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安全神話とクラウドと代替案必須の功罪


この記事の所要時間: 130秒 〜 230秒程度(978文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 


安全神話崩壊、次に何を疑うか?


昨夏、電力安定供給の大前提が崩れ、多くの企業がその対応に追われました。
自分も含めて、「絶対に安全なシステムなどない」という極めて当たり前のことを思い知らされたわけです。
 
数年間、数十年間大きなトラブルなく動作しているインフラは、あって当然の空気のような存在です。責任ある企業のリスク対策として、これらインフラに対する「絶対に安全」という過信、すなわち安全神話を疑うことが求められているのでしょうが、それらすべてを片っ端から疑い、万全の策を用意することは現実的でないでしょう。予算にも人員にも制限があります。実務では、トラブルが起きる可能性とトラブルが起きた場合の影響を考えて、「次に何を疑うのか?」の優先順位を付けることが求められます。
 


もしもクラウドが壊れたら・・・


佐々木がまず最初に疑うことをオススメするのはインターネットのインフラ、特にクラウドです。新しいシステムが多いためトラブルが起きる可能性は高く、一方で一極集中による効率化を目指すためにトラブル発生の影響は計り知れないからです。
 
この際、「インターネット大手の◯◯社がやっているサービスだから大丈夫」は成立しません。それではまさに安全神話です。想定外のトラブルは起きるのです。サーバー側が壊れることもあるでしょうし、ネットワークが壊れることもあります。クラウドを利用している企業は、そこにトラブルが起きる可能性を想定しておく必要があります。
 


代替案なしの指摘が気付きになる


さて、ビジネスにおいては、何らかの批判なり指摘なりをする場合、解決のための代替案を示さないのはルール違反と見做されます。「クラウドが危ない」と指摘するなら、その代替案を出せというわけです。当事者意識のない評論家的な批判を避けるためのルールなのですが、これが素朴で重要な指摘を妨げているように思えてなりません。
 
さまざまな分野で専門化が進む現在、部外者が代替案を含めた批判・指摘をすることはハードルが高くなっています。一方で、専門家は視野狭窄に陥りやすく、自身の技術等に過信を抱きがちです。時には、代替案なしの指摘を認めることが、重要な気付きを見逃さないために必要なのではないでしょうか。

先手を取って議論を制す!


この記事の所要時間: 220秒 〜 320秒程度(1396文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 


誰が論点を決めるのか?


あるテーマについて話をしているとき、「その論点は本当に重要なのか」、「もっと大切な論点はないのか」と疑問に思うことは誰でもあるでしょう。話の流れで一つの論点に話題が集中してしまうと、その論点が本当に重要なのかはあまり考えず議論が白熱してしまうものです。マーケティング戦略についての会議で商品自体の出来不出来は無視して広告について話しをしていたり、人事制度についての打ち合わせが有給休暇取得率の向上策でまとまったり、企業にいればそんなことがいくらでもあります。
 
重要ではない論点についていくら素晴らしい結論を導いても、残念ながらその効果は限定的です。重要な論点を選んで議論することは、その論点についてどのような結論を出すかよりも大切だとさえ考えられます。
 

photo credit : photo.maru via photo pin cc

photo credit : photo.maru via photo pin cc

 
そんなことを考えていて思い出すのがアジェンダ設定効果という考え方です。元々は初期のマスコミ研究の用語で、メディアは「このように考えなくてはならない」(議論の結論)よりも「何について考えなくてはならないか」(議論の論点)に影響を与えるという仮説です。佐々木にとってメディア云々はどうでもいいのですが、ビジネスの場や日常生活においても「誰が論点を決めるのか」、そして「どうやれば自分が論点を決められるのか」を常に意識することは、極めて有効だと考えています。
 


パソコンは速さで選ぶ?画面のキレイさで選ぶ?


アジェンダ設定効果のビジネスの場での応用として、商品の選考基準を企業側が支配してしまう方法があります。例えば、パソコンを選ぶときに重視すべき点は、計算の速さ、記憶容量の大きさ、(ノートパソコンの)重さ、見掛けの格好よさ、価格など、長年の間にいろいろと論点が推移してきました。今、AppleはRetinaディスプレイでノートパソコンの画面のキレイさを論点にしようと仕掛けています。もちろんパソコンの技術進化や社会の変化も影響していますが、特定の企業が仕掛けて論点が変わったことがあるのもおわかりでしょう。自社が得意な要素を重要な論点とする効果は絶大です。
 
パソコンの例は相当に大掛かりですが、日常的なビジネスでも使うことは可能です。営業先に持っていく資料を工夫して、自社が得意な要素を重要な論点とするだけでも、効果は期待できます。
 


 何ごとも先手必勝


ビジネスの場で一番簡単にできるのは、議論で先手を取ることでしょう。何かについて話をするとき、まず最初に口を開いて論点を決めてしまうのです。結論がどうなるにせよ、自分が重要だと考えている論点で話し合われた結果はそうでないものより好ましいのは間違いありません。
 
ビジネスでの駆け引きを勝ち負けで考えるのはあまり好きではないのですが、「先手必勝」だけは心掛けています。後から何を言っても論点が決まった後では遅いからです。
 
先手による論点支配を意識することは積極性にもつながります。
皆さんも試してみてはいかがでしょうか。

企業経営はシステム思考で!


