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“データ”ってなんだろう?


この記事の所要時間: 30秒 〜 40秒程度(1764文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
データ活用について議論をしていると、だんだん話が噛み合わなくなることがあります。“データ”という言葉の意味が広く、人や文脈によって言葉の使い方が大きく違うことが原因です。
 
“データ”は佐々木が企業を支援する際のキーワードの一つです。この言葉を無自覚に使うことでバズワード(=定義があやしい流行語)のようにしてしまっては、お互いに不幸な結果を招く事態になり兼ねません。
 
そこで、“データ”が何を意味するか、改めて考えてみました。
どうやら、“データ”という言葉には3つの使い方があるようです。
 


データ=事実、数値、電子データ


まずオーソドックスに辞書に掲載されている語義を確認します。
 
 『広辞苑 第三版』(新村出編/岩波書店/1983年) 

立論・計算の基礎となる既知の或いは認容された事実・数値。資料。与件。「実験―」

 
 『新潮現代国語辞典 第二版』(山田俊雄ほか編/新潮社/2000年) 

①推論の基礎となる情報を含んでいる事実・数値。与件。資料。「実験―」②コンピュータによる情報処理などのために、記号化・数値化した資料。「―通信」

 
 『新明解国語辞典 第四版』(山田忠雄主幹/三省堂/1989年) 

①推論の基礎となる事実。②ある事柄に関・する(して集めた)個個の事実を、広義の記号〔=数字・文字・符号・音声など〕で表現したもの。〔最も狭い意味では、数値で表現したものを指すが、広義では、参考となる資料や記事のことを言う。また、電子計算機の分野では、計算機が処理できる対象すべてを指す。従って、プログラム自体もデータであるが、狭義では除外する〕「ーを・集める(示す・並べる):万全のーをそろえる:実験ー:数値ー:文字―:―処理」

 
いかがでしょう。
『新明解』の注釈がかなり詳細で理解を助けてくれます。
これを中心に整理すると、大きくわけて以下の3つの使い方が想定できそうです。

●事実
 推論の基礎となる事実
●数値
 事実を数値で表現したもの
●電子データ
 事実や数値をコンピュータ処理のため記号にしたもの

 
この違いこそがデータ活用についての思惑の齟齬を生み出しています。
 


“データ”という言葉の使いわけ


例えば、会社で何か新しい事業をはじめるときに「データにあたれ」と言った場合、それは「事実」と「数値」の両方をあらわすでしょう。ところが、同じ新事業について考えていても「データを分析しろ」といった場合には、その対象は「数値」と「電子データ」、特に今どきは「電子データ」を意味することが多いようです。
 
では、会社が行なったイベントの様子を「データに残す」という場合だったらどうでしょう。「電子データ」のみを示している可能性も考えられます。つまり、画像や動画ということです。そのままでは「数値」になっていないので、何らかの方法で加工しない限りデータ分析等の対象には成り得ません。
 
もちろん、イベントの様子を「数値」としてデータに残すこともできます。時間別の来場者数をカウントしたり、来場者の名簿をつくったりする方法です。同じ「データに残す」でもいろいろあるわけです。
 


データ活用の目的は「事実」に基づくこと


佐々木が「企業でデータを活用しよう」というとき、“データ”として考えているのは第一に「事実」です。それは「事実」に基づいて考えることが重要だと考えているからです。もちろん、それを扱いやすくするために「数値」化したり、分析をするために「電子データ」化したりしますが、それらは手段に過ぎません。
 
一方、多くの方がデータ活用というと「電子データ」を思い浮かべるようです。「電子データ」は便利ですし、今の世の中で増えているのはこの意味のデータなので当然ですが、そこに疑問を感じます。「電子データ」ではわからない「事実」もたくさんあるからです。
 
こうやって考えるてみると、佐々木はもう少し自覚的に自分が考える“データ”の意味をアピールした方がいいのでしょう。
 
「事実」から考えたい、そう考えています。

「何をデータ化するか」から考えよう!


