タグ : 商品コンセプト

夏の恵方巻とイベントのインフレーション


この記事の所要時間: 310秒 〜 410秒程度(1798文字)


今年から、セブンイレブンが夏の恵方巻を売りはじめた。
あまり馴染みがない立秋前の節分を持ちだしてまで恵方巻を売ろうという企画で、初年度は100万本の販売を目指すとのこと。2月の節分に恵方巻を販売するようになって約15年。恵方巻の一定の浸透を受けて、次の一手を打ったというところだろうか(参考:セブンイレブンが「夏の恵方巻」を初めて発売 8月4-6日|MSN産経ニュース)。
 
小売店などがあの手この手を使って、消費を刺激するのは当然のことだ。企業や業界団体が無理矢理イベントをつくって何かを売ろうとしても、消費者が買うも買わないも自由なのだから文句を付ける筋合いではない。企業が「売れる仕組みづくり」を目指してさまざまな試行錯誤を行なう姿は好ましくさえ思う。
 
とは言え、最近のこの手のイベントには少し趣の違った居心地の悪さを覚える。企業が仕掛けるイベントに、消費者が無理して乗っているのように見えるのだ。そして、無理にでも乗ってくる消費者に対して、企業はイベントを仕掛け続ける。この持ちつ持たれつの関係は、かなり歪んでいるように思えてならない。
 

Photo credit : Charley Lhasa / Foter / CC BY-NC-SA Photo credit : Charley Lhasa / Foter / CC BY-NC-SA

 
続きを読む

セブンイレブンのコーヒーはどう買うの?


この記事の所要時間: 440秒 〜 540秒程度(2543文字)


セブンイレブンの100円コーヒーが売れているらしい。
先月、セブン―イレブン・ジャパンはこの「いれたてコーヒー」=「セブンカフェ」の販売目標を4割引き上げた。年間4億5000万杯、売上高にして450億~480億円。もはや数字が大き過ぎて、どのくらい凄いのかよくわからない。
 
実感できるレベルに噛み砕くと、450億円を単純に1万5千店で割って1店あたり300万円、1日に約8,000円。セブンイレブンの1店1日あたりの売上高は70万円弱なので、1%程度の売上増加を見込めることになる。最強コンビニが、こつこつ地道に売上を積み上げていっている感じだろうか(参考:100円コーヒー、販売4割増 セブンイレブンが計画上方修正|日本経済新聞)。
 
以前、コンビニやファーストフード店のコーヒー事業について、カフェ参入に本格コーヒーは必要ない!という記事を書いた。簡単にまとめると、カフェの競争軸は「快適さ」であり、これを充たせなければ「本格コーヒー」であっても新規参入は難しいだろうという内容だ。しかし、この見立てはかなりの見当違いだった。セブンイレブンの狙いは「カフェ」ではなく、「いつでもどこでも簡単に買えるコーヒー」にあったようなのだ。まさに「コンビニエンスなコーヒー」と言えよう。
 
だからこそ気になるのが「買い方がわからない」という指摘だ。
コーヒーをつくる機械はレジの横にあり、店員からは手の届かないところに位置している。そこにカップなどが置いてあるが、精算前に自分で勝手につくるのはおかしいし、カップだけをレジに持っていくのはどこか間抜けだ。レジで注文するにしても、そこにカップはない訳で、そのあと何がどうなるかわからない。「買い方がわからない」という声は自分のまわりでも数人から耳にしたし、2ちゃんねるでも盛り上がっている(参考:セブンのコーヒーの作り方分からないヤツwwww|飲食速報)。
 
もちろん、いい年した大人なのだから、欲しいなら聞くなり、試すなりすればいいのはわかっている。しかし、それが面倒くさい、億劫なのもまた確かだ。どうしても欲しい商品ならいざ知らず、「ちょっと飲んでみようかな」くらいだとこの「買いにくい」障壁は案外大きい。「また今度にしよう」、「缶コーヒーでいいや」となってしまう。
 
たとえ魅力的な商品でも、「買いにくい」が理由で売れないものは多い。
言い換えれば、「買いにくい」さえ取り除けば売れる商品もたくさんあることになる。どうして、こんな不幸な事態になってしまうのだろうか。
 

photo credit : ~*Leah*~ via photopin cc

photo credit : ~*Leah*~ via photopin cc

 
続きを読む

8Kテレビの妄想 潜在需要は言ったもん勝ち!?


