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8Kテレビの妄想 潜在需要は言ったもん勝ち!?


この記事の所要時間: 510秒 〜 610秒程度(2817文字)


3Dテレビと4Kテレビに呆れていたのも束の間。今度は8Kテレビが開発されるらしい。
 

“8K” 7年後の本放送を目指す|NHKニュース
放送サービスの高度化を議論する総務省の検討会は、今のハイビジョンより画質が鮮明なテレビ放送の実施に向けた工程表をまとめ、NHKが中心となって開発した8K=スーパーハイビジョンは、7年後の2020年の本放送を目指すことになりました。

検討会には、放送局や電機メーカーの幹部らが参加し、今のハイビジョンより画質が鮮明な4Kと8Kのテレビ放送を行う推進組織が今月設立されたことを踏まえ、放送の実施に向けた工程表をまとめました。
工程表では、今のハイビジョンの4倍の画素数を持つ4Kの試験放送を、ブラジルでサッカーのワールドカップが開かれる来年、世界に先駆けて衛星放送で開始することを目指すとしています。
そして、NHKが中心となって開発した画素数が16倍の8K=スーパーハイビジョンは、リオ・オリンピックが開かれる2016年に試験放送を開始したうえで、東京オリンピックの実現を念頭に、2020年の本放送を目指すとしています。
また、検討会では、放送とインターネットを高度に連携させたスマートテレビについて、4K・8Kの放送と一体的に実用化することが望ましいとして、NHKが開発を進めるハイブリッドキャストなどの技術規格を早急に検討する方針をまとめました。
検討会に出席した柴山総務副大臣は、「今回の成果は、世界のマーケットを先導していくという皆さんの意欲の表れであり、政府の情報通信技術戦略にもきちんと反映させたい」と述べました。

 
悪い冗談のようだが、どうやら本気だ。
以前、4Kテレビの絶望 なぜ同じ失敗を繰り返す?でも書いた通り、画質が良くなることで満足が増すコンテンツは限られている。放送されるテレビ番組の内容自体が変わらないのなら、いくら画質が良くなってもテレビはおもしろくならない。8Kテレビは明らかな過剰品質であり、「便所の100ワット」と言われるのが関の山だろう。無駄の象徴という訳だ。
 
さて、先の記事では企業内の人間心理に着目して、このような過剰品質による失敗が繰り返される理由を説明した。①ハード面の品質向上はサービス面での進歩よりも簡単に見え、②数値を使って社内を説得しやすく、③せっかく開発できた技術を商品化しないと「もったいない」と考えるため、過剰品質の商品が発売されやすいという見立てだ。やや悲観的過ぎるかも知れないが、組織の意思決定はそんなに合理的なものではない。人間心理の機微が影響して、おかしな方向に進んでしまうことは多い。
 
一方で、これら暴走をしてしまう企業は、データを活用した検証を行なわないのかという疑問もあるだろう。もちろん、アンケート調査等を行なった上で見込みがあると判断しているのだろうが、そのやり方に問題がある。今回は、これについて解説しよう。
 

photo credit : Artiii via photopin cc

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トンデモ仮説にダマされない「懐疑の技術」


この記事の所要時間: 420秒 〜 520秒程度(2396文字)


企業は目標を達成するためにさまざまな施策を実行する。
このとき、目標と施策の因果は仮説に過ぎない。つまり、どれもやってみなければわからないのだ。「製品の機能を向上させれば、消費者が飛び付く」も、「広告出稿を増やせば、売れる」も、「SNSを積極活用すれば、商品のファンができる」も、あくまで「そう考えることができる」だけだ。「◯◯すれば、××になる」と言うロジックは、自社の活動による他者や他社の変化を想定している限り、仮説でしかない。たとえ自社の活動をコントロールできたとしても、その波及効果はコントロールできないのだ。
 
もちろん、事実やデータを積み重ねることで施策=仮説に「もっともらしさ」を生み出すことは可能だし、これを怠ってはいけない。しかし、これらの検証作業には限界があり、どの施策を採用するか、どの施策に多くの予算を配分するかは、最終的に「エイヤー」の判断にならざるを得ない。企業内で立場のある人間が判断を下す際には、もっともらしい理由が述べられるが、あんなのただの後付けの作文だ。厳密な議論には程遠い。
 
それでも、企業は仮説に過ぎない施策を採用することになる。何かを選ばなければ前に進めないし、そもそも確実に成功する施策などわからないからだ。実際のビジネスにおける施策選びでは、事実やデータを使うことで少しでも意思決定の精度を上げることしかできる。言い換えれば、それしかできないのだ。
 
仮説の外れることがあっても、他社と較べてその確率が低ければ、いつかその差が業績にあらわれる。呑気な話のようだが、こう考える方が現実的だ。この世に魔法使いはいないのだから、仕方がない。
 
さて、そうは言っても、世の中にはトンデモない商品や戦略が満ち溢れている。そもそも明後日の方を向いているような、正気の沙汰とは思えない企業活動は後を絶たない。多くの場合、なぜそんな仮説を採用したのか、端から見るとわけがわからないが、企業の中では諒解が取れているのだから驚いていしまう。
 