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1954文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
情報技術の進展により爆発的な量のデータが簡単に手に入るようになった現在、「データをいかに有効活用するか」が企業間競争の一つの争点となっています。特に、集めたデータから「より価値のある情報を導き出す方法」、すなわちデータマイニングやビッグデータなどのデータ分析技術が注目されているようです。
しかし、データ活用には見逃してはならないもっと大切なことがあります。
 


「何をデータ化するか」が出発点


データから価値ある情報をつくりたいのなら、その前に「何をデータ化するか」を考えることが重要です。いい加減なやり方でつくったデータや、解決したい課題にマッチしていないデータを出発点にしてしまったら、いくら高度なデータ分析を行なっても役立つ情報は出てこないからです。最近、この部分が欠けている議論が多いように思えてなりません。下図でいう「データ化」および「情報化」をしっかりわけて考え、「データ化」にもっと注力することが有益な情報を得るために必要だと考えます。
 

データ化と情報化

 
データを客観的な事実と捉える人がいます。そこに作為の入りようはないという考えです。確かに、正当な手続きを経て作成されたデータは客観的な事実に近いものです。しかし、いくら正しく作業をした客観的なデータだとしても、それは現実の一面しかあらわしていません。どの一面をデータ化するかの判断に主観が入っているのです。もちろん、主観が悪いというわけではありません。真に客観的なデータなど無いことを踏まえて、利用するデータを選ぶ際に慎重に価値あるデータを選んで欲しいのです。「何をデータ化するか」によって、データから導き出される情報の価値に差が付くのですから。
 


お客さまをどうやってグループ化するか


既存のお客さまをグループ化して、販売促進キャンペーンを行なう場合を考えてみます。
グループ化の基準として、例えば、性別や年齢などの属性情報、お客さま別の売上額や来店頻度などの購買履歴情報、アンケートで聞いたお店への忠誠度やクチコミ影響力などの行動特性情報が考えられます。どれもある程度は客観的なデータですが、どのデータをインプットとして使うかによって、出来あがるグループ(アウトプット)が変わるのは当然です。この場合、属性情報よりも購買履歴情報を、購買履歴情報よりも行動特性情報を元にキャンペーンを行なった方が成果は大きいと想像されます。
 
この例からも、目的に応じてどんなデータを集めるか/使うのかを考えることが重要だとおわかりいただけるのではないでしょうか。
 


データ化の3つの注意点


さて、どうやって慎重なデータ化をするかが問題になります。
しかし、これに正解はありません。ただ、以下の3点に注意することは間違いなく有効だと言えるでしょう。
 
 目の前にあるデータに飛びつかない 
誰もが陥る失敗は、既にあるデータからスタートしようとすることです。
データがあるのならそれを使いたくなるのは人情ですが、これをやってしまうと価値の低い情報しか出てこない可能性があります。やはり、自分が何をしたいかに合わせて、少し面倒でもデータを集める必要があるのです。
 
 データにしにくいものも取り込む 
現実に起きていることの中にも、データにしやすいものとデータにしにくいものがあります。上の例で言えば、お客さま別の売上額などは(会員カードさえあれば)比較的データ化しやすいものでしょう。一方で、お客さまの店への忠誠度などをデータ化するのは大変です。そうなると、ついつい売上額を使いたくなります。しかし、データにしにくいものでも自分の目的にあったものなら、どうにかデータにして用いるべきなのです。費用対効果の問題はありますが、この心掛けを忘れてはなりません。
 
 なるべく客観的になるようにする 
データを主観で選んでいいと言うと、自分に都合のいいデータばかりを集めることになりがちです。これは避けなければなりません。少しでも客観的になるよう、データを取捨選択する必要があります。
 


データ活用は意味付けが大事


最近のデータ活用についての議論は、データをどのように分析するかの技術論ばかりが中心で、そもそもどんなデータを使うのかの部分が弱いように見受けられます。特にソフトウェアメーカーやシステム会社の議論などがそうです。
 
しかし、データ活用で本当に大切なのは、元となるデータを間違えないことです。そのためには、一つ一つのデータの意味を考えることが必要になります。この点に注意して実りあるデータ活用を行なっていただければと考えます。