この記事の所要時間: 510秒 〜 610秒程度(2817文字)


3Dテレビと4Kテレビに呆れていたのも束の間。今度は8Kテレビが開発されるらしい。
 

“8K” 7年後の本放送を目指す|NHKニュース
放送サービスの高度化を議論する総務省の検討会は、今のハイビジョンより画質が鮮明なテレビ放送の実施に向けた工程表をまとめ、NHKが中心となって開発した8K=スーパーハイビジョンは、7年後の2020年の本放送を目指すことになりました。

検討会には、放送局や電機メーカーの幹部らが参加し、今のハイビジョンより画質が鮮明な4Kと8Kのテレビ放送を行う推進組織が今月設立されたことを踏まえ、放送の実施に向けた工程表をまとめました。
工程表では、今のハイビジョンの4倍の画素数を持つ4Kの試験放送を、ブラジルでサッカーのワールドカップが開かれる来年、世界に先駆けて衛星放送で開始することを目指すとしています。
そして、NHKが中心となって開発した画素数が16倍の8K=スーパーハイビジョンは、リオ・オリンピックが開かれる2016年に試験放送を開始したうえで、東京オリンピックの実現を念頭に、2020年の本放送を目指すとしています。
また、検討会では、放送とインターネットを高度に連携させたスマートテレビについて、4K・8Kの放送と一体的に実用化することが望ましいとして、NHKが開発を進めるハイブリッドキャストなどの技術規格を早急に検討する方針をまとめました。
検討会に出席した柴山総務副大臣は、「今回の成果は、世界のマーケットを先導していくという皆さんの意欲の表れであり、政府の情報通信技術戦略にもきちんと反映させたい」と述べました。

 
悪い冗談のようだが、どうやら本気だ。
以前、4Kテレビの絶望 なぜ同じ失敗を繰り返す?でも書いた通り、画質が良くなることで満足が増すコンテンツは限られている。放送されるテレビ番組の内容自体が変わらないのなら、いくら画質が良くなってもテレビはおもしろくならない。8Kテレビは明らかな過剰品質であり、「便所の100ワット」と言われるのが関の山だろう。無駄の象徴という訳だ。
 
さて、先の記事では企業内の人間心理に着目して、このような過剰品質による失敗が繰り返される理由を説明した。①ハード面の品質向上はサービス面での進歩よりも簡単に見え、②数値を使って社内を説得しやすく、③せっかく開発できた技術を商品化しないと「もったいない」と考えるため、過剰品質の商品が発売されやすいという見立てだ。やや悲観的過ぎるかも知れないが、組織の意思決定はそんなに合理的なものではない。人間心理の機微が影響して、おかしな方向に進んでしまうことは多い。
 
一方で、これら暴走をしてしまう企業は、データを活用した検証を行なわないのかという疑問もあるだろう。もちろん、アンケート調査等を行なった上で見込みがあると判断しているのだろうが、そのやり方に問題がある。今回は、これについて解説しよう。
 

photo credit : Artiii via photopin cc

photo credit : Artiii via photopin cc

 
続きを読む

3Dプリンタ、キラーコンテンツを誰がつくる?


この記事の所要時間: 330秒 〜 430秒程度(1974文字)


たった3万5千円(347ドル)で手に入る3Dプリンタが登場するかも知れない(参考:わずか3万5千円で購入できる3Dプリンターが登場|ギズモード・ジャパン)。まだ資金調達準備中の段階とはいえ、新しもの好きの食指を充分に動かすニュースだろう。万が一この会社が失敗したとしても、別の会社が低価格3Dプリンタを発売するのは時間の問題だと考えられる。
 
ただし、低価格機発売が3Dプリンタの普及を後押しするとしても、すぐに一般化するとは考えにくい。なぜなら、多くの人には3Dプリンタで出力するものなどないからだ。素人に3Dのデザインは困難だし、Web上で公開されている3Dデザインを探すのも難しい。それより何より、「いったいどんなものを出力できるのか」。紙への印字と違って、まったく想像もつかない人がほとんどだろう。
 
そうなると、3Dプリンタの普及に必要なのはキラーコンテンツだ。
誰もが「3Dプリンタを使ってこれを出力したい」と思えるようなモノを見付けない限り、普及に弾みはつかない。問題は、誰がキラーコンテンツを見付け出すかとなる。
 

photo credit : Shapeways: via photopin cc

photo credit : Shapeways: via photopin cc

 
続きを読む

3Dプリンター時代の印鑑マーケティング


この記事の所要時間: 410秒 〜 510秒程度(2325文字)


一工夫ある朱肉が売れているらしい。
出典は日経トレンディネットの朱肉のフタが印マットに! カラフルな朱肉がブレーク中という記事。確かに印マットがなくて困ることは多く、利用者の不便を解消する商品だ。今まで無かったのか不思議に感じるほどで、目の付けどころが素晴らしい。
 
一方で、印鑑市場の行き詰まりも感じる。
署名捺印をするときには、ペンと印鑑と朱肉と印マットが必要になる。このうち、印鑑と朱肉を合わせたのが俗に言うシャチハタ印、これにペンを加えたのがネームペン(シャチハタ印付ボールペン)、朱肉と印マットを合わせたのが今回のシクオス(印マット付朱肉)。涙ぐましいほどの創意工夫をしているものの、組み合わせを変えているだけで一歩も前に進んでいないとも考えられる。
 
そして、この業界には3Dプリンターという大きな脅威が待ち構えている。果たして、新しい時代の印鑑マーケティングはどうなるのだろうか。
 

photo credit : Jason Michael via photopin cc

photo credit : Jason Michael via photopin cc

 
続きを読む