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住民税ショックと値上げの戦略


この記事の所要時間: 250秒 〜 350秒程度(1679文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
昨日25日は給料日。今月から住民税が増額となりショックを受けた人が多いようです。どんな商売でもそうですが、何かを「値上げする」ときにはそのショックをコントロールする戦略が大切です。
 


6月の給料日に住民税ショック


昨日から今日にかけてTwitter上で「住民税」が話題になっています。Twitterまとめサイト・Togetter(トゥギャッター)の住民税に対する阿鼻叫喚であふれるTLがキャッチーだったために話題が増幅した感もありますが、その反応を見ても関心が強いテーマなのは間違いないようです。
 
このタイミングで話題になったのは、住民税の税額が6月に通知され、それと同時に天引きが開始されるからです。つまり、6月の給料日のタイミングで制度改正の影響が現実になりショックを受けたわけです。いくら制度改正について詳しく知っていてもなかなか実感は湧きません。それが、手取り収入が変わることでリアルに影響を感じて、一騒動となりました。
 
制度改正から時間が立ち、また6月という中途半端な時期の増額なので不意打ちを食らいショックが尚更大きくなったように感じます。
 

photo credit : 401K 2012 via photo pin cc

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値上げは戦略的に


商売をしていれば、いつか商品の値上げをしなくてはならないときが来るものです。値上げが避けられないとき、それをお客にどう伝えて、どのように認識させるのか。その印象をコントロールすることが、値上げの影響を大きくも小さくもします。値上げの実態よりも値上げの印象の方が購買行動に影響を与えると考えられるからです。
 
値上げの方法に正解などありません。
それでも、検討して損のない方法は考えられます。
 
 値上げの理由をありのまま伝える 
お客は企業が誠実であることを望みます。値上げに至った理由をありのままに伝えて、お客に「値上げも仕方ないか」と思わせることができれば、その影響は小さくなります。
一方、誤魔化しは禁物です。それがお客にわかってしまった場合、信頼の回復は極めて難しいからです。
 
 値上げを早めに周知する 
少しでも早く値上げを知らせることが重要です。お客の商品や企業に対する評価は、自分が事前に抱いていた期待と実際に得た結果の差で決まります。早めの周知により、この期待をコントロールすることが可能です。
 
 お得感を演出する 
値上げをした代わりに、サービスを提供することでお得感を演出することができます。ちょっとしたおまけを付けるとか、企業間の取引なら相手の手間を少しでも省くようなシステムをつくるとかです。この際、値上げをした分と提供するサービスが見合っているかはあまり問題ではありません。多少なりとも得をすることで印象が大きく変わるのです。
 
 値上げをわかりにくくする 
誠実云々の議論とは間逆のようですが、値上げ自体をわかりにくくする方法があります。1単位あたりの容量を変えて値段の感覚を狂わせるのです。最近の例では、醤油の750mlパックなどがあります。お客は細かな計算までしないため、値上げしたのかどうかすぐにはわかりません。一定の誠実さを担保した上で(値上げしたことを周知する)、このアプローチを取る手立てはあるでしょう。
 
これら以外にも方法はあるでしょうし、商売によっては適さないものもあるかも知れません。大切なのは「ただ単に値上げする」のではなく、「しっかりした戦略を持って値上げする」ことです。
 
消費税率アップによって値上げを迫られる日は程なくやって来ます。値上げ直前になって困らないよう、「どうやって値上げするか」を少しずつ考え、必要に応じては仕込みをはじめることをオススメします。

メカニズム解明法で「売れる仕組み」を考えたい


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1953文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
一橋大学大学院商学研究科教授 沼上幹さんの『経営戦略の思考法』(日本経済新聞出版社)は、ビジネスを楽しみたい人に必読の一冊です。よく聞く言葉でありながら中々その本質が捉え難い経営戦略について、学問的な背景を押さえつつ実務家向けに書かれた本なので、これを読むといろいろな会社の戦略への理解が深まるからです。
 
この本では、学説史の整理による各種戦略論の相対化、経営戦略を考えるために必要な思考法の考察、戦略論を実際の経営に役立てるための方法論等が展開されます。どこも充分読み応えがあるのですが、佐々木が一番興味を持ったのは思考法の部分です。
 


