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IKEAの本棚売り場縮小からデータ検証を考える


この記事の所要時間: 220秒 〜 320秒程度(1393文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
TechCrunch JAPANにアメリカでついにeブックの売上がハードカバー書籍を抜くという記事が掲載されました。FacebookやTwitterでもたくさん取り上げられていたので、ご覧になった方も多いでしょう。アメリカでの電子書籍の浸透は凄まじいようで、停滞している日本の現状と比較すると羨ましい限りです。
 
さて、この記事にはもう一つ興味深い箇所がありました。

家庭の本の数は少なくなると見たIkeaが本棚の売り場を縮小したぐらいだから、あなたのおうちでも、本棚がLPレコードや8トラックテープや陰部用かつらの道を辿る前に、買いだめしておいたらどう?

 
どうやらIKEAが本棚売り場を縮小したらしいのです。世の中の大きな流れを先取りして動いているのでしょうが、まだまだ不確定な要素も多い中、大胆な判断だと感じます(IKEAの売上構成に占める本棚の比率は極めて小さいでしょうが、・・・)。
 

photo credit : SamueleGhilardi via photo pin cc

photo credit : SamueleGhilardi via photo pin cc

 


素早い意思決定は素晴らしい


企業の中では、今までやっていることを継続する(本棚の売り場を維持する)のは簡単ですが、新たなことを決定、実行する(本棚の売り場を縮小する)のはとても大変です。この差があるため、企業、特に古くから続く企業の動きは必然的に鈍くなります。いつまでも古いスタイルの商売をしていて、だんだんジリ貧になる企業がよく見られのもこのせいです。
 
そんな中、素早くこのような意思決定をするIKEAは、さすが今の時代の勢いのっている企業だと感じます。この決定が成功につながるかどうかは別にして、その姿勢は素晴らしいです。
 


検証方法は事前に決める必要アリ


とは言え、実際に「本棚の売上が減少するのか」は検証しなくてはなりません。この仮説が間違っているのなら、売り場の広さを元に戻すという意思決定を素早くしなくてはならないからです。
 
IKEAの本棚の売上では検証できません。
本棚の売り場を縮小するのですから、売上が落ちるのは当然です。ある種の自己成就予言が働くからです(自己成就予言について詳しく知りたい人は「願えば叶う」を実現するためにを参照のこと)。業界団体等の売上データ、もしそれがないのなら取引先メーカーからのヒアリング、ライバル店での売り場観察などで、本棚の売上を確認することになります。
 
ポイントは、売上変化の検証方法を事前に決めておくことです。ここをなし崩しにしてスタートすると、本棚売り場の縮小を提案した側は、その時その時で自分たちに都合のいいデータを集めてくることが可能になります。少し上手な人などは、プラスとマイナスのデータを両方持ってきて、一時判断停止にする高等テクニック(?)を使ったりします。いずれにせよ、検証の方法は事前に決めておいてこそ役に立つのです。
 
データは使い方のルールを先に決めておかないと、役立つものも役立たなくなります。
この点に注意してデータ活用されることをオススメします。

「願えば叶う」を実現するために


この記事の所要時間: 220秒 〜 320秒程度(1396文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
自己成就予言という言葉をご存知でしょうか。
これは願えば(=予言すれば)叶う(=成就する)を社会心理学的に説明した用語で、『社会心理学小辞典』(有斐閣)には以下のような説明があります(参考:はてなキーワード)。

個人が、意識的あるいは無意識的に、自己の予言や主観的期待に沿うような結果を生じさせる行動をとったために、自己の予言や期待通りの結果が出現する現象。または、そのような予言。

例えば、「血液型占いは正しい」という期待を持った時、A型で神経質な人とそうでない人の両方を見たにも関わらず、無意識的にA型で神経質な人のことだけを選択的に記憶していくことにより、「やはり、身近な人にもよく当てはまっているから、血液型占いは正しい」という期待通りの結果を自分で生み出してしまうという現象などがそれに当たる。

他にも、他者または自己自身に対するレッテル貼りの効果、実験場面における実験者効果、教師の期待のピグマリオン効果、役割の内面化、などが知られている。いずれの場合にも、本人には、自己の予言や仮説が客観的に確証されたようにみえる。

 
つまり、「絶対に成功する」と信じていれば充分な作業を行なうので成功し、「どうせ駄目だ」と思っていれば何もしないので失敗するという理論です。ポイントは願うことにより行動が変わるところです。「願えば → 叶う」ではただの精神論ですが、「願えば → 行動が変わるので → 叶う」ならばある程度の現実味が出てきます。
 
さて、これをビジネスにあてはめてみると、以下のようになります。
 

 新製品を「売れる」と信じる
  ↓
 マーケティング活動に充分な投資をする
  ↓
 新製品がヒットする(確率が上昇する)

 
もちろん「売れる」と信じて充分なマーケティング活動を行なうだけで新製品が売れるなら、何の苦労もありません。つまり、そんな訳はありません。それでも「売れない」と思っている新製品を出すよりはヒットする確率が高いのは間違いないように思います。
 
企業が新製品を発売する限り、誰かがその製品を「売れる」と信じているのは間違いありません。問題はその「売れる」がどの範囲でどの程度の合意を形成しているかです。企業内の意思決定の仕組みは、個別の企業、時期、意思決定の内容等で大きく異なります。その結果、例えば、商品開発部門は「売れる」と思っているけどマーケティング部門は信じていない、社長が「売れる」とゴリ押ししているので発売に漕ぎ着けたが現場の温度は低い等の事態になります。これではヒットの確率は大して上昇しません。

「願えば叶う」を実現するために必要なのは「売れる」に共感を集めることです。
商品開発部門の思いが、マーケティング部門や営業部門、そして経営陣に伝わり、それが小売店や消費者に伝播すれば新製品はヒットするでしょう。企業内で新製品を発売するためには手続きが必要になり、その手続きは多くの場合ルーチン化していて思いを伝えるようなものではありません。でも、だからこそ、手続きに終始するのではなく思いを伝えることが重要なのです。もちろん、思いだけでなく、信じられる理由がキーになります。
 
理想論のようですが、そんなことを考えました。