この記事の所要時間: 230秒 〜 330秒程度(1505文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
最近、流行の新しいビジネススキルを追うことより、基礎となる古い書物を読み直すことが楽しくなってきています。以前から、その時代にたまたまフィットしただけかもしれない新しいスキルには懐疑的で、長い歴史の荒波を乗り越えた(?)古めかしい理論を重視する傾向はありましたが、実際に頻繁に読み返すようになったのはここ数年のことです。今回取り上げる『一般システム思考入門』(ジェラルド・M・ワインバーグ/紀伊國屋書店)は、その中でも極め付けの一冊です。
 


『一般システム思考入門』はモノの見方を刺激する


『一般システム思考入門』は、一言であらわすならモノの見方についての本です。
この本では、固有の学問は経済学も物理学も芸術も一つのモノの見方に過ぎず、実際の世の中に存在する複雑な問題に対処するには視野が狭いと考えます。そして、一般システム思考は、全体を俯瞰するようなモノの見方をすることで、これら固有の学問を統合して実際の問題解決に役立たせることを目指します。
 
現実の問題に対処するために、さまざまな知識や経験を応用することは誰もが常日ごろ行なっていることでしょう。難しい本など読まなくても、固有学問だけでは役立たないことが多いのはわかっています。でも、それがために現実の問題への対処に悩みはつきものです。この本を読むと、その悩みの幾つかが解決され、それと同時にもっと深い幾つもの悩みを抱え込むことになります。しかし、モノの見方についての刺激に満ちた議論は、読んで損になるようなものではありません。何度も繰り返して読み、その都度新しい知見を得ることで、モノを考えるセンスが少しずつ向上していることが実感できるからです。
 


科学も統計も万能ではない


知見満載のこの本の中でも特に本質的な部分である、解析的なアプローチ、統計的なアプローチ、システム的なアプローチの違いについての議論を取り上げましょう。
 
ワインバーグ曰く、解析的(科学的)アプローチはモデル化等を通じた省略や単純化によって成立するものなので、現実にある複雑な問題には適していません。一方、統計的アプローチは複雑なものを扱えますが、ランダムを前提としているためその解は構造的ではありません。唯一、複雑で構造的なものを扱えるのがシステム的なアプローチだと考えます。
 
まあ、こう書くと難しいのですが、要は科学的アプローチも、統計的アプローチも万能ではないということです。向き不向きがあります。「そんなことはわかっている」と言うでしょうが、現実の複雑な問題に対して、科学や統計だけを振り回して失敗するというのはよくあることです。
 
「ビッグデータを使って統計的アプローチをすれば、現実の問題を解決できる」などというのも、統計万能の錯覚ではないでしょうか。分析のモデルに構造的なものを組み込んでいるようですが、数学的に考えた構造と現実の構造では複雑さが違います。このような問題も、3つのアプローチの違いを考えることで、自ずといろいろわかってくるように思っています。
 


システム思考で考えよう!


さて、実際の企業経営はまさに複雑怪奇なものです。科学的アプローチや統計的アプローチで敵う相手ではありません。システム思考で考えることが必要です。
 
システム思考は簡単なノウハウの形で身につけることができません。それでも、システム思考についての諸々を知ることはセンスを磨くのに役立ちます。
興味を持った方は、『一般システム思考入門』を一読してみてはいかがでしょうか。

共通知識 ― 全員が知っていることを、皆が知っていると、誰もが知っている


この記事の所要時間: 210秒 〜 310秒程度(1364文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 


情報共有のレベルの違い


【状態1】
事実XをAさんとBさんが知っている

【状態2】
「事実XをAさんとBさんが知っている」ことを、AさんもBさんも知っている

【状態3】
「「事実XをAさんとBさんが知っている」ことを、AさんもBさんも知っている」ことを、AさんもBさんも知っている

 
言葉にするとわかりにくいですが、このような情報共有のレベルの違いがAさんやBさんの行動を変えるという理論があります。
 


知っていることを、知っていると・・・


例えば、事実Xを「独裁者が行なう政治の間違い」だとしましょう。
 
一人一人の国民がそれに気づいているだけ(【状態1】)では何も起きません。一人で立ち向かっても敵う相手ではないからです。国民Aが「国民全員が独裁者の間違いを知っている」(事実Y)と気付いても(【状態2】)同じことです。事実Yを知っているのが国民A一人なら勝ち目はないからです。隣人Bも事実Yを知っていたとしても、そのことを国民Aが知らなければ同調は起きません。それが、「国民全員が独裁者の間違いを知っている」ことを国民全員が知るようになる(【状態3】)と話はまったく変わります。それぞれの同調が容易になり、行動に結び付くのです。
 

photo credit : woodleywonderworks via photo pin cc

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共通知識を仕掛けよう!