3つの思考法


同書で紹介される思考法は3つです。

 ●カテゴリー適用法
   ある現象をより大きなカテゴリーの一員に位置づけることで説明できる
   と考える思考法

 ●要因列挙法
   ある現象の原因となる要因を多数列挙して網羅的に検討する思考法

 ●メカニズム解明法
   様々な要因や人の行為と相互作用に注目し、時間展開の中でこれらが
   複雑に絡み合う様子を解明する思考法

 
「インテル社が儲かる理由」の例があり、各思考法によるアウトプットは以下のように例示されています。

 ●カテゴリー適用法
   「デバイス事業だから」

 ●要因列挙法
   「メモリーでなくプロセッサーだから」+「デファクト・スタンダード
    だから」+「ブランドイメージが浸透しているから」

 ●メカニズム解明法
   「高いシェア」→「ソフトなど補完財の充実」→「高いシェア」、
   「ブランドイメージアップ」→「高いメーカー交渉力」→「intel inside
    キャンペンの成功」→「ブランドイメージアップ」など

 
沼上先生はそれぞれの思考法に長所短所があるとしつつも、メカニズム解明法を「最も妥当な思考法」とします。
 

 


カテゴリー適用法は罪深い


さて、カテゴリー適用法は実はまったく「理屈になってない」のですが、ビジネスの場でもよく聞く論法です。
 
はやりの言葉を使って「◯◯だから成功する」「◯◯だから失敗する」という類です。今ならば「SNS関連だから成功する」「中国市場を狙っているので成功間違いなし」「地球にやさしくない商品なので苦戦必死」などでしょうか。カテゴリーに当てはめることで、よく考えず短絡的に結論を導いてしまうパターンです。「で、何で成功するの?」が欠落しています。
 
この思考法を避けようとしていても、楽なのでついつい使ってしまうことがあります。話している相手も早合点で納得してしまったりすると、根拠に乏しい主張が通ってしまう危険が生じます。これは極めて罪深い思考法だと言えるでしょう。
 


要因列挙法では考えが足りない


要因列挙法は、とにかくよく使います。
 
以前、『理由は3つに限る』という記事も書きましたが、それなりにもっともらしい理由を3つ並べれば説得力が生まれるからです。ただ、他人を口説き落とすにはいいですが(?)、自分のビジネスを考える場合にはこの思考法では考えが足りないでしょう。要因間の関係についての考察が少ないからです。ビジネスで成功したいのなら要因列挙法で満足していてはイケない、そう思います。
 


メカニズム解明法で「売れる仕組み」を考えたい


沼上先生オススメのメカニズム解明法は、上の2つの思考法の欠点を補う素晴らしい思考法です。確かに、時間的な順序関係や要因間の因果関係を考えなくては、成功のメカニズムがわかりません。我が愛しのマーケティングは、「売れる仕組み」を考えるわけですからこの思考法が最適です。
 
マニュアル本でも読んでメカニズム解明法ができるのなら苦労はないのですが、そんな訳はありません。これら3つの思考法を意識して使いわけるようにすることが第一歩だと考えています。その上で、少しでも多くの事柄をメカニズム解明法で考えられるようになれればと思っています。
 
自分が習得できるかどうかは別にして、こういう思考のセンスを身につけることがビジネスの場でもっとも役立つのは間違いないでしょう。これをお読みのみなさんも、一度試してみたらいかがでしょうか。

モバイル専用サイトは必要ない!


この記事の所要時間: 20秒 〜 30秒程度(1242文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
株式会社イードが運営するU-Siteというホームページで、ウェブサイト・ユーザビリティ研究の第一人者 ヤコブ・ニールセンが書く「ニールセン博士のAlertbox」が公開されています(日本語です)。ニールセン博士が展開するウェブサイトの使いやすさについての議論は本質的かつ刺激的で、やや理想論に走り過ぎる嫌いはあるものの、ホームページを持っている人には必読の内容です。
 
昨日、この「ニールセン博士のAlertbox」に再利用 vs. 最適化されたデザインという興味深い記事が掲載されました。印刷物とオンライン、デスクトップとモバイルなど、いくつものプラットフォームで同じ情報を発信する際、プラットフォーム毎に最適化したデザインを作成する必要があるかという議論です。古くて新しい論点といえるでしょう。記事は、「再利用しても構わない」場合、「プラットフォームごとに最適化されたデザインを別々に創り出す」べき場合を導出して結論としています。
 

photo credit : blakespot via photo pin cc

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この問題、デスクトップとモバイルに限って考えると、モバイル専用ページで何をしたいのか明確な戦略を持つことが重要になります。
「スマートフォンの利用率が上昇してきてるから、そろそろモバイル専用ページをつくらないとな」といった消極的な動機でモバイル専用ページをつくっても成功は望めません。このような意識でページをつくると、表面的なデザインだけモバイルに最適化したページができてしまいます。デスクトップ用サイトとコンテンツの内容や操作性が変わらなければ、新しい価値は生まれません。そんなモバイル専用ページなら必要ないと言えるでしょう。