日本の子どもは貧困か? 〜指標の意味を考えよう!〜


この記事の所要時間: 250秒 〜 350秒程度(1700文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
昨日付の朝日新聞デジタルに子どもの貧困率、日本ワースト9位 先進35カ国中でという記事が掲載されました。「景気が悪い」「生活が苦しくなった」などと20年近く言い続けていても、「まだまだ日本は豊かだ」と思っている人が多いでしょうから、かなり刺激的なタイトルです。
 
しかし、記事をよく読んで少し調べてみると、この記事で何を言いたいのかがよくわからくなります。なぜなら、それは貧困率という指標が「貧困の程度をあらわしている」と素直に納得できないからです。その結果、日本の貧困率がワースト9位だと知っても、「だからどうしたの?」と思ってしまいます。
 

photo credit : eflon via photo pin cc

photo credit : eflon via photo pin cc

 
この記事の元になった報告書・Report Card 10-先進国の子どもの貧困(英語)は、国連児童基金(ユニセフ)が作成したものなので、指標の定義自体は明確です。ここで言う貧困率は正確には相対貧困率で、
 

「等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯員数の平方根で割った値)が、
 全国民の等価可処分所得の中央値の半分に満たない国民の割合」
                (参考:貧困率|ウイキペディア日本語版

 
を示します。等価可処分所得とか中央値とかわかり難い数値を使っていますが、細かな定義を無視して有り体に言えば、この指標は「所得が一般の半分以下の国民の比率」をあらわしています。この記事の場合は子どもの比率です。
 
問題は「所得が一般の半分以下」の低所得の人たちを貧困と呼ぶのが適切か否かです。
ここで言葉に対するイメージの違いが焦点になります。自分の語感で貧困といって思い浮かべるのは、教育費はもとより食べるものにも不自由するような状態です。すぐにでも手助けが必要な印象を持ちます。このため、先進国の相対的に低所得の人を貧困というのはしっくりきません。言葉に対するイメージは人により違うとはいえ、同じような印象を持つ人も多いのではないでしょうか。皆さんはいかがでしょう。
 
もちろん、相対的に困っている人がいて、それを助けようという考えはわかるのですが、この記事(や元の報告書)の場合、問題への注目を大きくするために話を必要以上に大きくしているように思えてなりません。故意にやっているかどうかは別にして、指標は受け手の共感を得られないと説得力が弱くなるので注意が必要です。
 
さて、この例から再認識するのは指標を取り扱うことの難しさです。指標の内容とラベルが不一致なことは案外多いのです。
 
まず、データをつくる側として考えます。数値を合成して指標を作成するときの名付けに注意が求められます。計算式をそのまま説明したような名称では長過ぎてよくわかりません(上記の例なら「等価可処分所得中央値半分以下割合」)。そこでその指標の意味付けを考えて象徴的な名称を付けることになるのですが、ここに飛躍が生まれます。おかしな名称をつけると、そのラベルだけが一人歩きして、後から面倒なことになり兼ねません。指標をつくる際には、ラベル付けを慎重にした上で、できる限り多くの機会に指標の数式や意味を説明するようにしなくてはならないと考えています。
 
一方、データを見る側としては、指標の算出方法にあたることが重要です。
相手に悪意があるかどうかは別にして、恣意的な指標名が付けられている例はたくさんあるからです。億劫がらず算出式にあたることが大切です。もし、指標の式等をみてもわからなかったら無駄にわかりにくくしている可能性があります。疑った方がいいでしょう。

いずれにせよ、指標に付けられた名称を鵜呑みにしないことが大切です。
データから適切な判断をするためにも、この点は誰にも心掛けて欲しいと考えています。

ニーズとは何か? 〜定義とバズワード対策〜


この記事の所要時間: 110秒 〜 210秒程度(862文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
マーケティングと言ってまず最初に頭に浮かぶ単語がニーズだという人は多いでしょう。顧客ニーズがマーケティングの出発点ですから、当たり前です。しかし、このニーズという単語は人によって使い方が違う厄介な単語でもあります。一つ間違えば、バズワード=「定義があやしい流行語」と思われても仕方ありません。
 
