしさ」を生み出すことは可能だし、これを怠ってはいけない。しかし、これらの検証作業には限界があり、どの施策を採用するか、どの施策に多くの予算を配分するかは、最終的に「エイヤー」の判断にならざるを得ない。企業内で立場のある人間が判断を下す際には、もっともらしい理由が述べられるが、あんなのただの後付けの作文だ。厳密な議論には程遠い。
 
それでも、企業は仮説に過ぎない施策を採用することになる。何かを選ばなければ前に進めないし、そもそも確実に成功する施策などわからないからだ。実際のビジネスにおける施策選びでは、事実やデータを使うことで少しでも意思決定の精度を上げることしかできる。言い換えれば、それしかできないのだ。
 
仮説の外れることがあっても、他社と較べてその確率が低ければ、いつかその差が業績にあらわれる。呑気な話のようだが、こう考える方が現実的だ。この世に魔法使いはいないのだから、仕方がない。
 
さて、そうは言っても、世の中にはトンデモない商品や戦略が満ち溢れている。そもそも明後日の方を向いているような、正気の沙汰とは思えない企業活動は後を絶たない。多くの場合、なぜそんな仮説を採用したのか、端から見るとわけがわからないが、企業の中では諒解が取れているのだから驚いていしまう。
 
他人事ではない。
どんな会社でも、トンデモない仮説が採用され、顧客や社員や取引先や株主が酷い目に合う可能性はある。故意か過失かは別にして、トンデモ仮説が「もっともらしさ」の仮面を付けて登場したなら、それを見抜かなければ面倒なことになるのだ。今回は、これに巻き込まれないために必要な「懐疑の技術」を紹介しよう。
 

photo credit : gato-gato-gato via photopin cc

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資金繰り支援で会社は再建できるのか?


この記事の所要時間: 310秒 〜 410秒程度(1852文字)


結論から申し上げよう。
資金繰り支援によって会社再建ができるとは限らない。
 
理由は簡単で、会社の再建にとって資金繰りは必要条件だが、資金繰りさえすれば十分条件が満たされるわけではないからだ。当然ながら、会社再建のためには、資金繰りの他にも商品開発、業務改善、マーケティングなどいろいろな機能が求められる。
 
必要条件・十分条件という用語はビジネスの場でよく使われる。
「数学や記号論理学で定義する必要条件・十分条件と意味が異なる」という指摘を脇に置いて、実際に使われるこれらの用語の意味を考えると、次のように言えるだろう。

 必要条件:目的を達成するために必要となる条件
 十分条件:すべてを満たせば十分に目的が達成できる条件

 
こうやって説明すると単純なようだが、必要条件と十分条件の取り違いはよく起きる。
特に、必要条件でしかないものを十分条件のように考えてしまうことは多い。そして、この勘違いを上記の資金繰りの例などですると、会社の命取りになり兼ねない。まだまだ手当てが足りない状態で、もう充分だと満足してしまうのだ。
 
さて今回は、この必要条件と十分条件の勘違いについて、いくつか例を挙げて説明してみよう。
 

photo credit : 401(K) 2013 via photopin cc

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比較アンケートで真因に近付こう!


この記事の所要時間: 420秒 〜 520秒程度(2423文字)


JBpressで日本の問題は通貨ではなく、競争力のない製品だという記事を見掛けた。英フィナンシャル・タイムズ紙からの転載で、「たとえ円が大幅に下落したとしても、世界の消費者はサムスンの製品を捨てて、ソニーや東芝の製品に乗り換えるつもりは全くない」という強烈な主張からはじまる記事だ。「競争力がない」の根拠が一切不明なところは引っ掛かるが、第一感で「一理ある」と思った。最近の、何でもかんでも円高をスケープゴートにしてしまう論調に疑問を持っていたからだ。
 
輸出企業の業績不振を、円高の所為にするのはたやすい。しかし、当然ながら円高だけが企業の不調の原因ではない。例えば、製品の競争力やマーケティングにも難があると考えるのが普通だろう。この場合、円高が解消されただけでは企業の競争力はあまり回復しないだろう。円高は、業績不振の唯一の真因ではないのだから、当たり前の話だ。
 
人は、何か問題があるとその原因を考えようとする。そして、ビジネスにおいては真因を見付け出すことが求められる。「臭いにおいは元から絶たなきゃダメ」というわけだ。確かに、表面的な対症療法では効果が限定されるため、根源的な真因を取り除くアプローチには魅力も説得力もある。
 
しかし、ここに大きな落とし穴がある。
多くの場合、真因など誰にもわからないのだ。もし、みんなが同意できるほど自明な真因があるのなら、とうの昔に発見されて既に解決されているだろう。「真因がある」、「真因を知ることができる」という考え自体が、自信過剰になった人間の勘違いだと言える。
 
では、どうやれば少しでも真因に近付けるのか。
これが今回のテーマとなる。
 

photo credit : angelferd via photopin cc

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