成功するために大切なのは、“デスクトップでサイトを見るユーザー”と“モバイルでサイトを見るユーザー”の行動の違いを理解した上で、モバイルユーザーにどんなベネフィット(便益)を提供するか戦略的に考えることです。モバイル専用サイトで商品を購入できる便利さを提供するのか、店頭で商品を選ぶときにすぐに見られる参考情報を提供するのか、思わず友達に教えたくなるようなゲームなどを提供するのか、そしてモバイルユーザーはそれらを本当に望んでいるのかを考えるのです。これらの戦略を明確にした上で、モバイルユーザー向けのページを再構築すれば、ユーザーフレンドリーなモバイル専用サイトの実現が可能になるでしょう。

長々と書きましたが、要は何ごとも戦略をしっかり考えることが重要です。
そして、そのためにはフレームが必要になります。ぜひ、以前紹介したSTP戦略コンセプトのABCなどを使って戦略を考えることをオススメします。

戦略は3要素で考えよう!


この記事の所要時間: 030秒 〜 130秒程度(488文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
ビジネスの場においては、何ごとも戦略的に考えることが求められます。
しかしながら「戦略」という言葉の定義が多様かつ曖昧なため、具体的に何を考えればいいのかわからなくなる場合も多いようです。
 
そんな状態に陥らないためにオススメなのが戦略コンセプトのABCです。このフォーマットでは戦略のコアとなる3要素だけを考えます。戦略を実行するにはさまざまな事柄を検討する必要があるのは当然ですが、まず中核部分をしっかり固めることが重要です。
 

戦略コンセプトのABC
ファイルのダウンロードはココから

 
このフォーマットのポイントは「信じる理由」を書き出すところです。
「消費者にとってその便益が重要なのはなぜか?」と「この商品でどうしてその便益を提供可能なのか?」を考えます。この部分が消費者に伝えるメッセージにあたります。消費者を説得できる「信じる理由」が思い浮かばないのなら、まだまだコンセプトの詰めが甘いと自覚し、さらなる熟考をすることが必要でしょう。
 
簡単なフォーマットですが、その効果は絶大です。ぜひご活用ください。

スキルをセンスと勘違いしてませんか?


この記事の所要時間: 10秒 〜 20秒程度(791文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
一橋大学大学院の楠木建教授が、プレジデントオンラインで『楠木建の「戦略読書日記」』を連載しています。内容はビジネス誌にありがちな「すぐに役立つビジネス・スキル」ではありません。経営者の仕事に必要な「戦略センス」を磨くための本が毎回紹介されています。
 
その連載1回目『ストーリーとしての競争戦略』で、筆者はスキルを「その内容の定義が社会的に定着して」いて「それを身につける道筋もある程度出来上がっている」もの、これに対してセンスを「千差万別」で「試験の成績や資格の取得で人に見せることもできない」ものとしています。
 
その上で、

スキルとセンス、どちらも大切である。ただし、両者はまるで異なる能力であり、区別して考えることが大切だ。

誰かがつくった戦略の分析ならばスキルでなんとかなる。分析フレームワークもたくさんある。しかし、すでに存在している戦略を分析するということ、自らオリジナルな戦略ストーリーをつくるというのは、まるで違う仕事である。

だから今の時代、多くの人がスキルに傾く。センスがないがしろにされる。会社の中でもスキルばかりが幅をきかせるようになる。

などの指摘をしています。
 
これを読んで日ごろ自分が感じている違和感の正体がわかったように思いました。
スキルを身に付けただけでセンスまでも獲得したと勘違いしている人を見て、「あれっ?」と思うのです。まるで人間の能力は一つの軸で構成されていて、スキルの延長にセンスがあるように考えている人もいます。スキルだけを持った人間が、センスが要求される仕事を「できるつもり」になった場合、待ち受けているのは不幸な結果でしょう。
 
スキルとセンスは別物です。
自戒の意味も込め、この違いには気を付けなくてはいけないと思った次第です。