他人事ではない。
どんな会社でも、トンデモない仮説が採用され、顧客や社員や取引先や株主が酷い目に合う可能性はある。故意か過失かは別にして、トンデモ仮説が「もっともらしさ」の仮面を付けて登場したなら、それを見抜かなければ面倒なことになるのだ。今回は、これに巻き込まれないために必要な「懐疑の技術」を紹介しよう。
 

photo credit : gato-gato-gato via photopin cc

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大新聞が報じる「奇妙で悲しい視聴率の物語」


この記事の所要時間: 430秒 〜 530秒程度(2520文字)


インターネット版の朝日新聞に「ドラマは録画」くっきり 再生率が視聴率上回る例もという記事が掲載された。
 
簡単にまとめてしまえば、
 ●ドラマを録画再生する人は多い。
 ●現在では視聴率の公表数値が視聴実態と離れつつある。
 ●テレビ視聴は録画再生を含めて考えた方が視聴実態を反映する。
という主張だ。「最近テレビ視聴率が下がっていると言われるが、録画で見ている人も多いのでメディアとしてのパワーは落ちていない」というメッセージも暗にあるように思われる。
 
さて、この結論の一部については賛同するものの、この記事の構成はあまりに醜い。
データに基づいているふりをしているが、そのデータがそもそも出鱈目なのだ。データを元にして議論を組み立てることは素晴らしいが、元のデータがいい加減なものでは一切価値はない。無根拠の主張と何ら変わりはないと言えるだろう。騙される人が多い分、むしろ害悪だ。
 
今回は、この記事の問題点について説明しよう。
 

photo credit : HAMACHI! via photopin cc

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「ものづくり」を成功させるには・・・


この記事の所要時間: 450秒 〜 550秒程度(2626文字)


最近、ものづくりという言葉をよく見掛ける。
日本のものづくりは素晴らしく、これを復活させることで日本を立て直そうという文脈が多い。
 
雇用不安、産業空洞化など現在の日本が抱える問題を解決する方策として、ものづくりに期待が集まるのは当然だろう。国内の製造業が元気になれば、たくさんの労働者が必要になり、多くの富が生み出される/分配されるという考え方は、長いこと広く信じられてきたからだ。
 
とは言え、ものづくり偏重の考えに強烈な違和感を覚えるのも間違いない。
過去のものづくりでの成功を引き合いに、今でもものづくりさえすれば成功できるという単純化された議論を見受けるが、本当だろうか。多くの場合、「日本の技術力が優れている」ことを論拠とするが、にわかに信じ難いものがある。ものづくりを神話化して、思考停止に陥っているように見えるのだ。【ものづくり → 素晴らしい】の安易なカテゴリー適用法に思えてならない(カテゴリー適用法について詳しく知りたい人はカテゴリー適用法に気をつけろ!を参照のこと)。
 
日本の技術力が高いことは間違いないにしても、今の時代、他国の技術力も充分高い。最先端の部分を別にすれば、日本ほどの高い技術力がなくてもつくれるものはたくさんある。そして、このような労働集約型の産業では賃金の安い新興国にかなわない。
 
今後、日本がものづくりで再興するためには、過去の栄光を捨てた方が良いだろう。
少しでも品質の良いものを、少しでも安くつくるというアプローチを今の日本でやっても、成功は難しい。賃金の高い日本では、付加価値の高い製品をつくる必要があるのだ。ただし、付加価値が高いことと品質が高いこととは必ずしもイコールではない。そう、ここがポイントになる。
 
ものづくりという言葉からは製品志向が連想される。
何せ「もの」づくりだ。そこに顧客の姿は見えず、「もの」の方に焦点があてられている。要は、「良いものをつくれば買ってくれる」という考え方であり、残念ながらこれでは成功は覚束ないだろう。
 
高い付加価値を実現するためには、「もの」そのものについてだけでなく、その「もの」が「顧客をいかに満足させるか」を考えなくてはいけない。つまり、顧客志向だ。しかし、製品志向に陥ると何よりも「良いもの」をつくることが優先されてしまう。そして、ものづくりという言葉にはその危険な薫りがかなり濃厚に漂っている。ものづくりの文脈では、本来手段である筈のものづくりが目的化されてしまうのだ。
 
さて、ものづくりの危険から逃れるためにも、製品志向の企業が新製品開発で気を付けなくてはいけないことを考えてみよう。
 

photo credit : Joe Branco via photopin cc

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キンドルをメカニズム解明法で占うと・・・


この記事の所要時間: 420秒 〜 520秒程度(2451文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
ここまで3回にわたり、一橋大学大学院の沼上幹教授が提示する「経営戦略の3つの思考法」、すなわちカテゴリー適用法要因列挙法メカニズム解明法を紹介してきました。このフレームの素晴らしさを少しでも理解していただけるようできる限りわかりやすく書いたつもりですが、それぞれの思考法を個別に書いたこともあり、その全体像が伝わりにくかったように思います。
 
そこで、今回はある一つのテーマについて、これら3つの思考法を使って考えてみたいと思います。テーマは、日本市場参入が発表されたばかりの米アマゾン・ドット・コムの電子書籍端末 キンドル。このビジネスが成功するかどうかを考えてみましょう。
 

photo credit : skyfish81 via photopin cc

 
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