これは『儀式は何の役に立つか』(マイケル・S‐Y・チウェ/新曜社)に書かれている共通知識の考え方を自分なりに説明したものです。アラブの春でのTwitterやFacebookの影響、昨日の大飯原発再稼働反対デモなどのニュースを見ると、このモノの見方の重要性を改めて認識します。そこで、自分の理解ではあまりうまく説明できないのですが、取り上げてみました。興味を持たれた方は、ぜひ同書にあたってください。
 
さて、会社の中でも同じような構図はよく見られます。
「変えた方がいい」と誰もが思っている会社の戦略、取扱商品、作業方法があっても、その情報を広く共有できない限り変革は起こりません。「言っても無駄」で終わってしまいます。また、経営者の中にはボトムアップの変革を好まない人もおり、こういう動きの芽を摘み取ることもあるようです。
 
しかし、本当に会社のためを思うなら、共通知識が上手く働くように仕掛けたほうが得策です。有能な経営者なら、状態を打破するために、共通知識を積極的に活用するでしょう。少人数のグループで品質改善のサークルをつくったり、部署間の連携を強めたり、無礼講の懇親会を開いたりなどもこれを促します。しかし、どれも特効薬にはならないようです。もちろん、佐々木だけが特効薬を知っているわけはありません。
 
ただ、この情報共有のレベルの違いを常に意識することが成功のための第一歩だということは知っています。少しややこしいですが、この発想で考えることを心掛けると良いのではないでしょうか。

独立診断士は名刺交換も本気です


この記事の所要時間: 220秒 〜 320秒程度(1451文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
独立開業してから名刺交換の大切さを痛感しています。
 


会社員とは名刺交換の意味付けが違う


会社に勤めているときは、半ば儀礼的に名刺交換をしていました。
特にお互い知っている会社同士の場合などは、所属部署、肩書き、連絡先を知らせることが主な目的です。会社の名刺に勝手な文言を付け加えられないというのもありますが、名刺交換で自己アピールするなどあまり考えませんでした。アピールは、相手と関係をつくる中で行なうことと考えていて、名刺交換とはほとんど結び付いていなかったのです。いま思えば、会社という大きなバックボーンに支えられて行なっていた名刺交換だったのでしょう。
 
ところが、独立して仕事をするようになると状況がまるで違います。
名刺交換は自己アピールのための手段です。「自分がどこの誰で何ができるのか」をゼロから説明して、興味を持ってもらうことが必要になります。独立診断士にとっては、名刺交換もある種のプレゼンテーションなのです。
 

photo credit : mattedesign via photo pin cc

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名刺は受け取る人の立場でつくる


名刺を自己アピールのための道具と考えると、名刺に少しでも多くの情報を詰め込みたくなります。しかし、これはよく考えて行なわなければなりません。マーケッターたるもの常に消費者(この場合は名刺を受け取る人)の立場で考えるからです。名刺の受け取り手は、自己アピールのための自己紹介がたくさん書いてある名刺をもらってベネフィット(便益)を感じるでしょうか。話の接ぎ穂にはなるでしょうが、あまり多いとどこから話して良いのかわかりません。きっと、いくつかのキーワードを知らせた方が相手のベネフィットは高まります。名刺に書いてある情報量が多過ぎて、もらった人が目をキョロキョロさせて迷っている場面さえよく見ます。これではいけません。
 
情報をデザインして、①興味をひく切っ掛けにしたい端的な情報と、②それらに興味を持った人に読んで欲しい情報を整理してレイアウトする必要があるのです。簡単なことではありませんが、このデザインをしっかりしたいと考えるようになっています。
 


名刺交換も量より質


独立開業した当初は、一人でも多くの人と名刺交換しようと考えていたのですが、最近はコレも変わってきています。大勢集まったところで大量に名刺を配っても相手はあまり覚えていないからです。近ごろでは、たくさん人がいる場所でも少人数に対してしっかり話をして名刺を渡すことを心掛けています。名刺交換の量を目指しても、得られるものは限られると考えているからです。
 


何ごとも一から考え直す


さて、いろいろ書きましたが、独立診断士が名刺交換一つをとっても本気で考えていること、わかっていただけたでしょうか。
 
会社員と独立診断士では、同じビジネスという土俵で仕事をしていても、モノの捉え方が大きく異なります。このとき、会社勤めで身に付けた常識をが邪魔になることがあります。極めて矮小な例ですが、今回取り上げた名刺交換などもこれにあてはまるでしょう。
 
独立したからには、何ごとも一から位置付けを考え直す必要がある。
そう考えています。