佐々木はニーズ、そして関連用語のウォンツ、需要を以下のように捉えています。

ニーズ、ウォンツ、需要
ファイルのダウンロードはココから

 
ニーズは欠乏状態そのもののこと(お腹が減った)、具体化されるとウォンツ(ハンバーガーが食べたい)、購買力が伴うと需要(ビッグマックにしよう)という構図です。「近代マーケティングの父」と称されるフィリップ・コトラーの定義そのものですね。
 
日ごろ話していると、これとは別の意味でニーズという言葉を使う人がいます。「我が社の製品◯◯のニーズが伸びている」といった具合です。当然、そんなときにいちいち言葉の定義を争ったりはしません。「この人は、需要のことをニーズと言っているんだな」と考えながら話を合わせます。話し相手は、今度はウォンツの意味でニーズという言葉を使ったりしますが、そのときはそのときで適宜対処します。
 
定義が曖昧な言葉については、このような対処をできることが重要だと考えています。コトラーが「現代マーケティングの第一人者」だからといって、彼の定義が絶対的な正解だということはありません。どんな定義でもいいのです。しっかり体系化された定義を知っていることで、違った用語の使い方をする人がいても対処が可能なことが大切です。言い換えれば、自分なりの語釈を持っていないと相手の言葉の使い方のブレに巻き込まれ、話が進まない事態に陥り兼ねません。

バズワード対策の一つの有効な対策として、自分なりの定義を持つことが役立ちます。それが正解か不正解は関係ありません。しっかり体系立っていて矛盾のない定義を持つことが重要だと考えています。

バズワードに気を付けろ!


この記事の所要時間: 20秒 〜 30秒程度(1272文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
皆さん、バズワードという言葉をご存知でしょうか。
パスワード(password)と空目しそうですが、バズワード(buzzword)です。簡単に言えば「定義があやしい流行語」のことで、多くの人があまり意味がわからずに何となく使っている言葉を示します。バズワードという言葉を聞いたことが無かった人でも、この説明を読めば「そういう言葉ってあるよな」と思われるのではないでしょうか。
 
ウィキペディア日本語版では、以下のように紹介されています。

バズワード(英: buzzword)とは、一見、専門用語のようにみえるが、具体性がなく明確な合意や定義のない用語のことである。一方、最初は明確に定義されている専門用語であっても、流行語となり本来の意味から逸脱して使われるようになると、バズワードと見なされる。このようにバズワードという用語は定義が曖昧な用語なので、「バズワード自体がバズワードである」とする説もある。

 
「バズワード自体がバズワードである」という悩ましい問題はありますが、「定義があやしい流行語」にバズワードというラベルを貼ることで、その使用に注意を促しやすくなる効果は大きいと考えています。
 
さて、ビジネスの世界はバズワードだらけです。
古くはイノベーション、リストラクチャリング、グローバリゼーション、ビジネスモデル、最近ではクラウド化、ビッグデータなど、いくらでも挙げることができます。ビジネスの世界は動きが速い上、そのバズワードを使って儲けようという企業がたくさんいるので、かなりややこしくなります。それぞれの企業や個人で定義が違うのはいいのですが、自分と自分の顧客で言葉の定義が違うと不幸な結果を招きます。この点には注意が必要でしょう。

たとえば自分の場合、「イノベーションを目指しているのでアンケート調査は不要」と言われることがあります。真に新しいものは消費者の想像を超えるため、消費者にアンケートをしても出てこないという意見です。ウォークマンやiPhoneの類ですね。これはその通りだと思います。ただし、その発言をした人が行なおうとしているイノベーションがどんなイノベーションなのかは見極めなければいけません。馬車を蒸気機関に変えるような真のイノベーションを目指しているとは限らないからです。もし、その人が商品の大枠を変えずに行なう改良や改善をイノベーションと言っているならば、アンケート調査の実施をオススメした方がいいことになります。

重要なのは、ビジネスの現場で我彼の言葉の定義の違いに気付いたら、その違いを明らかにしてそれをすり合わせることです。言葉の定義を議論することは①理屈っぽく、②直接的な見返りがなく、③正誤の問題になると相手のプライドを傷つけかねないので、避ける人が多いように思います。でも、重要な言葉に認識の違いがあって得はありません。
 
恐れず、青臭く、この違いに挑むことが重要です。特にバズワードについては。